2024.11.15
猫を飼っている人は脳卒中や心臓病の死亡リスクが低い▽脳死判定の男性が目を覚まし、米国でドナー登録の解除相次ぐ
これまで、世界各国の大手メディアや医療メディアが配信しているニュース、医学誌や科学誌に掲載された論文の中から、皆さんにぜひ知ってほしいものをマイシュー(毎週)厳選してお届けしてきました。『マイシュー』は今回が最終回で、『Weekly!World Medical News「What You Missed(日本語版)」』に生まれ変わります。マイシューで最後に紹介するのは、10月31~11月6日にマイナビDOCTORの『サクッと1分!世界の医療ニュース』に掲載した記事の中から▽愛猫家は健康!?▽脳死判定後に男性が“復活”し、ドナー登録解除が急増――の2本のニュースです。
まとめ:医療ニュース編集部
阿部記者のイチオシ!
最近、小学生の息子に猫を飼いたいとせがまれています。「かわいくて、ふわふわで癒されるから飼いたい!」というのが息子の主張です。しかし、私はあまり乗り気ではありません。なぜなら、息子はアレルギー性鼻炎持ちなのです。検査で猫アレルギーと分かったわけではありませんが、アレルギーを持っている場合を含めて、ペットを飼うことによる健康への影響を考えると、どうしても慎重になってしまいます。癒しを求める息子と健康を心配する母の議論は平行線をたどっています。
そんな私たち親子にぴったりの研究成果がまとめられました。猫と暮らすことによる健康への影響について、オーストラリアの専門家が良い面と悪い面の両方に言及しています。それによると、猫を飼っている人は心血管疾患で死亡するリスクが低く、精神的な幸福度が高まり、うつ症状が軽減するとの調査結果があるそうです。一方で、猫のふんを介してトキソプラズマ原虫が感染するリスクや、猫アレルギーに対する懸念を指摘しています。
専門家いわく、猫アレルギーが重度でない限り、衛生面に配慮すれば猫と暮らすことは可能だそうです。それならば、息子の願いをかなえてあげられるかもしれないと思いつつ、「でも、結局は誰が猫の世話をすることになるの? まずは君自身がもっと自分の身の回りのことをできるようになってから!」というのが私の本音なのです。
The Conversation:Are cats good for our health?

2024-11-01
猫と暮らすことは、人間の健康にどのような影響を及ぼすのでしょうか。The Conversationにオーストラリアの動物福祉・行動・倫理学の専門家の記事が掲載されています。
猫を飼っている人は、脳卒中や心臓病などといった心血管疾患で死亡するリスクが低いことが複数の研究で示されているといいます。また、社会的孤立が抑制され、精神的な幸福度が高まるとのことです。うつ病患者が飼い猫と触れ合うと、症状が軽減するとの調査結果もあるそうです。
一方、健康上のリスクも存在します。猫はトキソプラズマ原虫の終宿主(成体が寄生する最後の宿主)として知られており、ふんを介してヒトに感染することがあります。妊婦が感染すると流産や死産につながったり、生まれた子どもに失明や脳障害が生じたりする可能性があるそうです。
また、猫アレルギーを持つ人は5人に1人ほどの割合でいるといわれており、その数は増加傾向にあるとのことです。ただし、アレルギーが重度でない限り、衛生面に配慮すれば猫と暮らすことは可能だそうです。
藤野記者のイチオシ!
2010年7月17日に全面施行された改正臓器移植法について、法律ができる過程と施行後の動きを駆け出しの科学記者として取材しました。その中で、臓器移植についてさまざまな意見を聞きました。ただしそれは、制度や死生観や倫理的問題などに関するものです。脳死判定の確実性を疑問視する声など聞いたことがありません。脳死判定は絶対的なものでなくてはならないのですから、当然のことです。万が一にも判定を受けた後に復活する可能性があるなら、この医療は行うことはできません。
このほどAP通信をはじめ各国のメディアが報じたのは驚くべき事案です。2021年に脳死と判定された米ケンタッキー州の男性が、摘出手術直前に目を覚ましていたことが明らかになったというのです。これは脳死判定そのものが不確実なものであることを示す事案ではなく、脳死でないものを脳死と判定した極めて重大な医療ミスです。しかし、多くの人はそうは思わないでしょう。現に米国やフランスでドナー登録を解除する人が急増しているというのですから。脳死判定を担当した医師もその医療機関も、いったい何をやっているのだと激しい憤りを覚えます。
取材でお世話になった人々のことを思い出し、今回のことをどう受け止めるのだろうと考えました。その人たちの言葉が頭の中で渦巻いています。
「本当は目を覚ましたかもしれないのに、私たちが命を絶ってしまったんじゃないかと今も思うことがあるんです」(大学生の息子の遺志に従って臓器提供に応じた両親)
「マニキュアなんかも塗ってあげて、『行ってらっしゃい』って手術室に送りました」(母親の臓器提供に応じた娘)
「人の命に国境があっちゃいけないと思っているんだ。海外でできることは日本でもやれるようにしないと」(法改正に尽力した移植医)
「日本では移植ができないから、小っちゃい子が何人も目の前で亡くなっていくんだよ」(法改正に尽力した循環器の医師)
AP通信:People opt out of organ donation programs after reports of a man mistakenly declared dead

2024-10-31
米ケンタッキー州で2021年、脳死と判定された男性が、臓器摘出手術のために手術室に向かう途中で目を覚ますという出来事があったそうです。今年9月に開かれた議会公聴会で初めて明らかになったといいます。これを受け、米国で臓器提供のドナー登録を取り消す人が増えているそうです。AP通信が報じています。
21年の出来事の詳細は分かっていませんが、摘出手術は回避され、男性は今も生きているそうです。この件が報道された翌週には、前年同時期の10倍以上に当たる1日平均170人が、国のドナー登録リストから自身の情報を削除したといいます。さらに海を越えたフランスでも、このニュースが報道されて以降、臓器提供拒否の意思を登録する人が1日当たり100人から1000人に急増したそうです。
なお、米国や日本と違い、フランスでは本人が生前に拒否する意思を示しておかない限り、臓器提供するものとみなされるシステムだといいます。
編集部は毎日、 医学誌や科学誌のほか下記のメディアなど をチェックし、取り上げるニュースを選んでいます。
BBC/ CNN/ CBS News/ ABC News/ NBC News/ AP通信/ NPR/ USA TODAY/ ABC News(Australian Broadcasting Corporation)/ Health Europa/ Medical Xpress/ Science Alert/ Science Daily/ Medgadget/ INSIDER/ Asian Scientist Magazine/ Medical Brief/ Psy Post/ Psychology Today/ MIT Technology Review/ i/ The Conversation/ SciTechDaily/ Healthline/ EurekAlert!藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。
阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。