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2026.06.18

「医師あるある」を、根本から断ち切る考え方を授けてくれる本/『イシューからはじめよ[改訂版]――知的生産の「シンプルな本質」 』

著者:安宅和人 出版社:英治出版

内容

2010年の『イシューからはじめよ』(旧版)発売以来、知的生産のバイブルとしてビジネスパーソンを中心に研究者や大学生などから幅広く支持されてきました。14年間一貫して売れ続けて累計58万部に到達(紙と電子版、旧版と改訂版を合算)。ビジネススキルの本として異例のロングセラー、ベストセラーとなっています。そしてこのたび、「課題解決の2つの型」「なぜ今『イシューからはじめよ』なのか」など、読者の実践に助けとなる内容を追加した『イシューからはじめよ[改訂版]』を発行いたします。(英治出版のホームページから引用)

プロフィール画像

紹介者:おちば

診療科:腎臓内科

医学部卒業年:2017年

お薦めの理由

次のような経験はありませんか。

・珍しい症例、教育の題材に適した症例に対し、指導医から「論文にしようね」と言われた……! 「よしケースレポート作るぞ!」とPCを開き、インターネットや医学文献データベース「PubMed(パブメド)」で“情報収集”を始める。翌日もその翌日も情報収集。1週間たっても結局「何が言いたいのか」が固まっていない……

・臓器障害が多い患者のカンファレンスが迫っている……! 検査値やカルテの情報が大量にあり、覚えきれない。それならば、とりあえず全て印刷して参照できる準備だけしておこう。いざカンファでプレゼンに臨んだものの「何を話すべきか」「どこに重要情報があるか」が分からない……

――これらの「医師あるある」を、根本から断ち切る考え方を授けてくれるのが本書です。発行部数60万部を超える「ビジネスパーソンの教科書」的な一冊ですが、医師の仕事にも役立つと思っています。

本書は一貫して「知的生産では『解くべき重要な問い(=イシュー)』に集中し続けよ」ということを主張しています。医師の業務は、患者マネジメント、指導医へのプレゼン、チーム医療での意思決定、それから学会発表や論文作成など「考える仕事(知的生産)」です。すなわちイシュー設定のうまさが、効率やアウトカム(治療の成果)を決定付けると言い換えられます。

本書では、こうした知的生産で絶対に避けるべきものを「犬の道」と表現しています。犬の道とは、とりあえず時間と労力を投下して、気合いで何とかゴールに辿り着こうとするやり方のことです。

ケースレポートで「なんとなく関連しそうな文献」を片っ端から集める――。何の戦略もなくAIに調べさせる――。こういった「犬の道」を選んだ時点でほぼ「負け」は決まります。やみくもに集めただけの情報はガラクタになりやすく、たとえ資料にまとめたとしても、それは単なる情報の詰め合わせとなってしまい、最も大切なメッセージをむしろ邪魔してしまうのです。

本書で示される犬の道を避ける方法は非常にシンプルで、「仮説を立てて、アウトプットにつなげ、そしてそれを検証してサイクルを回すこと」だといいます。

例えばケースレポートの作成で最初にすべきなのは「この症例で何を主張するのか」「どんなストーリーで読者を納得させるのか」という目的を明確にし、仮説を置くことです。そして、その仮説を支えるために必要なパーツ(鑑別、機序、既報、学び)だけを狙って調べる。違っていれば仮説を修正する。このサイクルを何回転も回す。“調べてから考える”ことではなく“考えてから調べる”ことが大事なのです。

カンファレンスや学会発表におけるプレゼンも同様です。原案を早い段階で形にして、指導医をはじめとする同僚から突っ込みを入れてもらい修正していきます。一番避けるべきなのは、ギリギリまで情報収集して、最後の最後に突貫で資料を作って提出すること。これは一見努力しているように見えますが、“再現性のない消耗戦”です。

ただ臨床現場においては、患者の体を使って仮説から検証を何度も繰り返すことはできません。だからこそ、自分の仮説を言語化して、指導医や同僚にぶつけ、カンファレンスで検証するのです。そして議論の中で仮説を磨くというサイクルを回すことで、患者を傷つけることなく、意思決定の質を上げることができます。

どうせ仕事をするなら、重要なことに時間を使い、成果につながる働き方がしたい。そう思う医師に、この1冊は確実に刺さるはず。医療においても、「イシューに集中して、最短距離で質を上げること」が求められていることは間違いありません。

最後に、本書の言葉を借りて締めます。

根性に逃げるな!

岩本あかりプロフィール画像
イラスト

岩本あかり

東京を中心に、イラストレーター・UIデザイナーとして活動。 シンプルな線に、軽快な色面。 どこにでもありそうな景色に、ひとつまみのユーモアを。 見た人がクスッと楽しくなる絵を描く。

HP: https://akariiwamoto.com

Instagram: https://www.instagram.com/akari.iwamoto