2024.10.31
若者へのたばこ販売禁止で、肺がんによる死者が70年で120万人減る?▽痛風に大きく影響するのは食生活ではなく遺伝か▽早く寝る子どもは腸内フローラの多様性が高く、善玉菌が豊富!
世界各国の大手メディアや医療メディアが配信しているニュース、医学誌や科学誌に掲載された論文の中から、皆さんにぜひ知ってほしいものをマイシュー(毎週)厳選してお届けします。今回は10月17~23日にマイナビDOCTORの『サクッと1分!世界の医療ニュース』に掲載した記事の中から、編集部のメンバーがそれぞれイチオシのものを選びました。「たばこフリー世代」の肺がん死者数はどうなる?▽通風の最大の要因は遺伝!?▽早寝する子は“ちょう”健康――の3本を紹介します。
まとめ:医療ニュース編集部
阿部記者のイチオシ!
「あなた、たばこ吸う? 若いのに肺が汚れているけど」。20代の頃にせきが長引き、医療機関で胸部レントゲンを撮った時に医師から言われました。驚きのあまり、思わず「え?!」と聞き返してしまいました。だって、私はこれまで一度もたばこを吸ったことがないのですから。
でも一つだけ、思い当たることがありました。私が幼い頃、父がヘビースモーカーだったのです。当時は、喫煙や副流煙に対する社会の意識が今とは比べものにならないほど低く、幼い子どものいる場所でも特に気にせずにたばこを吸う人がたくさんいました。私は知らず知らずのうちに父のたばこの煙を吸い込んでいたように思います。
スペインの研究チームが、若者へのたばこ販売を禁止すると、2095年までに肺がんによる死者が120万人減少する可能性があるとの研究成果を発表しました。たばこ販売を規制することで、こんなに死者が減るとは! たばこが健康によくないことは周知の事実ですが、実際にこうした数字を見ると、その影響の大きさに驚かされます。
あの時医師に言われた「肺が汚れている」という言葉を思い出すだけで、今もなんとも言えない悲しい気持ちになります。皆さんにもたばこが健康に及ぼす影響について改めて考えるきっかけにしてほしいと思い、紹介します。
Lancet Public Health:Estimated impact of a tobacco-elimination strategy on lung-cancer mortality in 185 countries: a population-based birth-cohort simulation study

2024-10-17
たばこ製品を生涯にわたり購入することができない「たばこフリー世代」を実際に作ることができれば、肺がんによる死亡を大幅に減らせるようです。スペインの研究チームが、世界保健機関(WHO)やその付属機関である国際がん研究機関(IARC)が公表した82カ国のデータを基に、将来の肺がんによる死亡率を予測し、医学誌The Lancet Public Healthに発表しました。
世界では毎年180万人が肺がんで死亡し、その3分の2以上がたばこが原因と推定されているといいます。チームによると、2006~10年生まれの人にたばこの販売を禁止した場合、95年までに185カ国で120万人の肺がんによる死亡を防ぐことができるそうです。現状では肺がんで290万人が死亡すると予想されており、それを40.2%減らせることになります。
また、こうした措置によって恩恵を受ける割合は男性の方が高く、死亡者は女性が30.9%減と推計されるのに対し、男性は推計45.8%減になるといいます。
なお、今回の研究は、電子たばこの使用については考慮されていないとのこと。
許田記者のイチオシ!
祖父はお酒が大好きな人でした。幼い頃、祖父母の家によく出かけていたのですが、祖父はいつも、夕方になるとお酒を飲みに出かけてしまいました。帰って来る時は赤ら顔で、足元はふらふら。ある日、そんな祖父が珍しく家でおとなしくしていたんです。不思議に思っていると、「ビールの飲み過ぎで、風が吹くだけで足が痛くなる病気にかかったんだよ」と母が教えてくれました。
その後、テレビやインターネットの情報などに触れることで、痛風はおいしいものをたくさん食べたり飲んだりする男性がかかる「ぜいたく病」だというイメージが私の頭の中に定着しました。
そして高校生の時、学校の男性の先生が痛風にかかったと聞きました。元気のない先生の姿を見て、かわいそうだとは思いましたが、「さすが独身貴族!」と心の中で茶化したことを覚えています。
しかし先日、ニュージーランドの研究チームによるこのニュースを知り、「おじいちゃん、先生、ごめんなさい……」ととても申し訳なくなりました。なんと痛風は食生活よりも遺伝的要因が大きいというのです。
「遺伝的要因」というところが気になったので調べてみたところ、厚生労働省の調査結果を見つけました。それによると、2022年の痛風患者は国内に約130万6000人おり、このうち9割以上(約123万6000人)を男性が占めるのですが、女性の患者も約7万人存在するそうです。
女性の自分には関係ないと思っていたので、ショックでした。今のところ、健康診断の数値に異常はありません。でも、「祖父が痛風になったということは、私も可能性があるかもしれない……」と怖くなっています。研究チームは「痛風の主な原因は遺伝的要因だ」と結論付けていますが、「特定の食事が発作の引き金になる可能性がある」ともしています。せめて食事には気を付けようと心に誓いました。
Nature Genetics:A genome-wide association analysis reveals new pathogenic pathways in gout

2024-10-23
尿酸の結晶が関節にたまることで激しい炎症が起こる「痛風」は、食生活の乱れが大きく関わっているといわれています。しかし、ニュージーランドの研究チームが、これを否定する研究結果を科学誌Nature Geneticsに発表しました。
チームが260万人の遺伝情報を解析した結果、痛風発作を防ぐための標的になり得る多数の免疫関連遺伝子が特定されたそうです。痛風の根本的な原因は「尿酸値の高さ」「尿酸結晶の関節への蓄積」「関節における炎症発作」で、これら全てのプロセスに遺伝子が重要な役割を果たしていたといいます。
特定された遺伝子の一つは、免疫細胞などが産生するタンパク質インターロイキン6(IL-6)に関連するもので、関節リウマチなどの治療に使うIL-6阻害薬「トシリズマブ」が痛風にも有効な可能性があるそうです。
チームは、赤身肉など特定の食事が痛風発作の引き金になる可能性はあるものの、主な原因は遺伝的要因だとしています。
金子記者のイチオシ!
アッカーマンシア・ムシニフィラ。アッカーマンシア・ムシニフィラ。アッカーマンシア・ムシニフィラ……。
何度も唱えたくなる言葉って、ありますよね。ゴータマ・シッダールタ、墾田永年私財法などがそれです。このたび私の中で、そのリストに加わった言葉が「アッカーマンシア・ムシニフィラ」です。何かというと、善玉菌の一種で、腸の健康維持や正常な認知機能に関連するのだといいます。
最新の研究で、このアッカーマンシア・ムシニフィラが、早く寝る子どもの腸内に多く存在していることが分かったといいます。つまり、早寝の子どもは健康だということです。
親からすると、寝てほしいと思うときに限って、子どもは寝てくれないものですよね。「夜更かしすると背が伸びないよ」「明日は遠足だからもう寝よう」なんて言っても、よほど聞き分けの良い子でなければ、お構いなしではないですか。
そんなときに、アッカーマンシア・ムシニフィラです。
まずは電気を消してから、「君のお腹の中には、健康を守ってくれるアッカーマンシア・ムシニフィラがいるんだよ」と言って、子どものお腹を触ります。すると、ちょっと不安な様子でこう返ってくるでしょう。「それなに??」
「ふふふ、君の健康を守ってくれるんだよ。早く寝ると、アッカーマンシア・ムシニフィラがたくさんになるんだよ」と答えれば、子どもは思いをはせるはずです。一体、どんな姿の、何者なんだろう、と。
興味を持たせたらこっちのもんです。後は一緒に唱えるのです。アッカーマンシア・ムシニフィラ、アッカーマンシア・ムシニフィラ。羊を数えている場合ではありません。一回口にすると、もう止まりません。アッカーマンシア・ムシニフィラ。アッカーマンシア・ムシニフィラ。
この文章を読んでいるだけで、なんだか眠くなってきませんか。子どもの健康のため、眠れない夜は一緒につぶやいてみてください。アッカーマンシア・ムシニフィラ。
Scientific Reports:Characteristics of gut flora in children who go to bed early versus late

2024‐10‐21
中国の研究チームが、早く寝る子どもの腸は健康であることを明らかにしたと、科学誌Scientific Reportsに発表しました。
チームは、2~14歳の健康な子ども88人を、午後9時半より前に寝る子どもとそれより後に寝る子どもの2グループに分け、その便の分析結果を比較しました。すると、早く寝る子どもは腸内細菌叢(腸内フローラ)の多様性が高く、有益な細菌が多く存在することが分かったといいます。具体的には、腸の健康維持や正常な認知機能に関連する善玉菌「アッカーマンシア・ムシニフィラ」などが豊富だったとのことです。
また、代謝物質の分析では、早く寝る子どもの間でアミノ酸代謝や神経伝達物質調節の活性が高まっていることも明らかになったといいます。これらは脳の機能と発達に重要な役割を果たすそうです。
チームの研究により、睡眠パターンが腸内細菌叢に大きな影響を与えることが分かりました。なお、これまでの研究で、十分な睡眠が成長や学業成績を改善し、BMIを正常に保つことが明らかになっているといいます。
編集部は毎日、 医学誌や科学誌のほか下記のメディアなど をチェックし、取り上げるニュースを選んでいます。
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金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。
阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。