2024.02.22
脳インプラント、臨床試験を始めたのはイーロン・マスク氏の企業!?▽マスク氏が脳インプで目指す未来とは▽脳波で文字の入力ができる?▽念ずるとアバターが発話 脳卒中、ALSの患者が会話可能に▽まひの男性、装置使い脳と脊髄の再接続で100m歩行▽脳インプでてんかん&強迫性障害が改善!
世界各国の大手メディアや医療メディアなどが配信しているニュースの中から、皆さんにぜひ知ってほしいものをマイシュー(毎週)選んでお届けします。今回は、「脳インプラントのいま」についてのニュース6本を取り上げます。
まとめ:医療ニュース編集部
米国の起業家イーロン・マスク氏が率いるニューラリンク社が1月、脳インプラントの臨床試験を開始したと発表しました。マスク氏が超有名かつ超話題性のある人なので、各国のメディアはこのニュースを大きく取り上げました。ただ、脳インプラントに関する驚くような研究は、この他にも複数行われているのです。今回は、それらを紹介します。とはいっても、まずはマスク氏のニュースから始めます。ニューラリンク社は、臨床試験について詳細を明らかにしていません。ニューラリンク社が米食品医薬品局(FDA)に臨床試験を許可された時のニュースに、ニューラリンク社が行いたいと考えていることの説明があったので、それも併せて紹介します。
ABC News:What to know about Elon Musk’s Neuralink brain chip implant

米起業家イーロン・マスク氏のニューラリンク社が、手術で人の脳に小型の装置を埋め込み、コンピューターに直接つなぐ臨床試験を開始したと発表しました。ABC Newsが1月31日に報じました。マスク氏は臨床試験の詳細を明らかにしていませんが、患者の経過は良好だとしています。同社は、脳卒中などで体が不自由な患者の自律性を回復させることを目標に、「ブレーン・マシン・インターフェース(BMI)」を開発しているそうです。BMIは脳に埋め込んだ装置が神経活動を読み取ることで、患者が頭の中で考えるだけでコンピューターやスマートフォンを操作できる技術です。脳卒中や外傷性脳損傷、脊髄損傷でまひがある人に有効だといいます。同社はこれまでにブタやサルでの実験を成功させており、脳にチップを埋め込んだサルがビデオゲームをする実証も行っているそうです。
AP通信:Elon Musk’s brain implant company Neuralink says it has US approval to begin trials in people
米起業家イーロン・マスク氏らが設立したニューラリンク社が、開発を進めている脳インプラント装置について、ヒトを対象にした臨床試験が米食品医薬品局(FDA)に許可されたと発表。AP通信が2023年5月27日に報じました。コイン大の物を頭蓋骨に埋め込み、そこから極細の線を脳に入れる装置だといいます。神経系をコンピューターに接続し、脳損傷などが原因で失われた機能を取り戻させるそうです。最初の応用例としてマスク氏は、視力を回復させることと、筋肉を全く動かせない人が電子機器を操作できるようにすることの二つを挙げたといいます。また、首を骨折した人の脳の信号を脊髄の中に入れた装置に送達することも目指すとのことです。
脳インプラントを使って言葉を取り戻す技術も進化しているようです。脳卒中で話せなくなった人が脳波を分析する技術によって文字をつづることができるようになったり、脳卒中や筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者が人工知能(AI)を使って話せるようになったりしたことが報告されています。
Science Alert:Brainwave-Reading Implant Helps Paralyzed Man Who Can’t Speak Spell Out 1,150 Words

米国の研究チームが、脳波を分析して文字に変換する神経機能代替装置を脳卒中で話せなくなった男性の脳に移植し、文字をつづらせることに成功したそうです。論文が英科学誌Nature Communicationsに掲載され、2022年11月9日にScience Alertが紹介しました。各アルファベットに対応する決められた単語があり、例えばアルファベットの「A」をつづりたい時は、男性が「Alpha」と言おうとすることで装置が読み取るといいます。これを繰り返すと、単語や文章としてスペリングしたものがモニターに表示でき、1150以上の単語を読み取れたとのことです。男性はこの当時30代後半で、20歳の時に脳卒中を発症し、認知機能に異常はないのですが明瞭に話すことができなくなったといいます。
Science Alert:Amazing Brain Implant Gives a Voice to People Who Couldn’t Speak For Years
Science Alertが2023年8月25日に、話す能力を取り戻した二つのケースを紹介しました。どちらの成果も英科学誌Natureに掲載されました。一つは、米国の研究チームが脳卒中でほぼ完全なまひ状態になった女性に行った研究です。チームは女性の脳に253個の電極を移植。人工知能(AI)に「音素」を認識させ、女性が考えている内容をアバターに話させる技術を開発したそうです。女性は周囲の人と同じくらいの速さで会話することが可能になったといいます。もう一つは、別の米国のチームが筋萎縮性側索硬化症(ALS)の女性患者に行った同様の研究です。このチームは女性の脳に128個の電極を埋め込み、有望な結果が得られたとのことです。
事故で歩けなくなった人が、脳と脊髄のインプラントで歩けるようになったという報告もあります。しかも、事故は10年以上前に起きたことだといいます。同じような状態になっている人に希望を与える研究成果です。
CNN:Man with paralysis walks naturally after brain, spine implants

10年以上前のバイク事故でまひが残り歩けなくなった男性(40)が、スイスの研究チームが開発した脳と脊髄を再接続する装置によって、スムーズに歩けるようになったそうです。研究成果が英科学誌Natureに掲載され、CNNが2023年5月25日に報じました。脳に埋め込んだ装置が「歩きたい」という信号を受信し、この信号がリュック型の処理装置に無線で伝わるのだそうです。そして処理装置から脊椎インプラントに命令が伝達され、筋肉を刺激する仕組みだといいます。日によるものの、男性は100m以上の歩行が可能になったとのことです。
俳優の佐藤二朗さんが2月6日、強迫性障害(OCD)であることを公表し、大きな話題になりました。国立精神・神経医療研究センターによると、OCDは「手が汚いのではないか」「鍵はちゃんと閉めたか」などの考えが消えず、手を洗ったり戸締りを確認したりする行為が止められなくなってしまう症状が出るといいます。原因は未解明ですが、脳の神経伝達物質の調節障害や脳のある部分の活動性の異常が影響していると考えられているそうです。このOCDについて、米国の女性が脳インプラントで症状を改善したという研究成果が発表されています。
Medical Xpress:US patient ‘happy again’ after brain implant treats epilepsy and OCD
てんかんと強迫性障害(OCD)に苦しんでいた34歳の女性が幸せを取り戻した――。米国の研究チームによる報告をMedical Xpressが2月4日に紹介しました。チームは、この女性のてんかん発作を治療するために32mmの小型装置を脳に埋め込む手術を実施したそうです。その際、女性の提案で、OCDの症状が出た時に起こる、脳内の特定の信号に反応するプログラムもこの装置に追加したといいます。手術から8カ月後、女性が10代から悩まされ続けていたOCDによる1日8~9時間の執拗な手洗いや施錠の確認などの「儀式行為」が徐々に減り始め、現在は通常の生活を送れるようになったといいます。
編集部は毎日、主に下記のメディアをチェックし、取り上げるニュースを選んでいます。
BBC/ CNN/ CBS News/ ABC News/ NBC News/ AP通信/ NPR/ USA TODAY/ ABC News(Australian Broadcasting Corporation)/ Health Europa/ Medical Xpress/ Science Alert/ Science Daily/ Medgadget/ INSIDER/ Asian Scientist Magazine/ Medical Brief/ Psy Post/ Psychology Today/ MIT Technology Review/ i/ The Conversation/ SciTechDaily/ Healthline/ EurekAlert!藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。
阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。