2025.09.18
中国発「996」は米AIにも拡散。私は裁量で長時間働く医師で、診療・動画・支援が相乗。社長業としてペース配分でき、疲労にも意味を見いだし、ワーカホリックで知的ドパミン中毒と自覚。
中国のテック業界で広まった「996」。朝9時から夜9時まで、週6日働くことを意味する言葉だ。過酷な労働環境として批判も多いが、近年はその概念が国境を越えて広がりつつある。
アメリカの一部のAI系スタートアップの中には、暗黙の了解として「996」的な稼働を求める企業がある。急成長している分野では、スピードと成果を最優先し、労働時間の長さを一種の覚悟の証として容認する風潮が残っている。
僕は医師としてクリニックを運営している。そこでの働き方はスタッフの勤務条件や生活リズムとの兼ね合いもあり、朝11時から夜7時まで、週4.5日だ。しかし、診療の合間や終業後にはYouTubeチャンネルの企画・撮影・台本作りがある。さらに、精神疾患などで休職している人の職場復帰を支援する「リワーク施設」の監修、患者や家族が集う「オンライン自助会/家族会」の運営も行っている。これらを合わせると、限りなく「996」に近い働き方になっている。
とはいえ、僕がこの働き方を維持できているのは、他者からの強制ではなく、自分の裁量でペース配分できる「社長業」という立場にあるからだ。労働時間が長くても、やるべきことや優先順位を自分で決められるため、疲労の質が違う。
診察室では患者さんの人生に向き合い、オフィスや自宅では動画の編集チェックをしたり企画の構想を練ったりする。これらの仕事は互いにシナジーがあり、知的発見が多くあるので、楽しくてやめられない。
「996」は、経営陣が労働者を搾取するための、ただの長時間労働に見えるかもしれない。しかし、ハードワークにもそれなりの意味があると思う。僕は他の人よりも不器用だし、物覚えもそこまで良い方ではないが、体力があるので人の倍働くことで、なんとかキャッチアップできてきた気がする。それに、長時間、一緒に働くことで、コミュニケーションがうまく取れているという面もある。初対面や短い時間で好印象を与えられるほど、僕は器用ではないからだ。
診療は、短時間で済ませた方が効率的だ。しかし僕は、患者さんの物語にじっくり耳を傾けたい。そのための体力がある今、あえて長く働くことで得られるものがある。YouTubeや自助会/家族会の活動も同じだ。膨大な出会いと経験が、知識だけではなく感性を育ててくれる。
もちろん、永久にこのペースを続けられるわけではない。だからこそ、今それができている僕は、恵まれているなと思う。長時間働きたくても、体力的な問題や家族の問題、組織としての協調性を取るためなどの理由で、働けない人もいるだろう。
僕は、「ワーカホリック(仕事中毒)」もしくは「知的発見ドパミン中毒」なんだと思う。
益田裕介(ますだ・ゆうすけ)
1984年生まれ。岡山らへん出身。精神保健指定医、精神科専門医・指導医。防衛医科大学校卒業、陸上自衛隊勤務後、民間病院を経て、2018年4月より東京都内の早稲田大学横で個人開業医をしている。19年12月からYouTubeもやっている変な人。酒が好きすぎて、心身を壊しそうだったので20年6月から断酒中。そのことを自慢に思っている。週6~7勤務も疲れてきたので、勤務日を減らしたいけれど、貧乏性なので減らせない。こんなに頑張って働いているお父さんなのに、8歳になる娘からは「変態おじさん」なるあだ名を拝命しました。
月曜のマミンカ
神奈川県川崎市在住のイラストレーター、絵本作家、グラフィックデザイナー。 2022年、絵本「カモンダメダメモンスター」を出版後、こどもと楽しめるワークショップを不定期で開催。 4匹の保護猫とヒーロー好きな息子、自由奔放な娘の子育てに奮闘中。
HP: https://mondaymom.official.ec/
Instagram: https://www.instagram.com/mondaymaminka/