著名人による発言は患者の行動に大きな影響を与える可能性がある――。米国の研究チームが、そのことを示す研究成果を医学誌
JAMA Network Openに発表しました。
2025年1月9日、米俳優メル・ギブソン氏が人気ポッドキャスト番組で、ステージ4のがんを患う友人3人が抗寄生虫薬(寄生虫を殺したり、体外に排出したりするために用いる薬)であるイベルメクチンやベンズイミダゾール系薬剤を使用して、がんから回復したと発言。彼の主張はソーシャルメディアで急速に拡散され、数週間で数千万回再生されたといいます。
ただ、イベルメクチンやベンズイミダゾール系薬剤はいずれもがん治療に対する使用は適応外です。細胞を使った実験や動物実験で抗がん活性が示されていますが、臨床試験においてヒトのがん治療に対する安全性や有効性が確認されたことはありません。
米国の研究チームは、国内の6837万3949人の電子カルテから、25年1月1日から7月31日までに、外来診療や救急診療で18歳から90歳の患者に処方された薬剤のデータを収集しました。
分析の結果、イベルメクチンとベンズイミダゾール系薬剤の同時処方率は、前年同期に比べて2倍になったことが分かりました。さらに、がん患者への処方率は2.5倍以上になったことも判明。このような処方率の増加は、男性、18歳から64歳の世代、白人、米国南部の住人で特に顕著だったといいます。
患者が既存の治療法の代わりとしてイベルメクチンとベンズイミダゾール系薬剤を使用したかは明らかになっていないものの、著名人の推奨が医療に及ぼす潜在的な影響が改めて強調されました。
研究チームは、「広く共有されている情報がすべて正確とは限らない。未検証の治療法を優先して、きちんと効果が確認されている従来の治療を採らないことは現実的なリスクを伴う」と注意を促しています。