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Naked 初期研修医 × 専攻医 クロストーク 小児科(下)

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専攻医ミモト(ハンドルネーム)と初期研修医リエ(同)の対談の最終話をお届けする。

小児科はどんな雰囲気の診療科で、働きやすさの点ではどうなのだろうか。リエ医師が関心を持つ新生児科・NICU(新生児集中治療室)のことを含め、ミモト医師が実態を明かす。また、この対談の前日、医師人生で最も大変だったという当直の話をミモト医師が披露した。

「小児科医=優しい」「小児科=柔らかい」は本当か

初期研修医リエ

小児科の先生は優しくて寛容な先生が多いように思うのですが、実際はどうですか?

専攻医ミモト

僕もそのイメージで小児科に入って、そのイメージ通りでしたね。小児科医になって気づいたんですけど、専攻医向けの教科書も小児科のものは絵が多くてかわいくて読みやすいんですよ。本当に全体的に柔らかいですね。

初期研修医リエ

初期研修医だと、いろいろな診療科の先生と関わることが多いじゃないですか。やっぱり怖い先生よりは優しい先生と一緒に働きたいなと(笑)。

専攻医ミモト

そりゃそうですよ。小児科医にも怖い先生はいるんですけど、子どもには優しいんですよね。ここだけの話、内科の怖い先生とは全然違います(笑)。

初期研修医リエ

他科と比べて女性が多いように思うのですが、実際はどうですか?

専攻医ミモト

その通りだと思います。僕の病院は小児科の専攻医は男女ちょうど半々ですからね。

初期研修医リエ

産休が取りやすいなど、女性が働きやすい環境ですか?

専攻医ミモト

子どもを診ている小児科が産休や育休を取らせないなんてあり得ないですから(笑)。僕は今までけっこう忙しい病院にいたんですが、みんな産休・育休は取っていました。男性でも取りやすい環境です。

初期研修医リエ

ワークライフバランスはどうですか?

専攻医ミモト

僕は地元から離れた所の病院で働いているんです。でも、趣味があって、1カ月に1回以上は地元に帰っています。小児科は比較的、働き方に柔軟だと思います。ただ、全ての病院の小児科が同じではないので、自分の働き方にあった病院を見つけることが重要だと思います。

患者の子どもを膝に座らせて、親御さんと話す…?

初期研修医リエ

今、小児科をローテーションで回っている中で、数人の外来を任せてもらっているんです。元気になって帰っていく子どもの笑顔を見たり、「じゃあね!」ってハイタッチしたり、ちょっとお話ししたり、そういうのもすごく楽しいんです。

専攻医ミモト

そうですよね。僕は小児科の回診の時、仕事をしている感覚はないですから。「何号室の誰々のところに遊びに行こう」というような気持ちで(笑)。子どもとは遊んで、お母さんお父さんとは今の状態や退院の時期などを話すんですよ。

初期研修医リエ

小児科はドクターもクラークさん(医療事務の職員)も看護師さんも、みんな子どもや親御さんと顔なじみで、自然に子どもを抱っこしちゃって、家族みたいですよね。

専攻医ミモト

外来にお母さんと子どもが2人で来ると、僕の膝に座りたがる子がいるんですよ。そういうときは子どもを膝に座らせて、お母さんと話すんです(笑)。

初期研修医リエ

不思議な状況ですけど、素敵ですね(笑)。

専攻医ミモト

親御さんには専門的な知識を持った医師としてきちんと説明をしつつ、子どもたちとは友達のような関係を作るのが小児科外来の一番やりやすい形だと思うんです。はやっているゲームやアニメのことを子どもたちから聞いて、それを調べて次の外来の時に話すと喜ぶんですよ。

次から次に新生児の診療…しんどかった昨夜の当直

初期研修医リエ

小児科医になって、これまでで一番大変だったのはどんなことですか?

専攻医ミモト

実は昨晩の当直が一番大変でした(苦笑)。入院中の常位胎盤早期剝離(じょういたいばんそうきはくり)の人がいて、帝王切開になりそうだなと思っていたら、近くの産婦人科病院から分娩(ぶんべん)停止で帝王切開をしなくちゃいけない人が搬送されてきたんです。「大変なことになったぞ」と思っていたら、さらに陣痛発来の人も来ちゃって。うち二人は早産で、生まれてくる赤ちゃんは1500グラムとか1800グラムですからね。

初期研修医リエ

ええ……。そんなことがあるんですね。

専攻医ミモト

生まれる瞬間というのは、一生の内で一番リスクがあるといわれているんですよ。特に帝王切開だと、赤ちゃんはそれまで羊水の中にいて、腎臓と肺の役割をしてくれていた胎盤から突然切り離されるわけですから、一過性の多呼吸をはじめさまざまな異常が出る可能性があるんです。今回も赤ちゃんに気管挿管など、いろいろな処置をしました。こういうのに立ち会うのは、僕もまだ医師5年目なので、怖いしストレスはかなり大きいというのが正直なところです。

NICUはきつくて大変なのか?

初期研修医リエ

私は今年度、NICUを回るんです。上の先生たちから「N(NICU)はきついよ」「Nは大変だよ」と言われていて。やはり新生児を診るのは大変なんでしょうか。

専攻医ミモト

朝は早いし、いつ生まれてくるか分からないし、というストレスはありますよね。救急科と似たようなところがあって、そういうスリルが嫌いではない人には向いていると思います。

初期研修医リエ

救急の先生で、重症患者が運ばれて来るとアドレナリンが出ている感じの人は確かにいますね。

専攻医ミモト

それから、新生児科はみんなで患者一人一人を診るチーム医療のイメージが強いですね。基本的には大部屋に保育器とかコット(新生児用のキャリーベッド)が並んでいて、診ている子の隣の子の状態も分かりますから。なので、思った以上に、子育てをしながら変則的な時間で働いている女性の先生も多いですよ。プライベートで何かあったときも休みやすいですし。

初期研修医リエ

働きやすい環境だとは全く思っていなかったので、びっくりしています。

専攻医ミモト

リエ先生は新生児科・NICUに関心が高いんですか?

初期研修医リエ

たぶん好きだとは思うんですけど、迷っています。全身管理などが自分は好きなので。

専攻医ミモト

確かに、小児科の中で一番全身を診るのは新生児科ですね。外来や救急に来たり、健診で何か引っかかったりして受診する子どもとは違って、新生児は何も分からない状態からスタートするわけです。血液検査やエコーや身体所見から、どこが悪いのかを探していかなくてはならないんですよ。だから、新生児は全身を診る能力を必要とされます。やっていると、すごく鍛えられると思います。

専門は割と柔軟に変えられる

初期研修医リエ

お話を聞いて、モチベーションがとても高まりました。自分が何に向いているのかを、今後のローテーションで確かめたいと思います。

専攻医ミモト

まあ、専門を変える人もいますからね。進んでしまってから、どうしても嫌なのにやめられないということはありませんから。

初期研修医リエ

え、そうなんですか?

専攻医ミモト

内科に進んだけど、やっぱり小児科がよくて来ましたとか、別の科で専門医を取ってから戻って来ましたとか、珍しいけどいるんですよ。

初期研修医リエ

そういう人がいるなんて、全然知りませんでした。

専攻医ミモト

一度医局に入ったら出られないというようなことはなくて、割と柔軟に変えられると思っていて大丈夫ですよ。

初期研修医リエ

それを聞いて、少し楽になりました。

tica ishibashiプロフィール画像
イラスト

tica ishibashi

イラストレーター、ファッションクリエイター。
アパレル商社のデザイナー職を経てフリーランスに。見た瞬間に「ずきゅん」と一目ぼれするような胸に響くクリエーションをモットーに、ファッションに特化したクリエイティブワークを展開する。イラストレーション、ファッションデザイン、アートディレクションと幅広く活動。広告グラフィックやブランドイメージビジュアルなどのさまざまなファッションイラストの制作と、アパレル企画や衣装などのファッションデザインを手がけている。2023年度JIAイラストレーターオブザイヤー最優秀商品イラスト賞受賞。

ホームページ:https://tica.cc

インスタグラム:https://www.instagram.com/tica_ishibashi/