専攻医ミモト(ハンドルネーム)と初期研修医リエ(同)の対談の続編をお届けする。
今回は、ミモト医師が小児科を選んだ理由に始まり、サブスペシャルティについて考えていることにまで話が及んだ。また、多くの初期研修医が気にするであろう「専門医の取りやすさ」をリエ医師が質問。さて、小児科は?
初期研修医リエ
ミモト先生は、なぜ小児科医になったんですか?
専攻医ミモト
大学の低学年で座学を受けている時は、病態の勉強に興味があると思って、将来は内科に進むのかなと考えていたんです。いざ実習が始まると、それまで想像していたのと違う診療科の姿を知るじゃないですか。それで実習が終わって、初期研修先のこと、その先のこと、どういう働き方をしたいか、患者さんとはどういう関わり方をしたいのかなどを考えて、一番光って見えたのが小児科だったんですよ。
初期研修医リエ
私の周りの小児科志望の人たちは、すごく前から「自分は小児科に行くんだ!」みたいな強い意志を持っていることが多いので、すごく意外です。
専攻医ミモト
大学生の時の実習で、小児科が他と違うことが一つあると思ったんですよ。内科だったら例えば、たばこを吸っていて血管の障害が起きたり腫瘍ができたりという、大人が自分でやったことの結果として病気になってしまうということがあります。でも、子どもは自分が悪くないのに病気にかかってしまうんですよね。そういう何も非がなくて病気になってしまった子どもたちを治すというのは、大人を診るのとはやりがいが違うだろうと考えたんです。
初期研修医リエ
すごく参考になります。確かに、大人を診るよりも子どもの力になりたいといって小児科を選ぶ先輩たちもいますね。私は小中学生の頃から小児科医や産婦人科医になりたいと思っていたんです。でも、いざ働き始めて、いろいろな診療科のいろいろな先生と出会うと……。今、進路に悩んでいるところです。
専攻医ミモト
悩みますよね。ちなみに、僕は小児科医になったことを一度も後悔したことはないです。夜に仕事で残っているときに同期の内科医も残っていることがあるじゃないですか。そんなときも、「僕はかわいい子どもたちのためだからなぁ」と、ちょっと残る理由も幸せというか。頑張れちゃうんですよ。
初期研修医リエ
小児科は診る範囲がすごく広いですよね。知識を身に付けるのがすごく大変ではありませんか?
専攻医ミモト
リエ先生の言いたいことはすごく分かります。大人を診る医師は、循環器が専門だから呼吸器のことは分からないと言えるかもしれないけど、小児科はそういうことができないんじゃないかということですよね。
初期研修医リエ
はい。そういう面でハードルが高い気がするんです。
専攻医ミモト
なるほど。もちろん知識があるに越したことはありません。ただ、診療科によって診ることの多い病気とそうでない病気があるので、全てに対して深い知識を持っていないといけないわけではありません。小児科で多いのは呼吸器感染症やけいれんなどです。経験を積むことで、ある程度のパターンが分かってきます。そして、自分で診られる範囲なのかそうではないのかの判断もつくようになります。
初期研修医リエ
患者さんを診て、自分では分からないと思ったときはどうするのですか?
専攻医ミモト
小児科の中にもサブスペシャルティがありますし、専門性の高い病院に紹介することもできます。小児科は全体のことを診ながら、サブスペシャルティで専門性を持つ人が多いんです。
初期研修医リエ
安心しました。小児科は腎臓も呼吸器も循環器も……と全部専門的に診なくてはならなくて、そんなの無理だと思っていたので。
専攻医ミモト
いやいや。小児科医として持っているべき共通の知識を最低限持った上で、専門的なことは専門の先生に任せられます。だから、そんなにハードルは高くないというのは伝えておきたいと思います。
初期研修医リエ
ミモト先生はサブスペシャルティは何にするんですか?
専攻医ミモト
実は、まだ決めていないんですよ。
初期研修医リエ
あ、そうなんですか?
専攻医ミモト
多くの人は初期研修が終わった時点で、自分は内科で腎臓を診るぞとか脳神経外科医として生きていくぞとか決めると思うんです。それって、すごくストレスですよね。ありがたいことに小児科は、決めるのをちょっとだけ後回しにできるんです。小児科医としての働き方はいろいろあって、大学病院の小児血液科で腫瘍に対する化学療法を専門にしているという人もいれば、クリニックで主に風邪の子どもを診て入院が必要な場合は紹介するという働き方の人もいますからね。
初期研修医リエ
サブスペについては、いくつか迷っているものがあるんですか?
専攻医ミモト
自分に合っていそうだと思うのは、血液系とか児童精神です。僕は患者さんと長く関わる領域の方が自分に合っている気がするんですよ。だから、救急とか循環器よりも、定期で通ってもらって成長を見ていける「距離の近い」サブスペを選びたいと考えています。
初期研修医リエ
小児科は新生児を診る先生もいますが、ミモト先生は、新生児よりも、ちょっと大きい子どもを診ていきたいんですね。
専攻医ミモト
新生児は、本人が覚えていてくれないですからね(笑)。お母さんやお父さんには感謝されますけど。2~3歳ぐらいの子だと、その後も覚えていてくれるので、僕はそれぐらいの年齢を診るのが好きです。
初期研修医リエ
子どもを診るのは本当に楽しいし、達成感がありますよね。
専攻医ミモト
僕、外来がめっちゃ好きなんですよ。「明日、誰々が来る日だな」というのを考えて。そういうのって、小児科ぐらいじゃないですかね。
初期研修医リエ
ミモト先生は、これから専門医を取るわけですよね。小児科の専門医取得って、すごく大変ではないですか?
専攻医ミモト
これから専門医試験を受ける身なので、「大変ではない」なんて決して言えないんですけど(笑)。ただ、周りの話を聞く限り、内科よりは大変ではないように思います。
初期研修医リエ
ああ、そうなんですね。同期の間でも専門医の取りやすさについては、けっこう気にするポイントなんですよ。
専攻医ミモト
小児科専攻医が小児科専門医を取るのは、少なくとも医学生が医師国家試験に合格するよりは難しくないと思います。
初期研修医リエ
専門医を取るためには、どんなことが必要なのですか?
専攻医ミモト
まず、「何歳の子のこういう病気を診た」というレポートを何十症例か書くことが求められます。この病気については、ガイドラインでこういう治療が勧められているので、治療方針をこのように決めて治療を行いましたというようなものですね。小児科専門医になる人だったら知っているべき「共通言語」の部分が身に付いているかどうかを確認するということです。それから、筆記試験もあります。
初期研修医リエ
ミモト先生は、レポートを書いたり勉強したりするのは特に大変だとは思っていませんか?
専攻医ミモト
両方とも自分が診療する上で、患者の子どもにとって有益なことは明らかですからね。
初期研修医リエ
前向きに。
専攻医ミモト
はい。前向きに。
tica ishibashi
イラストレーター、ファッションクリエイター。
アパレル商社のデザイナー職を経てフリーランスに。見た瞬間に「ずきゅん」と一目ぼれするような胸に響くクリエーションをモットーに、ファッションに特化したクリエイティブワークを展開する。イラストレーション、ファッションデザイン、アートディレクションと幅広く活動。広告グラフィックやブランドイメージビジュアルなどのさまざまなファッションイラストの制作と、アパレル企画や衣装などのファッションデザインを手がけている。2023年度JIAイラストレーターオブザイヤー最優秀商品イラスト賞受賞。
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