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Naked 初期研修医 × 専攻医 クロストーク 小児科(上)

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小児科の専攻医ミモト(ハンドルネーム)と初期研修医リエ(同)の対談をお届けする。

ミモト医師は明るく気さくな男性だ。小児科医という仕事が好きでたまらないことが、話し方や話す内容からひしひしと感じられた。リエ医師は落ち着いた雰囲気の女性で、意志の強さを感じさせる。現状では小児科の志望度がかなり高いという。この対談が行われた時にちょうどローテーションで小児科を回っている最中だった。実際に診療に入る中での悩みを聞いたり、小児科志望の初期研修医が回っておくべき診療科を尋ねたり、質問にはどれも実感がこもっていた。これに対しミモト医師は、自分の体験を踏まえてアドバイスをし、診療のコツも伝授した。

親への説明には苦労する。で、どうすればいい?

初期研修医リエ

今ちょうど、ローテーションで小児科を回っているんです。

専攻医ミモト

おお! どうですか。何か困っていることはありませんか。

初期研修医リエ

けっこう大変で……。うちの病院は小児救急外来も初期研修医が診るんです。例えば熱が出ている子が来た場合、脱水症状もなくご飯も食べられて、水も飲めていれば、解熱剤を出して対症療法で帰すという対応を取りますよね。でも、お母さんお父さんに理解してもらうような説得力を持った説明をするのが難しくて。

専攻医ミモト

そうですよね。お母さんお父さんへの説明には苦労すると思います。小児科の救急は風邪や軽症の子が多く来るじゃないですか。その中での我々の大事な役割は、重い病気を持っている子を見つけて早く医療介入してあげることなんです。一方で軽い子は、今はこうだから大丈夫で、後でこうなった場合は良くないので、そのときは必ず受診してほしいというのを親御さんに理解して帰ってもらわなくてはならない。それをどれだけきちんと伝えられるかが小児科医の力だと思います。

初期研修医リエ

たまに、私たちが最初に診た時は特に問題はなかったけど、後から悪化しちゃうこともあります。そういうときの説明をどうすればいいのか、苦労しています。

専攻医ミモト

特に呼吸器感染症だと、「あるある」ですね。風邪が気管支炎になって、肺炎になってという。

初期研修医リエ

そうなんです。そういう子がいるんですよね。

専攻医ミモト

肺炎は僕らからしたら必ずしも大きな問題ではないけど、親御さんの中にはショックを受ける人がけっこういます。風邪から肺炎になってしまった子の親御さんが「肺炎になるなんて言わなかったじゃないか」というのがあると思うんです。

初期研修医リエ

そういうことにならないために、どのように伝えたらいいのでしょうか。

専攻医ミモト

事前に悪いルート、つまり悪い場合はこうなることがあるというのを説明しておくといいと思います。そうすると、もし悪くなってきたときにも、前に可能性として説明した流れのこの段階なんですというのが言いやすくなりますよね。それと一緒に、親御さんは落ち込んでいると思うので、その心のケアをすることが大事です。

求められているのは「この子、大丈夫?」への答え

初期研修医リエ

小児科を回っていて、お母さんお父さんの心のケアが大切だということをものすごく感じています。

専攻医ミモト

診断をつけてほしいという目的で受診する親御さんばかりではありません。「ご飯も食べられて元気はあるけど熱だけが2~3日続いていて、これは大丈夫なの……」というような不安が大きくあって来ているんです。それに対して、「この病気とこの病気の検査をしたら陰性でしたよ」と、単に心配な病気の可能性を否定して解熱薬を出すだけでは不十分ですよね。

初期研修医リエ

おっしゃる通りだと思います。

専攻医ミモト

検査の結果は陰性なので、熱が出ているのは他にこういう理由が考えられると。それで、現状では可能性は低いけれど、悪くなる場合はどういう症状が出て、どういう治療をすることになるのかを事前に説明しておくと、親御さんの不安も解消できますよね。

泣かせる、自分で触らせる――。診療のコツを伝授

初期研修医リエ

子どもって、喉を診るのも大変で。何かコツがあったら教えてください。

専攻医ミモト

「口を開けて」と言っても、舌圧子をずっとかんでいる子なんかもいますよね。子どもって、嫌がると泣くじゃないですか。泣いたら喉って見えるんですよ。だから、何度も押し問答を続けて、「い、や、だ!」って泣いた瞬間に診るという。もう力業ですけどね(笑)。

初期研修医リエ

なるほど。勉強になります(笑)。他の箇所の診察にはどんなコツがあるんですか。

専攻医ミモト

お腹の触診をすると、くすぐったいと言って笑っちゃう子が多いんです。それで、子ども自身の手を持って自分で触らせます。そうすると、くすぐったくないので、そこに圧痛があるのかないのかが分かるんです。

初期研修医リエ

じゃんけんをして、その時の手の振り方を診ている先生もいて。本当にプロの技だなと思って日々勉強しています。

専攻医ミモト

小児科のちょっとしたコツみたいなのは、要所要所にあります。子どもとの適度な距離感を見つけるというのが、診療の効率を良くするんじゃないかと思うんです。お母さんに最初からいろいろ聞いて、すぐに聴診などを始めるよりも。子どもの様子を見たり状態を把握したりするために、ちょっと遊ぶ時間やおしゃべりをする時間を作るというのは意識的にやっていますね。

胎盤と赤ちゃん、かわいいのはどっち…!?

初期研修医リエ

私は今のところ、小児科の志望度がけっこう高いんです。小児科に進みたいと考えている初期研修医が回っておいた方がいい診療科はありますか?

専攻医ミモト

僕は産婦人科についてもっと勉強しておけばよかったと思っています。学生時代から産婦人科の内容は苦手意識があったし、進路としても選択肢に入れていなかったので、身を入れてガッツリ勉強してこなかったんですよ。でも、実際に小児科医になったら、産科の知識はめちゃくちゃ重要で。取り返すために今も勉強中です。

初期研修医リエ

ちょうど産婦人科は来月回ることになっているんです。

専攻医ミモト

初期研修で産科側の立場でちゃんと勉強しておくのは、小児科医になる上でとても大事なので、その気持ちで回ってくれるといいと思います。初期研修医の時に、そういうことに気づけていればよかったと、今後悔していますからね。

初期研修医リエ

ミモト先生は、なぜ産婦人科に進む道を考えなかったのですか?

専攻医ミモト

産婦人科は絶対に手術をしますよね。そもそも手先が器用ではないので、手術をやりたくなかったのが一つ。それと、初期研修で産科を回った時、帝王切開の手術に入ったんです。子宮切開をして最初に赤ちゃんが出てきますよね。赤ちゃんは小児科医が診て、産科医は胎盤の処理をするわけです。僕はもう、赤ちゃんが気になっちゃって。これは産科は絶対に無理だなと思いました。

初期研修医リエ

ははは(笑)。すごく分かります。でも私は幸い手先が器用なので、手術をする方にも興味があるんですよね。

専攻医ミモト

え、でも、胎盤より赤ちゃんの方がかわいいですよ!

初期研修医リエ

それはそうですよね(笑)。

tica ishibashiプロフィール画像
イラスト

tica ishibashi

イラストレーター、ファッションクリエイター。
アパレル商社のデザイナー職を経てフリーランスに。見た瞬間に「ずきゅん」と一目ぼれするような胸に響くクリエーションをモットーに、ファッションに特化したクリエイティブワークを展開する。イラストレーション、ファッションデザイン、アートディレクションと幅広く活動。広告グラフィックやブランドイメージビジュアルなどのさまざまなファッションイラストの制作と、アパレル企画や衣装などのファッションデザインを手がけている。2023年度JIAイラストレーターオブザイヤー最優秀商品イラスト賞受賞。

ホームページ:https://tica.cc

インスタグラム:https://www.instagram.com/tica_ishibashi/