2025.02.13
米国で「大人のADHD」が増えている? 学会が診断治療のガイドライン公表へ▽すぐ効く!しゃっくりの止め方▽がんと長期間戦える「疲れ知らず」の免疫細胞見つかる▽心不全治療の新技術 iPS細胞由来の心臓パッチ
世界の医学誌や科学誌に掲載された論文、大手メディアや医療メディアが配信している医療・医学ニュースから「見逃し厳禁」の数本を選び、ランキング形式で毎週紹介します。トップ2は医療ニュース編集部の記者のコラム付き。なお、『What You Missed』は日本語版しか存在しません。今回は1月30日~2月5日にマイナビDOCTORの『サクッと1分!世界の医療ニュース』に掲載した記事の中から最も注目の集まったニュース4本を紹介します。
まとめ:医療ニュース編集部
AP通信:Rise in diagnoses is prompting more US adults to ask: ‘Do I have ADHD?’

2025-01-30
米国で、「注意欠如・多動症(ADHD)」と診断される成人が急増しているそうです。そのような中で、診断方法にばらつきがあることが課題になっており、ADHDと関連障害の米国の学会(APSARD:The American Professional Society of ADHD and Related Disorders)が、成人を治療する医療従事者向けの診断および治療のガイドラインを今年後半に公表する予定だそうです。AP通信が報じました。
発達障害の一種であるADHDは男児に多く見られ、成長とともに落ち着くものとこれまで考えられてきました。しかし専門家によると、多くの人が子供の頃に診断されず、実際は大人になっても症状を抱えたまま生活しているといいます。最近の研究で、1500万人以上の米国の成人(17人に1人)がADHDの診断を受けており、成人患者の約半数が18歳以降に診断されていることが分かったそうです。
ADHD急増の背景には、2013年に診断基準が変更され、ADHDの定義が広がったことが挙げられます。しかし、20年に始まった新型コロナウイルス感染対策のためのロックダウン(都市封鎖)で、軽度のADHDを持っていた人が症状を悪化させた可能性もあるそうです。
「自分はADHDの傾向がある」と公言している友人がいます。彼女によると、子どもの頃から整理整頓が苦手で、忘れ物や落とし物の多さにも苦労していたそうです。大人になってからADHDのことを知り、自分もこれに違いないと腑(ふ)に落ちたといいます。今も困りごとがなくなったわけではないものの、自分なりに工夫をすることで日常生活に支障は来たしていないため、受診はしていないとのことでした。
ADHDについて広く知られるようになったこともあり、この友人のように大人になってから「自分はADHDかも?」と疑ったり、医療機関でADHDと診断されたりするケースが日本でも増えているのではないでしょうか。実際に私の周りでも、ここ数年でADHDという言葉を耳にする機会がぐんと増えたように思います。
大人のADHDが急増しているというアメリカで、ADHDの関連学会が成人を治療する医療従事者向けの診断および治療のガイドラインを公表する予定だといいます。どのようなガイドラインが作成されるのか、日本でも注目が集まりそうです。【阿部あすか】
Cureus:Hiccup Relief Using Active Prolonged Inspiration

2025-02-03
しゃっくりを止める方法が分かったそうです。米国の研究チームが医学誌Cureusに論文を発表しました。
しゃっくりは、腹部と胸部を仕切る筋肉である横隔膜が自分の意思とは無関係にけいれんすることで起こります。チームが発見したのは、横隔膜の運動を支配する横隔神経、嚥下や声帯の運動などに関わる迷走神経への刺激、一時的な血中二酸化炭素濃度の上昇を組み合わせた対処です。
しゃっくりが出たら、まず最大限に息を吸い込み、喉を開いた状態にしたまま、引き続き30秒間息を吸い続けます。その後、ゆっくりと息を吐き出し、通常の呼吸に戻すのだそうです。
しゃっくりが止まらない17~64歳の21人にこの方法を試してもらったところ、全員がすぐにしゃっくりを止めることができたといいます。このうち1人は、48時間以上しゃっくりが続く持続性しゃっくりに苦しんでいたとのことです。
また途中で息を吸わずにコップの水を一気飲みすることでも、同様の効果が得られる可能性があるとのことです。
1990年代半ば、当時大学生だった一人の青年が生理学の本を眺めていました。そして、呼吸の説明の記述に、あることをひらめいたのです。それは、ちょくちょく自分を苦しめてきたしゃっくりの止め方です。
本にはこんなことが書かれていました。
肺自体に膨らんだりしぼんだりする機能はない。肺が収まる空間を胸腔(きょうくう)といい、その容積の変化によって二次的に肺の容積が変わる。胸腔の容積を決めるのは、横隔膜と肋骨(ろっこつ)筋の弛緩・収縮である。横隔膜などが弛緩する(伸びて長くなった分、胸腔内に入り込んでくる)と胸腔は狭まり、収縮すると逆に胸腔は広がる。つまり、横隔膜などが弛緩することで息が吐きだされ、収縮することで息が吸い込まれる。
青年はこう考えました。しゃっくりは横隔膜のけいれんなのだから、最大限に弛緩または収縮させて横隔膜を動かなくしてしまえば、そのうち止まるのではないか――。数日後、絶好の機会が訪れます。炭酸飲料をごくごくと飲んだ直後に、しゃっくりが出て止まらなくなったのです。最大限に息を吐きだす(横隔膜を弛緩させる)のは難しいので、これでもか!というほど息を吸い込んで、可能な限りその状態を維持しました。すると……止まったのです。しゃっくりが完全に。
それ以降、青年はしゃっくりで困っている人にこの技を伝え続けました。ほとんどの人が同じ反応を示しました。まず「またまた、変な冗談言っちゃって」と笑い、実践した後にその効果に驚き、激しく感謝するのです。
四半世紀後、ある論文が医学誌に発表されました。彼が発見した方法とそっくりな、しゃっくりの止め方を記したものです。中年となった彼は「科学がようやく自分に追い付いた」と満足気に老眼鏡の奥の目を細めています。【藤野基文】
Science Immunology:Stem-like memory and precursors of exhausted T cells share a common progenitor defined by ID3 expression

2025-02-05
がんや感染が長引くと免疫系が疲弊し、特にその最前線で防御能力を発揮するT細胞の機能が失われてしまうそうです。オーストラリアなどの研究チームが発見したのは、「ID3」と呼ばれるタンパク質が発現している珍しいタイプの免疫細胞「幹細胞様T細胞」です。このT細胞は、疲弊せずに長い間戦い続けることができるそうです。チームは、ID3活性を強化することで、がんなどの長引く疾患の治療効果が高まる可能性があるとしています。
Nature:Engineered heart muscle allografts for heart repair in primates and humans

2025-02-03
iPS細胞(人工多能性幹細胞)由来の心臓細胞から作った心筋組織「心臓パッチ」を心臓の表面に移植することで、心不全を安全に治療できる可能性があるそうです。
ドイツの研究チームが、心不全のアカゲザルにアカゲザルiPS細胞由来の心臓パッチを移植したところ、新たな心筋が形成され、ポンプ機能が改善したといいます。重篤な副作用はなかったとのことです。
チームはまた、ヒトiPS細胞由来の心臓パッチを心不全患者に移植する臨床試験も行ったそうです。3か月後に患者が心臓移植を受けたためにパッチを移植した心臓は摘出されました。その心臓を分析した結果、アカゲザルの心臓と同様に心筋が形成されていたとのことです。
藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。
阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。