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2023.12.21

2023年 医療・医学の重大ニュース<前編>

WHO、新型コロナ「緊急事態宣言」を解除▽コロナ後遺症について、米NIHが治療に向けた試験開始▽アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」承認▽RSウイルスワクチン、世界で初承認▽今年、問題になった感染症

世界各国の大手メディアや医療メディアなどが配信しているニュースの中から、皆さんにぜひ知ってほしいものをマイシュー(毎週)選んでお届けしてきました。今年も残りわずかです。そこで、今回と次回は2023年の重大ニュースを振り返ります。

まとめ:医療ニュース編集部

WHO、新型コロナ「緊急事態宣言」を解除

今年5月、3年以上続いた世界の新型コロナウイルスとの戦いは大きな節目を迎えました。世界保健機関(WHO)が5月5日、2020年1月30日に宣言した新型コロナに関する「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を解除すると発表しました。ただし、パンデミックが完全に収束したわけではなく、新型コロナが脅威でなくなったということではありません。WHOは、この時点で毎週数千人の患者が死亡していたことに言及。依然として新たな変異株が出現する可能性もあるとして、注意を呼びかけました。

コロナ後遺症について、米NIHが治療に向けた試験開始

新型コロナウイルス感染症は、後遺症に苦しむ人の多さが世界的に問題になっています。米国立衛生研究所(NIH)が7月31日、「新型コロナ後遺症」の治療法を探る研究を開始したと発表しました。コロナ感染後に10~30%の人が、何らかの原因不明の後遺症を経験するといいます。NIHは、知られている200以上の症状別に臨床試験を行う予定だそうです。最初は、本来感染初期に使うコロナ治療薬「パキロビッド」を25日間投与した場合の後遺症への有効性を調査するとのことです。「ブレインフォグ」や睡眠障害、POTS(体位性頻脈)についての研究開始も決まっているといいます。

アルツハイマー病治療薬「レカネマブ」承認

製薬大手エーザイと米バイオジェンが開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」について、米食品医薬品局(FDA)が1月6日に迅速承認し、7月6日に正式承認しました。軽度認知障害(MCI)または初期段階の患者の脳から異常なタンパク質アミロイドβを除去し、病気の進行を遅らせる薬です。1800人を対象に18カ月間にわたって行われた第3相試験では、レカネマブがプラセボ群に比べてアルツハイマー病の進行を27%遅らせることが判明したそうです。2週間に1回の点滴投与が必要で、患者1人当たり1年間に2万6500ドルかかるといいます。

レカネマブについては、有効性や安全性に対して疑問を持つ専門家もいるようです。病気の進行を遅らせる程度は、患者や家族が効果に気づかないほどわずかなのだそうです。また、安全性を指摘する声も上がっています。第3相試験では、脳出血がレカネマブ群の17.3%、プラセボ群の9%で発生し、脳浮腫はレカネマブ群の12.6%、プラセボ群の1.7%で認められたとのことです。 アルツハイマー病の治療については、さまざまな研究が進んでいます。ただ、まだ今は、アルツハイマー病は治ることもなければ、良くなることもないのが実情です。

RSウイルスワクチン、世界で初承認

乳幼児や高齢者に重症の下気道疾患を引き起こすことがあるRSウイルス(RSV)について、世界初のワクチンが米国で承認されました。

一つは、英グラクソ・スミスクライン(GSK)製の60歳以上を対象とした「Arexvy」です。米食品医薬品局(FDA)が5月3日に承認しました。2.5万人の高齢者を対象にした臨床試験では、RSVの肺への感染予防効果が83%であることが示されたといいます。

もう一つは、米ファイザー社が開発した妊婦向けRSVワクチン「Abrysvo」です。8月21日にFDAが承認しました。母親が妊娠後期にワクチンを接種することで、生まれた乳児を生後6カ月までRSV感染から保護できるといいます。18カ国の女性7400人に対する臨床試験では、乳児のRSV感染による重症化を生後3カ月で82%、生後6カ月で70%、それぞれ予防する効果があったとのことです。

またFDAは7月17日、RSV感染を予防する乳幼児向けのヒトモノクローナル抗体製剤「Nirsevimab(ニルセビマブ)」も承認しています。開発は英アストラゼネカと仏サノフィ社で、欧州連合(EU)では承認済みの薬です。臨床試験では、同薬がプラセボ群と比べてRSVで受診するリスクを70%、入院するリスクを78%それぞれ抑制することが示されたそうです。対象は生後24カ月までの乳幼児で、注射で1回投与すると4~6カ月効果が持続するとのことです。

今年、問題になった感染症

■米国でマラリアの国内感染

米国で海外滞在歴のない人のマラリア感染が20年ぶりに確認され、米疾病対策センター(CDC)が注意を呼び掛けたというニュースが6月に入ってきました。米国内での感染例が最後に報告されたのは2003年だといいます。6月の時点では、フロリダ州で4例、テキサス州で1例の計5例の国内感染が発生したとのことでした。マラリアは蚊が媒介し、死に至ることもある感染症です。気候変動の影響で、感染症の発生地域が変わってきているようです。

■日本、米国で先天梅毒が増加

胎盤を通して梅毒が母子感染する「先天梅毒」の日本国内の報告数が10月4日時点で、現在の調査方法になって以降、過去最高を記録したというニュースを国内の複数の報道機関が報じました。米国でも先天梅毒が急増しているようで、2012~22年で報告数が10倍に急増したとしてCDCが医療機関に緊急措置を求めたそうです。先天梅毒は死産や乳児死亡、失明や難聴などが生じる可能性があります。米国では22年に3761人の報告があり、200人以上が死亡したそうです。

■麻疹の症例数と死者数が急増

世界保健機関(WHO)とCDCが11月16日に、2022年の世界の麻疹(はしか)の動向を発表しました。症例数や死者数が急増したそうです。21年にはしかの大流行が起きたのは22カ国だったのに対し、22年は37カ国に増加したといいます。22年の感染者は20%近く増の900万人で、死者は40%以上増の13万6000人だったそうです。新型コロナのパンデミック以降、はしかワクチンの接種率が世界的に低下していることが影響したとみられています。特に低所得国のワクチン接種率は66%にとどまっているとのことです。23年の状況も悪化しているのでしょうか。

■アフリカで炭疽菌感染が拡大

WHOは12月11日、アフリカのケニア、マラウイ、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエで炭疽菌感染が拡大していると発表しました。今年になって確認された死者は計20人。このうち13人はウガンダで報告されているといいます。感染疑いのある患者は計1166人で、684人がザンビアで報告されているとのこと。ザンビアの10州のうち9州で感染者が出ているといいます。WHOはザンビアから周辺国へ拡大するリスクが高いと懸念しているそうです。炭疽菌は主に汚染された動物に接触することでヒトに感染します。皮膚や消化器、呼吸器に異常が出て、治療を行わない場合の死亡率は約20%とのことです。

※この記事はマイナビDOCTORの「サクッと1分!世界の医療ニュース」を再編集したものです

PROFILE

医療ニュース編集部

藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。

阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。