2024.10.24
コロナ後遺症に抗ウイルス薬が有効か ウイルスが体内に残り続ける「持続感染」をストップ▽口の中の細菌が頭頸部がんのリスク上昇させる▽米国の野外コンサートで観客が狂犬病コウモリと接触の可能性
世界各国の大手メディアや医療メディアが配信しているニュース、医学誌や科学誌に掲載された論文の中から、皆さんにぜひ知ってほしいものをマイシュー(毎週)厳選してお届けします。今回は10月10~16日にマイナビDOCTORの『サクッと1分!世界の医療ニュース』に掲載した記事の中から、編集部のメンバーがそれぞれイチオシのものを選びました。「コロナ後遺症」の原因と治療法、口内細菌と頭頸部がんリスクの関係、米シカゴのライブ会場に狂犬病コウモリ――に関するニュース3本を紹介します。
まとめ:医療ニュース編集部
阿部記者のイチオシ!
久しぶりに会った友人から、新型コロナウイルス感染後の「後遺症」でしばらく出社できない状態が続いていたという話を聞きました。なんでも、新型コロナに感染した後、だるさや頭痛が長引き、仕事や日常生活に支障をきたしたそうです。コロナ後遺症専門外来を受診し、今はだいぶ症状が改善したそうですが、半年ほどかなりつらい思いをしたとのことでした。
そのコロナ後遺症について、米国の研究チームが新たな研究成果を発表しました。コロナ後遺症は、ウイルスが体内から完全には除去されず感染状態が続く「持続感染」が原因の一つかもしれないというのです。
新型コロナの流行が始まってからもうすぐ5年。以前に比べると、人々の中で新型コロナは「ありふれた感染症」の位置づけになっていることは間違いありませんし、私自身もそう感じています。しかし、友人の後遺症の話を聞いて、まだまだ「ただの風邪」ではないなと思い直しました。
今回の研究成果は、ウイルスが体内に残り続けることでコロナ後遺症が起こる場合は、抗ウイルス薬で症状を緩和できる可能性を示唆しているそうです。こうした研究を基に、一日でも早くコロナ後遺症の特効薬が実用化されることを願わずにはいられません。
Clinical Microbiology and Infection:Measurement of circulating viral antigens post-SARS-CoV-2 infection in a multicohort study

2024-10-11
新型コロナウイルス感染後の長引く後遺症は、ウイルスが体内から完全には除去されず感染状態が続く「持続感染」が原因の一つかもしれません。米国の研究チームが、医学誌Clinical Microbiology and Infectionに発表しました。
チームは、スパイクタンパク質をはじめとする新型コロナウイルスの構成成分を高感度で検出できる抗原検査を開発したそうです。そして、この検査を使って新型コロナ感染歴のある706人から採取した1569の血液検体を分析しました。
その結果、新型コロナ感染から1~14カ月後に心肺、脳、筋骨格に関連する後遺症がある人の43%からウイルスのタンパク質が検出されたそうです。一方、後遺症の症状がない人のうち、こうしたタンパク質が検出されたのはわずか21%だったといいます。
ウイルスが体内に残り続けることでコロナ後遺症が起こる場合は、抗ウイルス薬で症状を緩和できる可能性があるとのことです。
藤野記者のイチオシ!
口の中の細菌がさまざまな病気の原因になることを教えてくれたのは、ある大学の歯学部の教授(口腔<こうくう>細菌学)です。
その教授によると、口の中の細菌が直接の原因となる病気だけでなく、歯周病などによって生じる炎症物質が全身に回ることで起こる病気も多いそうです。誤嚥(ごえん)性肺炎、糖尿病、関節リウマチ、アルツハイマー病、心臓疾患、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、胎児への影響――などが口の健康と深い関係にあることが分かっているといいます。
そして最近、米国の研究チームが、口腔内の細菌のうち計22種類が頭頸(けい)部扁平上皮がん(HNSCC)の発症リスク上昇に関連しているとの研究成果を発表しました。いったい今後、どれだけの病気と口の中の細菌の関係が明らかになるのでしょう。
教授は会うたびに、「医科と歯科の連携が進めば、たくさんの病気の予防策や治療法が見つかるはずだよ」と話していました。しかし、その重要性を理解していない医師や歯科医師が多く、「なかなか前に進まないんだ。難しいね……」と嘆いてもいました。
私も微力ながら協力しようと、口腔内細菌と病気の関係についての研究報告を見つけたら、なるべくニュースで発信するようにしています。
ところで、そもそも、なぜ医科と歯科は分かれているのでしょうか? 日本だけのことではないので、何か理由があると思うのですが。
JAMA Oncology:Oral Microbiome and Subsequent Risk of Head and Neck Squamous Cell Cancer

2024-10-15
歯磨きで口の中を清潔に保つことで、歯周病だけでなく「頭頸(けい)部扁平上皮がん(HNSCC)」の発症リスクも抑制できる可能性があるそうです。米国の研究チームが、医学誌JAMA Oncologyに研究成果を発表しました。
チームは、健康な男女15万9840人を10~15年にわたり追跡調査しました。このうち、HNSCCを発症した236人と、対照群として無作為に選んだHNSCCではない485人の唾液のサンプルを比較しました。その結果、数百種類ある一般的な口腔内細菌のうち13種類がHNSCC発症リスクの上昇や低下に関連することが明らかになったそうです。
総合すると、こうした細菌はHNSCC発症リスクを30%高める可能性があるといいます。さらに、これらの細菌に9種類の歯周病菌を加えて、合計22種類の細菌に着目したところ、HNSCCリスクを50%上昇させることが明らかになったそうです。
また、チームは口腔内の真菌についても調査を行っています。真菌とHNSCCリスクとの関連性は認められないことが分かったとのことです。
許田記者のイチオシ!
「実は狂犬病に怯えながら過ごしてきた……」。海外旅行が趣味の知人から、突然こんなことを告げられました。何があったのか聞くと、約一年前に訪ねた国で、野良犬にかまれたというのです。狂犬病は感染動物と接触した後、適切な処置をしなければほぼ100%死ぬ病気です。思わず、ギョッとしました。
知人は犬にかまれた後、狂犬病ワクチンを接種する暴露後予防接種(PEP)を受けたそうです。それでも、最初の1週間は死ぬんじゃないかと怯え、泣いて眠れなかったといいます。狂犬病は1年以上(数年のこともあるそうです)たってから発症することもあるので、ずっと心のどこかに恐怖を抱えているようです。
厚生労働省によると、狂犬病は日本、英国、スカンジナビア半島の国々、オーストラリア、ニュージーランドなど一部の国を除いた全世界でヒトの症例が報告されています。世界保健機関(WHO)によると、アフリカやアジアを中心に150を超える国々で毎年、計約5万9千人が死亡しています。
今回紹介するニュースは、米国の野外ライブ会場に狂犬病ウイルスを保有したコウモリが飛来し、参加者と接触した可能性があるというものです。米国では人の生活場所から離れなければ安全だろうと勝手に思っていたので、リスクが身近にあることを知ってとても驚きました。
厚労省によると、日本では1957年以降、狂犬病の国内発生はありません。そのため、日本人は狂犬病に対する警戒心が低く、海外でも不注意に動物に手を出す人が多くいると聞きます。海外に行く人は、動物との接触を避けることはもちろん、万一動物にかまれたり引っかかれたりした場合に取るべき対応をきちんと調べておいてほしいと思います。
シカゴ公衆衛生局(CDPH):Potential Bat Exposure at the Salt Shed

2024-10-10
米イリノイ州のシカゴ公衆衛生局(CDPH)は、9月12日に行われた野外コンサートの観客が、狂犬病ウイルスを保有するコウモリに接触した可能性があるとして注意を呼びかけました。シカゴ周辺のコウモリの一部が狂犬病にかかっていることが分かっているそうです。
CDPHは、ライブ会場「Salt Shed」で午後5~10時の間にバンドグループ「Goose」に参加した人の中で、コウモリにかまれたり、引っかかれたり、直接接触したりした人がいれば、直ちに医療機関で狂犬病の「暴露後予防(PEP)」について相談するよう求めました。ただし、コウモリのかみ傷は小さいため見つけるのが難しく、かまれたことに気づかない場合もあるといいます。
狂犬病はヒトや哺乳類の神経系に深刻な影響を与える感染症で、狂犬病ウイルスに感染した動物を介してヒトに感染します。潜伏期間は通常1~3カ月ですが、1週間~1年以上と大きな幅があります。感染動物と接触した後、迅速かつ適切にPEPが投与されなければ、ほぼ100%死に至ります。
編集部は毎日、 医学誌や科学誌のほか下記のメディアなど をチェックし、取り上げるニュースを選んでいます。
BBC/ CNN/ CBS News/ ABC News/ NBC News/ AP通信/ NPR/ USA TODAY/ ABC News(Australian Broadcasting Corporation)/ Health Europa/ Medical Xpress/ Science Alert/ Science Daily/ Medgadget/ INSIDER/ Asian Scientist Magazine/ Medical Brief/ Psy Post/ Psychology Today/ MIT Technology Review/ i/ The Conversation/ SciTechDaily/ Healthline/ EurekAlert!藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。
阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。