2023.06.22
人工甘味料、甘い誘惑にご用心▽エリスリトールが心臓発作と脳卒中呼ぶ▽スクラロースでDNA損傷▽あなたの「不安」、人工甘味料が原因かも?▽スクラロースに自己免疫疾患治療を助ける力も▽実はダイエットに効果なし WHO公表
世界各国の大手メディアや医療メディアなどが配信しているニュースの中から、皆さんにぜひ知ってほしいものをマイシュー(毎週)選んでお届けします。今回は「人工甘味料の危険性」などに関するニュース6本を取り上げます。
まとめ:医療ニュース編集部
私も含め周囲の多くの人が、カロリーが低いとされる人工甘味料を使った清涼飲料水を選んで飲んでいます。「砂糖の取り過ぎは気になるし、カロリーも抑えられるし、何となく健康に良さそう」という理由からだと思います。でも、この人工甘味料が逆に心身の健康に悪い影響を与える可能性があるという研究結果がたくさん報告されています。
Science Alert:Some Artificial Sweeteners May Have a Not-So-Sweet Impact on Our Bodies

Science Alertに、ゼロカロリーの人工甘味料を定期的に摂取すると健康に悪影響があるようだという記事が紹介されました。イスラエルの研究チームが米科学誌Cellに発表した研究です。チームは人工甘味料の摂取を制限している120人を対象に調査したそうです。その結果、人工甘味料のスクラロースとサッカリンを毎日少量ずつ2週間摂取した人は、プラセボ群に比べて7日後の腸内細菌叢の組成や機能が変化し、血糖値を正常に保つ「耐糖能」が損なわれたことが分かったといいます。ただし、アスパルテームやステビアなどの甘味料では、耐糖能に影響はみられなかったとのことです。
CNN:Zero-calorie sweetener linked to heart attack and stroke, study finds
CNNは、砂糖の代わりに使われるゼロカロリーの甘味料「エリスリトール」が、心臓発作や脳卒中リスクを高めることが分かったという米国の研究チームによる研究結果を報じています。糖尿病などの心臓病リスク因子を持つ4000人近くの血液を分析した結果で、医学誌Nature Medicineに発表されたものです。血中エリスリトールレベルが上位25%の人は、下位25%の人に比べて3年以内に心臓発作や脳卒中を発症するリスクが2倍高かったことが分かったといいます。動物実験などで、エリスリトールが心臓発作や脳卒中を引き起こす血栓を誘発することも判明したとのことです。
Science Alert:This Common Artificial Sweetener Can Break Down DNA, Scientists Warn

炭酸飲料やガムなどに広く使われている人工甘味料「スクラロース」について、健康への危険性を指摘する研究結果が報告されたことをScience Alertが紹介しています。米国の研究チームが、ヒトの血液細胞や腸壁組織を使って調査を実施したそうです。その結果、スクラロースやスクラロースが体内で代謝された際にできる「スクラロース-6-アセテート」によって、DNA損傷が生じる可能性があることが明らかになったそうです。さらに、これらの物質が腸の内壁にダメージを与えることも確認されたといいます。
Science Alert:A Popular Sweetener Has Been Linked to Increased Anxiety in Generations of Mice
またScience Alertは、人工甘味料が精神にも悪影響を与える可能性があるという研究結果を紹介しました。米国の研究チームが米国科学アカデミー紀要(PNAS)に発表したものです。低カロリーの食品や飲料に広く使われている人工甘味料「アスパルテーム」が不安症を引き起こすかもしれないそうです。チームは、米食品医薬品局(FDA)が推奨する1日最大摂取量の15%に相当するアスパルテームを含む水を用意しました。それをマウスに飲ませたところ、情緒検査で不安を表す行動を多く取り、不安などに関わる脳の偏桃体に著しい変化が見つかったといいます。この影響は、アスパルテームを実際に摂取したマウスの孫の代まで引き継がれたとのことです。
次に紹介するのは、人工甘味料(スクラロース)の危険性を指摘する研究ではありません。記事の中にもそれが明記されています。通常の食事でスクラロースを含むものを食べたり飲んだりしても欧米の当局が推奨する1日の許容摂取量に達することはないこと。そのため研究結果は、正常な免疫機能を確保したい人や病気から回復しようとしている人に対して警鐘を鳴らすものではないこと。ただ、ストレートに解釈すれば、高用量のスクラロースを取ると免疫機能が低下する危険性があるということですよね。
EurekAlert!:Artificial Sweetener could dampen immune response to disease in mice

EurekAlert!に掲載されているのは、英国の研究チームが英科学誌Natureに発表した研究結果です。チームは、ヒトにおける1日の許容摂取量に相当する人工甘味料「スクラロース」をマウスに与えて調査したといいます。その結果、高用量スクラロース群は、がんや感染に対して免疫細胞のT細胞が活性化しにくかったそうです。T細胞は自己免疫疾患で中心的な役割を果たします。このことからチームは、スクラロースによってT細胞の過剰活性を抑制することで、自己免疫疾患の治療に活用できる可能性があると考えているようです。
最後に紹介するのは、WHO(世界保健機関)が「人工甘味料によるダイエットは推奨しない」という新ガイドラインを発表したというニュースです。健康に悪影響がある可能性があって、ダイエット効果もない……。こうなると、該当の人工甘味料の規制についても検討し直すべきなのではないでしょうか。
CBS News:WHO warns against artificial sweeteners for weight loss in new guidance
CBS Newsが、低カロリーやゼロカロリーの人工甘味料を減量目的で口にするのはやめた方がいいという、世界保健機関(WHO)が公表した新たなガイドラインの内容について報じました。WHOがエビデンス(科学的根拠)の系統的レビューを行ったところ、人工甘味料が成人や子どもの体脂肪減少に長期的な効果をもたらすことはないとの結果が示唆されたそうです。それどころか、こうした甘味料を長期間摂取すると、2型糖尿病や心血管疾患、成人における死亡のリスクが上昇する可能性があるといいます。WHOが指す人工甘味料とは、アセスルファムK、アスパルテーム、アドバンテーム、シクラメート(チクロ)、ネオテーム、サッカリン、スクラロース、ステビアなどだそうです。
※この記事はマイナビDOCTORの「サクッと1分!世界の医療ニュース」を再編集したものです。
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金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。