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2024.07.19

小徳羅漢医師(2)奄美大島の中心でコーヒーを配る、歌う、踊る「暮らしの保健室」!

「孤独」は1日に15本のたばこを吸うのと同じくらい健康に悪いそうです。孤独を解消するために、医師が患者や相談者に対し、社会的なつながりを持てるように支援する「社会的処方」と呼ばれる取り組みがあります。小徳羅漢医師は、奄美大島の商店街の一角で、コーヒーを配って、街の人たちの相談に乗る「暮らしの保健室」という活動をしています。

病院や薬では治療できないものがあります。孤独が、その一つです。孤独は、1日に15本のたばこを吸うのと同じくらい健康に悪いといわれています。その孤独を解消する「お薬」として、医師が患者や相談者に対し、社会的なつながりを持てるように支援する「社会的処方」と呼ばれる取り組みがあります。発祥の地・イギリスでは家庭医がアート教室や園芸教室を紹介するそうです。

僕は、商店街の一角でコーヒーを配って、街の人たちの相談に乗る「暮らしの保健室」という活動をしています。資格もいらない、誰でもできる活動です。その中で僕は、健康についての相談を受けています。街の人たちの交流の場を作り、気軽に健康について話せる場を作ることは、予防医療でもあり、街づくりでもあります。

文・写真提供/小徳羅漢

一緒に活動している「奄美暮らしの保健室」の仲間たち=2022年11月
僕は「奄美暮らしの保健室」という団体で活動していて、勤務先の県立大島病院に部活動として認めてもらっています。2022年8月に研修医と看護師を誘って、5人でスタートしました。商店街のスペースを借りて、机と椅子を並べ、コーヒーを配ったり、街の人の話を聞いたり、時に病院につなげたりします。2~3カ月に一度のペースで、これまでに9回開催しました。毎回、僕がチラシを作り、メンバーの中から参加できる人を募っています。団体には看護師、薬剤師、獣医師、研修医、看護学生、商店街の店主など30人ほどが所属していて、その中から各回、7、8人が参加してくれています。

子どもたちに大人気の「風船にー(お兄さん)」。実は看護師の資格を持っています!=2023年5月
奄美市の中心地にある「なぜまち商店街」が主な開催場所です。コーヒーを配る以外にも、奄美三線を弾きながら歌ったり、バルーンアートを子どもたちにプレゼントしたりと、わいわいやっています。歌って、踊って、笑って、街が少しでも元気になれば良いなと思って、僕も楽しみながら活動しています。

鹿児島市の薬局で行った初めての「暮らしの保健室」=2020年3月
実は、僕が「暮らしの保健室」を初めて開催したのは奄美大島に来る前、鹿児島市の鹿児島大学病院で働いていた時です。それまで診た患者の中には、病院嫌いで病気の発見が遅れて、脳出血や心筋梗塞(こうそく)を起こした人がいたり、リストカットを繰り返す若者がいたりして、「病院でできることはなんて少ないんだ」と無力さを感じていました。

その人たちのために、予防医療としてできることはないのかという思いを抱えている時に出会ったのが、「社会的処方」について書かれた本でした。その中で紹介されていた「暮らしの保健室」の事例を見て、「かっこいいし、楽しそうだな。僕にもできるかも!」とピンときたんです。それで、知り合いの薬剤師さんが「うちの薬局でやったら?」と提案してくれて、すぐに開催しました。すごく盛り上がって、楽しくて、「奄美大島に行った後もできたらいいな」と思っていました。

看板を特注することから始めました。ここから「奄美暮らしの保健室」の活動が始まりました=2022年6月
奄美大島に来たばかりの頃です。妻と一緒に街中に出かけると、奄美三線を弾いているおじさんがいました。周りにはたくさん人が集まっていて、そのにぎやかな様子と、奄美三線の独特なメロディから「奄美に来た~」という実感が一気に湧いてきました。僕らはおじさんから奄美三線の弾き方を教えてもらって、それがとても楽しくて、「また教えてください!」とお願いしたんです。それから数カ月後、おじさんはがんで亡くなったと商店街の人に聞きました。僕が医師だと知ってくれていて、体の調子について相談してもらえていたら何か違ったのかな、と悔しさがこみ上げました。

本来治療が必要な人だとしても、「こんなことで病院にかかるのは大げさかな」とためらったり、病院に行きたくないため、つらさを我慢していたりすることがあります。なので、気軽に相談できる場を作ることで、ちょっとした悩みや、ため込んでいる悩みをぶつけてもらいたいという思いで活動しています。

在宅訪問管理栄養士と訪問看護師がお家でできる栄養療法について話しています=2023年8月
奄美暮らしの保健室は、一人も相談に来ない日もあれば、10人くらい来る日もあります。来てくれた人の相談内容は、将来の不安から家族の健康など、さまざまです。月経困難症が疑われる女性が相談にやって来たことがありました。薬を服用した方が楽になると思ったので、症状や既往歴、今飲んでいる薬などをまとめたメモを作って、「病院でこれを渡したら、どういう状況か先生がすぐに分かると思います」と伝えました。後日、彼女が僕の病院にそのメモを持ってきてくれた時はうれしかったです。

特注した「奄美暮らしの保健室」の看板を抱えて、「街で一緒にコーヒーを配らない?」と後輩の研修医を誘ってから、もうすぐ2年がたちます。

初回から協力してくれている商店街の店主のおじさんが「昔の活気が戻ったようでうれしい」と、親しい人を連れてきてくれたり、コーヒーを飲みに来てくれた人が手伝ってくれるようになったりして、どんどん仲間が増えてきました。経歴も年齢もばらばらですが、みんな「誰かのためになりたい」という気持ちで活動しています。これからも、細くてもいいので、長く続けたいと思っています!

PROFILE

小徳羅漢(ことく・らかん)

小徳羅漢さんのプロフィール

鹿児島県立大島病院に勤務。
1991年、茨城県生まれ。小学校高学年の時から神奈川県で暮らす。16年、東京医科歯科大学卒業。鹿児島市医師会病院で初期臨床研修後、18年には長崎県上五島病院で、19年には離島へき地医療の最先端といわれるオーストラリア・クイーンズランド州で研修。20年から現職。街中で医師らに無料相談ができる「暮らしの保健室」を開催している。趣味は温泉巡りと映画鑑賞、そして島巡り。18年に結婚し、20年に夫婦で鹿児島県奄美市に移住。2人の子どもを育てている。
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