耳鼻咽喉科の専攻医リズ(ハンドルネーム)と初期研修医ミミ(同)の対談の続編をお届けする。
耳鼻咽喉科はどのような特徴を持った診療科で、どのような人に向いているのだろうか。リズ医師が周囲の人々を例に挙げて説明した。また、ミミ医師が女性としての人生設計の悩みを相談し、リズ医師も自分の悩みを明かした。そして、1週間の働き方やアルバイトについても話が及んだ。
初期研修医ミミ
耳鼻咽喉科は、どのような特徴のある診療科ですか?
専攻医リズ
耳、鼻、頭頸部(とうけいぶ)、嚥下(えんげ)などいろいろな領域があって、内科・外科系の両方の分野があるので、進んだ後の選択肢がいろいろあります。それから、小児から高齢者まで幅広く診られるという特徴もありますね。
初期研修医ミミ
進んだ後に何を専門にするか考えても大丈夫なんですね。
専攻医リズ
本当にいろいろな先生がいらっしゃいます。もちろん専門医を取るまでは、必要な症例数もありますから、幅広く手術も経験しなければならないんですけど。その後は、手術をしたい人はしますし、「僕は手術は全然したくない」と言って頭頸部の化学療法の道に進んでいる人もいれば、めまいを専門にする人もいます。
初期研修医ミミ
耳、鼻、頭頸部のどの分野を専門にするのかというのは、いつぐらいに決めるものなんですか?
専攻医リズ
初期研修の後に専門研修を3年間やって、4年目に専門医試験が受けられます。実はその時にも、まだしっかり決めていない先生もけっこういます。やんわりと「耳かな」「鼻かな」とかで。その後に大学院に進学した場合も、例えば研究テーマで耳を扱っても、鼻や頭頸部の方に進むことも全然問題ないんです。
初期研修医ミミ
特に専門を持たずに耳も鼻も頭頸部も全部診るという先生もいるんですか?
専攻医リズ
はい。半々ぐらいじゃないかと思います。病院にもよると思いますが、鼻の手術も耳の手術も甲状腺の手術もするという人は、中堅ぐらいの先生や市中病院にはたくさんいるんです。
初期研修医ミミ
そうなんですね。勉強になりました。耳鼻咽喉科は、「鼻の先生」「耳の先生」というように特化しているイメージだったので。
専攻医リズ
何を専門にするのかは、自分で「これかな?」と思う時まで、じっくり、ゆっくり決めていけばいいと思いますよ。
初期研修医ミミ
大学院に進学する先生は多くいますか?
専攻医リズ
多いと思います。私の大学は、ほとんどというぐらい、専門医取得後に大学院に戻ってきています。
初期研修医ミミ
リズ先生は専門医を取った後のキャリアは決めていますか?
専攻医リズ
絶賛悩みまくっているところです。当初は「町の耳鼻科」みたいな感じで地域の患者さんの診療をできたらいいかなと考えていたんです。でも、最近は手術をするのが楽しくなってきていて、手術をするなら頭頸部が一番好きかなと思っているんです。
初期研修医ミミ
頭頸部の手術はどうして好きなんですか?
専攻医リズ
鼻や耳は細かくて、顕微鏡や内視鏡を使うんですけど、遠くまで届きにくくてもどかしいところがあるんですよ。一方で頭頸部は手で触れるので、分かりやすいんですよね。でも、頭頸部は、将来自分が結婚したり子育てをしたりすると、続けるのが大変かなと思いつつ……。すいません。明確に答えられなくて。
初期研修医ミミ
いいえ。全然(笑)。私は専門医を取って、大学院に進学するというキャリアを考えているんです。それで、出産や育児をどのタイミングで持ってきたらいいのかと……。
専攻医リズ
それは私も絶賛考え中で、いろいろな先生に相談しているところなんです。「子どもができた時に考えたらいいんじゃない?」と言ってくれる先生もいて。なるようになるかな……と思っています。実際、大学病院だと独身でバリバリ仕事をしている先生が多いんですよね。
初期研修医ミミ
周囲にはモデルになりそうな先生はいらっしゃらないんですね。
専攻医リズ
そうなんですよ。まあ、大学院に行きながら子育てをすることはできると思いますし、体は一番楽なんじゃないかと思いますけど。今、専攻医1年目というのもあって、自分のことに精一杯で、これに家族のことが加わったらちょっとしんどいな……と考えちゃうんですよね。
初期研修医ミミ
リアルな意見をありがとうございます(笑)。
専攻医リズ
今は一人暮らしなので、ご飯を作るのもしんどくて。
初期研修医ミミ
けっこう、忙しいんですね。
専攻医リズ
日にもよりますが、「一番下」がやる仕事は当然ありますからね。
初期研修医ミミ
リズ先生は今、どんな働き方をしているんですか?
専攻医リズ
手術日が週に2日あって、午前か午後に1件入ります。それから、担当の入院患者さんがいるので、そのもろもろをします。その他の3日は、午前中は上の先生の横に付いて、外来診療のサポートをします。
初期研修医ミミ
勉強をさせてもらいながら診療のお手伝いをするんですね。
専攻医リズ
そうです。後はエコーや聴力検査などをやります。午後は入院患者さんのこと、それからカンファレンスがけっこうあります。
初期研修医ミミ
カンファレンスはどれくらいの頻度であるんですか?
専攻医リズ
毎週2回は決まった曜日に必ず開かれて、それに加えて隔週で開かれる曜日が一つあります。1回1~2時間ぐらいですね。それと、私の病院は教育体制がしっかりしていて、1週間に1回、手術記録の指導や手術後の振り返りを上の先生とやる時間が設けられています。それはだいたい1時間ぐらいです。
初期研修医ミミ
すごく手厚いんですね。それ以外の時間はどんなことをするんですか。
専攻医リズ
隙間時間には入院患者さんや退院した患者さんの諸々の業務、次の日の予習なんかをやります。手術の予習は、本を見たり手術動画を見たりします。
初期研修医ミミ
だいたい毎日何時ぐらいに帰っていますか。
専攻医リズ
午後7~8時ぐらいに職場を出ることが多いですね。緊急の患者さんが来た場合は午後9~10時ぐらいになることもあります。早く仕事が終われば、定時の午後5時に帰れる日もありますね。
初期研修医ミミ
アルバイトはやっていますか?
専攻医リズ
はい。金曜日の夜は別の病院の当直のバイトがあるので、それに入って泊まります。土日は午前中3時間、健診のバイトをやることがあります。どうしても大学病院だけだとお給料が少ないので、医局として決まったバイト先を紹介してくれるんです。もし今後、市中病院に行くことがあれば、バイトはしないかもしれません。
初期研修医ミミ
まとまった休みはあまりないのですか?
専攻医リズ
ないといえば、そうですね。金曜日にバイトのない週の土曜日は、午前中2時間ぐらい、手術をした患者さんを診に行って、その後はその週に残っている手術記録を書いて。これを書くのが最初の方はまた時間がかかるんですよ(笑)。
初期研修医ミミ
専攻医1年目というのもあるのだと思いますが、忙しそうですね。
専攻医リズ
私があまり趣味などを持っていないというのもあると思いますけど(笑)。友達とご飯に行ったり、家でゆっくり休んだりする時間はもちろんありますよ。
tica ishibashi
イラストレーター、ファッションクリエイター。
アパレル商社のデザイナー職を経てフリーランスに。見た瞬間に「ずきゅん」と一目ぼれするような胸に響くクリエーションをモットーに、ファッションに特化したクリエイティブワークを展開する。イラストレーション、ファッションデザイン、アートディレクションと幅広く活動。広告グラフィックやブランドイメージビジュアルなどのさまざまなファッションイラストの制作と、アパレル企画や衣装などのファッションデザインを手がけている。2023年度JIAイラストレーターオブザイヤー最優秀商品イラスト賞受賞。
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