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2025.12.19

2025年の医療・医学重大ニュース<時事編>

トランプ政権再スタートで大混乱! どうなる米国の公衆衛生▽.北米ではしかが大流行▽ブタ臓器の移植は一般化するのか?▽.米国で鳥インフルH5N1の緊急対応終了、その後H5N5で世界初の死者の報告▽WHOの動きから見る世界の公衆衛生問題 高血圧、孤独、薬剤耐性菌、はしか、肥満…

今年も残りわずかです。2025年の医療・医学に関する重大ニュースを振り返ります。今回は時事問題を、次回は研究・研究者に関する話題を中心に取り上げます。【まとめ:医療ニュース編集部】

①トランプ政権再スタートで大混乱! どうなる米国の公衆衛生

1月20日にドナルド・トランプ氏が米国の大統領に就任しました。今年1年間、トランプ政権の方針によって米国の公衆衛生は混乱を極めました。また、米国内だけでなく、途上国も深刻な影響を受けています。
■米トランプ大統領がWHO脱退を表明 今後の影響は?(1月)
米国のトランプ大統領は就任初日の1月20日、WHO(世界保健機関)からの脱退を指示する大統領令に署名しました。WHOにとって米国は、資金や人材の面で最大の支援国の一つでした。2023年は予算の18%が米国からの拠出だったそうです。こうした莫大な資金援助が絶たれることで、WHOが長年積み上げてきた公衆衛生を巡る数多くの世界的戦略が損なわれる可能性があります。

■米トランプ政権によるUSAIDの海外援助資金凍結で、世界の感染症対策に深刻な影響(2月)
米国のトランプ政権は、海外援助を管轄する米国際開発局(USAID)の閉鎖に向け、USAIDからの数百億ドルの資金援助を凍結するなどの措置を講じました。USAIDは年間約400億ドルの海外援助を行っていますが、トランプ大統領は「支出に関して全く説明がつかない」「(職員は)無能で腐敗している」として、ほぼ全ての援助を停止する方針を示しました。公衆衛生の専門家からは、感染症のまん延やワクチン開発の遅れなどにつながる可能性があるとの懸念の声が上がりました。

■ケネディ氏が米厚生長官に就任 ワクチン監視、慢性疾患重視、保健機関の職員を大量解雇…?(2月)
米国のトランプ大統領の指名したロバート・ケネディ・ジュニア氏が2月13日、厚生(保健福祉省:HHS)長官に就任しました。米メディアのインタビューで「ワクチンによる副反応をより注意深く監視する強力なプログラムを立ち上げる」と述べ、監督下に置く食品医薬品局(FDA)や疾病対策センター(CDC)、国立衛生研究所(NIH)の職員を大量解雇(14日にCDCとNIHの職員を大量解雇)についても言及しました。ここから、米国の公衆衛生の混乱が加速します。

■人事も混迷を極める FDAのワクチントップが辞任(3月)CDCワクチン諮問委を全員解任(6月)CDC所長を解任(8月)
米保健福祉省(HHS)は3月28日、2016年から食品医薬品局(FDA)でワクチン関連部門のトップを務めてきたピーター・マークス氏が辞任したと発表しました。米国の複数のメディアは、ケネディ厚生長官と意見の異なるマークス氏が、辞職か解雇かの選択を迫られ、職を追われたと報じました。

また、ケネディ長官は6月9日に米疾病対策センター(CDC)にワクチンの安全性や有効性に関する助言を行う独立した組織「予防接種実施諮問委員会(ACIP)」の委員17人を全員解任。ワクチンに懐疑的な立場をとる人物を含む8人を新たに指名しました。

さらに、米ホワイトハウスは8月27日、CDC所長のスーザン・モナレズ氏が退任したと発表しました。モナレズ氏は7月31日に就任したばかりでした。米国内の複数のメディアは、人事やワクチン政策などを巡ってケネディ長官と対立していたと報じました。

■米CDCがウェブサイト更新 ワクチンと自閉症の関連を示唆(11月)
米疾病対策センター(CDC)の「自閉症とワクチン」に関するウェブページが11月19日に更新されました。これまで強く否定していた両者の関係について、更新後は「その関連性は保健当局によって無視されてきた」と主張を大きく変更しています。ワクチン懐疑派として知られる米保健福祉省(HHS)のケネディ長官が以前から主張してきた考えを反映したものです。

②北米ではしかが大流行

米国とカナダで麻疹(はしか)が大流行しました。米国では2000年に根絶が宣言されて以降、患者数が最多に。カナダは11月、WHO(世界保健機関)から認定された「排除国」の地位を取り消されました。
■米国ではしかの拡大止まらず 25年前の根絶宣言以降で最多の1536例に(10月)
最大の感染地だったテキサス州では8月に流行の終息が宣言されました。ところが、他の地域では感染者が増え続けており、米疾病対策センター(CDC)によると8月末以降、全米で毎週平均27人の新規症例が報告されているといいます。10月7日時点で2025年の累積患者数は1563人となり、00年に麻疹の根絶が宣言されて以降、最多となっていました。その後も増え続け、12月16日現在で1958人の感染者が報告されています。

■カナダではしかの流行が1年以上続く 「排除国」取り消しの可能性(10月)
報道によると、カナダでは2024年10月、東海岸のニューブランズウィック州ではしかの流行が始まり、拡大しました。今年10月28日時点で5000人以上の感染者が報告され、乳児2人が死亡しています。1998年にWHO(世界保健機関)から「麻疹排除国」に認定されましたが、「12カ月以上同じ遺伝子型のウイルス株による継続的な感染がない」という条件を満たさなくなったため、今年11月にその地位を取り消されました。

③ブタ臓器の移植は一般化するのか?

臓器移植を希望する人に比べて、提供される臓器の数は圧倒的に不足しています。その解決策として、異種移植の試みが進められています。ブタの臓器のヒトへの移植は2022年1月7日に米国で、世界で初めて行われました。重い心臓病を持つ57歳の男性にブタの心臓が移植されたのです。その後、24年には世界初のブタ腎臓の移植手術が行われ、25年はブタ肝臓の移植が中国で実施されていたことが明らかになりました。

■米FDAがブタの腎臓移植の臨床試験実施を承認 米のバイオテクノロジー企業2社に(2月)
米食品医薬品局(FDA)が米国のバイオテクノロジー企業2社に対し、遺伝子改変したブタの腎臓をヒトに移植する臨床試験の実施を承認したことが明らかになりました。United Therapeutics社は今年2月3日、FDAから承認を受けたことを発表。eGenesis社は2024年12月に、FDAから承認を得たとのことです。この時点で、ブタの臓器の移植手術は計5件行われています。ただし、これらは正式な臨床試験ではなく、命に関わる患者の救済措置として特別に緊急承認されたものです。

■ブタの肝臓で肝不全患者の血液をろ過 米FDAが治験を承認(4月)
米国のバイオテクノロジー企業eGenesisなどは4月15日、遺伝子操作したブタの肝臓を使って肝不全患者の血液をろ過する臨床試験の実施を、米食品医薬品局(FDA)から承認されたと発表しました。肝臓は唯一、再生が可能な臓器です。そこで、ブタの肝臓が数日間血液をろ過する間、患者本人の肝臓を休ませることで、再生の可能性が高まることを期待しているそうです。肝移植の資格がない肝不全患者最大20人を対象に、臨床試験を実施するとのことです。

■世界初、ブタ肝臓を男性患者に移植 術後171日間生存/中国(10月)
中国の研究チームが10月、感染や拒絶反応が起きないよう10カ所の遺伝子を改変したクローンブタの肝臓を2024年5月に、B型肝炎関連肝硬変と肝臓右葉の肝細胞がんを患う71歳の男性に移植したと発表しました。移植後38日目に、残っていた患者自身の肝臓が生命維持に十分な機能を果たせると判断され、ブタ肝臓を摘出。しかし、135日目に上部消化管出血が発生し、これが原因で移植から171日後に死亡したと報告されています。

■271日間機能したブタ腎臓を米男性から摘出 世界最長の異種移植記録(10月)
1月25日に米ニューハンプシャー州の男性に移植したブタの腎臓に機能低下が見られたため、10月23日に摘出手術が行われました。ブタ腎臓は男性の体内で271日間にわたって機能し、異種移植の世界最長記録を更新しました。ブタの臓器移植手術を受けたのは、この男性が世界6人目です。それまでの最長は、5例目として2024年11月にアラバマ州の女性に移植されたブタ腎臓で、130日間機能しました。しかし、拒絶反応の兆候が出たために摘出されました。

④米国で鳥インフルH5N1の緊急対応終了、その後H5N5で世界初の死者の報告

2024年3月以降、乳牛の間で流行が広がり、ヒトでも感染者が見つかった鳥インフルエンザ(H5N1型)。今年初めは感染例の報告があり、ヒトでの感染拡大が懸念されました。しかし大事には至らず、米疾病対策センター(CDC)が7月に救急対応を終了しました。ただその後、世界初となるH5N5型の感染者が見つかり、死亡しています。このように、鳥インフルは継続した対応が必要なのですが、トランプ政権はmRNAワクチン開発の資金交付を打ち切る決定を下しました。
■米ネバダ州の酪農従事者から鳥インフル「D1.1」検出 乳牛からの感染は初めて(2月)
米疾病対策センター(CDC)が2月10日、米ネバダ州の酪農従事者1人に、鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)の新たな遺伝子型「D1.1」が感染したことを公表しました。D1.1が乳牛からヒトに感染した例が報告されるのは初めてです。ヒトのD1.1感染については重症化の危険が指摘されていますが、この患者は結膜炎のみで回復したそうです。

■米国の鳥インフル入院患者が4人に ワイオミング州とオハイオ州から報告(2月)
米国で鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)の感染によって入院した患者が相次いで報告されました。米国で3人目の入院患者となったワイオミング州の女性は、自宅で飼育していた鳥から感染したとみられています。州の保健当局が公表を拒否しているといい、その後の容体は不明です。4人目はオハイオ州の男性で、感染した家禽と接触し、呼吸器症状があったことが分かっているとのことです。この患者は回復して退院しました。

■米厚生省、モデルナへの鳥インフルワクチン開発資金の交付を打ち切り(5月)
米保健福祉省(HHS)は5月28日、米製薬大手モデルナと結んでいた鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)に対するmRNAワクチン開発の契約を打ち切ると発表しました。バイデン前政権は2025年1月、モデルナに5.9億ドルの助成金を交付する契約を結びました。しかしトランプ政権は「これ以上の資金援助は、科学的にも倫理的にも正当化できないとの結論に至った」として打ち切りを決定しました。

■米CDC、鳥インフルH5N1への緊急対応を終了 2月以降「ヒト感染なし」で判断(7月)
米疾病対策センター(CDC)は、2024年4月から実施していた鳥インフルエンザウイルスH5N1型に対する緊急対応を、25年7月2日付で終了しました。25年2月以降、ヒトの感染例が報告されなかったためです。米国内では22年以降、約1億7500万羽の野鳥や家禽にH5N1型が感染。24年3月に乳牛への感染が初めて確認され、その後17州で1074(25年7月7日現在)の群れに拡大しました。ヒトへの感染例も70件が報告されており、このうち1人は死亡しています。

■世界初の鳥インフルH5N5型患者、米ワシントン州で死亡(11月)
米西部ワシントン州で鳥インフルエンザウイルスH5N5型が感染した高齢者が見つかり、州保健当局は11月21日、鳥インフルの合併症により死亡したと発表しました。患者は基礎疾患があり、11月初めに入院して治療を受けていました。患者が裏庭で飼っていた家禽の周辺からウイルスが検出されたといいます。

➄WHOの動きから見る世界の公衆衛生問題 高血圧、孤独、薬剤耐性菌、はしか、肥満…

WHO(世界保健機関)は毎年、さまざまな国際ガイドラインや報告書を公表しています。それらは、現在の公衆衛生上の課題が反映されているといえます。今年、WHOが公表した文書から、世界が直面している問題を振り返ります。
■WHO、「減塩しお」推奨の新ガイドラインを公表(1月)
WHOは1月27日、家庭で使用する食塩に関する新たなガイドラインを公表しました。「塩分(塩化ナトリウム)」の一部を「塩化カリウム」に置き換えた「低ナトリウム塩代替品(LSSS)」に切り替えることを推奨しています。塩分の過剰摂取は高血圧のリスクを高め、心臓病や脳卒中、腎臓病などを引き起こす可能性があります。世界中で1年間に約190万人がナトリウムの過剰摂取が原因で死亡しているといいます。

■新型コロナを教訓にした「パンデミック条約」にWHO加盟国が合意(4月)
WHO加盟国は4月16日、将来起こり得る感染症の世界的大流行(パンデミック)に備える「パンデミック条約」の条文案に合意しました。新型コロナウイルスの感染が拡大したことの教訓を踏まえ、感染症への対策を世界的に強化することを目的とした新たな国際ルールです。病原体の情報を共有すること、医薬品製造に関する技術や知識の途上国への移転、世界的な供給網の確立を目指すことなどが盛り込まれています。

■健康な社会の実現のカギは「つながり」 WHOが孤独のリスクに警鐘(6月)
WHOは6月30日、世界で6人に1人が孤独の影響を受けており、健康に深刻な影響を及ぼしているとする報告書を発表しました。孤独は1時間に約100人、年間で87万1千人以上の死亡に関連していると推計されています。孤独や社会的孤立は、脳卒中、心臓病、糖尿病、認知機能低下、うつ病などのリスクを高めます。

■世界的に高まる薬剤耐性菌の脅威 WHOが報告書で警鐘(10月)
WHOは10月13日、「2025年世界薬剤耐性監視報告書(Global antibiotic resistance surveillance report 2025)」を発表。2018年から23年の間に、監視対象となっている病原体と抗生物質の組み合わせの40%以上で薬剤耐性が増加し、年平均5~15%のペースで上昇していることを明らかにしました。最も深刻なのは、WHOが定める「南東アジア地域」および「東地中海地域」で、報告された感染症の3件に1件(約33%)が耐性菌によるものでした。また、「アフリカ地域」では、5件に1件(約20%)が耐性菌による感染症でした。

■WHO報告 はしか死者88%減も感染者急増で排除は「遠い目標」(11月)
WHOは11月28日、麻疹(はしか)に関する新たな報告書を発表しました。ワクチンの接種率低下で感染者が世界的に急増しており、世界からはしかを排除するという目標達成は依然として遠い道のりだとしています。はしかによる死者数は2000年から24年の間に88%減少し、約5900万人の命が救われました。しかし、感染者数は増加傾向にあり、24年には推定1100万人の感染者が報告され、新型コロナウイルス流行前の19年より約80万人増加しました。

■WHO、不妊症対策の国際ガイドラインを初公表(11月)
WHOは11月28日、不妊症の予防・診断・治療に関する初の国際ガイドラインを公表しました。全ての人が、手頃な金額で安全かつ公平に、不妊治療にアクセスできるようにすることを各国に求めています。不妊治療の需要が世界的に高まっている一方で、多くの国々で、検査や治療が主に自己負担で行われおり、結果的に患者は深刻な経済的負担を強いられることになると指摘しています。

■WHO、肥満治療にGLP-1薬を「条件付き」推奨 初の国際ガイドライン公表(12月)
WHOは12月1日、肥満治療における「GLP-1受容体作動薬」の使用に関する初の国際臨床ガイドラインを公表しました。ガイドラインでは、成人肥満の長期治療に使用されるリラグルチド、セマグルチド、チルゼパチドの3種類を、肥満に対する長期治療の一部として条件付きで推奨しています。肥満は世界で10億人以上に影響を及ぼしており、2024年には約370万人が肥満関連で死亡しました。
※この記事は「サクッと1分!世界の医療ニュース」を再編集したものです

PROFILE

医療ニュース編集部
藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。

足羽美香:記者・編集者。2025年4月に新卒でマイナビに入社。WEBマーケティングやWEBディレクション、コンテンツSEOなどの研修を受けた後、25年9月から医療ニュース編集部に所属し、『マイナビRESIDENT』『マイナビDOCTOR』『オーベン×ネーベン』の各種コンテンツの制作を担当している。

阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。