皆さん、こんにちは! 奄美大島(鹿児島県)でお産が取れる総合診療医を目指して、島の北部に位置する龍郷町(たつごうちょう)の「みんなの診療所」で修行中の小徳です。
我々、家庭医が取り組む「プライマリ・ケア」には、5つの理念――近接性(Accessibility)、包括性(Comprehensiveness)、協調性(Coordination)、継続性(Continuity)、責任性(Accountability)があります。
日々診療をする中で、自然と5つの理念を大事にしながら働いていることに気づきました。今回はこの理念に焦点を当てながら、みんなの診療所の一日をお届けします。ん、離島の診療所は「のんびり」「ゆったり」しているんじゃないかって? 現実はその逆です!
8:00 診療所オープン前からすでに車が…
朝、診療所に出勤すると、駐車場にはすでに何台か患者さんの車が止まっています。風邪をひいた子どもとその親、常用している高血圧の薬をもらいに来た人、月経困難症の高校生などが、仕事や学校に行く前に訪れます。
発熱のある人は車の中で診察します=2025年10月
9:00〜12:00 怒涛の“なんでも”外来
診察がスタートした途端、あらゆる世代のさまざまな患者さんが押し寄せます。インフルエンザシーズンは外来患者数が100〜140人ほどに上ります。
中耳炎やぜんそく、アトピー性皮膚炎の子ども、鼻の中におもちゃを詰まらせてしまった子ども……。産婦人科専門医である私が赴任したことで、月経困難症や妊娠悪阻(つわり)、更年期障害に悩む患者さんも増えてきました。
「肩が上がらない」「腰が痛い」人にはハイドロリリース(筋膜リリース)や神経ブロック注射をして、子どもの捻挫や骨折にも対応します。当然、高血圧や糖尿病などの慢性疾患も診ます。さらには、足や指を切った人の縫合処置も行います。
大きな病院は「この症状は〇〇科へ」という文化ですが、島ではそうはいきません。「来た人は何でも、とりあえず診る=包括性(Comprehensiveness)」。それがみんなの診療所のスタイルです。
気づけば午前が一瞬で過ぎ去っています。
12:00〜14:00 午後になるとやっと一息
昼になると発熱外来が少し落ち着くため、やっと一息つくことができます。この間に、Instagramで発信している医療英会話の動画を看護師と一緒に撮影したり、医学知識の浸透を目的に自分のSNSアカウントにアップする動画の撮影や編集をしたりします。看護師、事務職員向けの勉強会を開くこともあります。
14:00〜15:00 救急車が来ることも
原純所長が鹿児島県立大島病院(県病院)で救急医として長く働いていたこともあり、みんなの診療所は消防からの信頼が絶大です。時には救急車を受け入れ、初期処置をして県病院に搬送することがあります。これは、専門医との連携「Coordination(協調性)」といえます。
救急搬送の受け入れ。「プライマリ・ケア」から「救急」に頭を切り替えるのに苦労しています=2025年6月
15:00〜17:00 学校で性教育
性教育にも力を入れていて、
昨年に続き、中学校・高校で性感染症や望まない妊娠、中絶についての講話を行っています。こうした取り組みが、月経困難症の生徒の受診につながるなど、学校教育に医療が入っていくことの大切さも実感しています。
普段診療する患者さんはもちろんですが、自分自身を守れるようになってもらうために、子どもたちにも「継続性 (Continuity)」を持って働きかけています。
17:00〜夜 一日の終わり
みんなの診療所は「病院が遠くにしかないため、仕事や学校があってなかなか受診できず重症化してしまう人たちを、少しでも減らせるように」と、地域の人たちが通いやすいことをコンセプトに原先生が作った診療所です。夕方になると、仕事や学校から帰る人たちによる2回目のラッシュが来ます。
日々診ている高血圧や子どものぜんそくなどは、決して珍しくない疾患です。でも、みんなの診療所がなかったら、この人たちは脳出血やぜんそく発作で入院していたかもしれないと思うと、とても身が引き締まります。
通いやすさは一番の「Accessibility(近接性)」だと思います。
感染症の流行に備えて予防接種も大事です=2025年8月
こんな感じで、毎日スタッフの皆さんと走り回っています! 島の診療所はプライマリ・ケアの5つの理念を、強く実感しながら診療ができると思います。来年度は、研修医や学生の実習の受け入れも始まるため、この5つの理念を大切にして医学教育をしていきたいと考えています。
小徳羅漢(ことく・らかん)
写真、右。奄美大島の龍郷町にある「みんなの診療所」にて総合診療医として修行中。左は「みんなの診療所」所長の原純医師。
1991年、茨城県生まれ。小学校高学年の時から神奈川県で暮らす。2016年、東京医科歯科大学卒業。鹿児島市医師会病院で初期臨床研修後、18年に長崎県上五島病院で、19年には離島へき地医療の最先端といわれるオーストラリア・クイーンズランド州で研修。20年から県立大島病院に勤務。街中で医師らに無料相談ができる「暮らしの保健室」を開催している。趣味は温泉巡りと映画鑑賞、そして島巡り。18年に結婚し、20年に夫婦で鹿児島県奄美市に移住。2人の子どもを育てている。
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