整形外科専攻医マコト(ハンドルネーム)と初期研修医シュン(同)の対談の最終回をお届けする。
シュン医師は慎重な性格ゆえか、不安に思うことがいろいろあるという。結婚についてや、仕事のミスの減らし方について、マコト医師が実体験を踏まえてアドバイスした。また、対人スキルに非常に高そうなマコト医師だが、小児とその保護者への対応には骨を折っているそうだ。後輩のために、その理由と対処法を語った。
初期研修医シュン
マコト先生は結婚されていますか?
専攻医マコト
“全然”してなくて、やばいです。ふふふ、助けてください。はっはっは。
初期研修医シュン
はははは。
専攻医マコト
まあそれは冗談で、そんなに焦っていないです。専攻医は忙しいですけど、周りには結婚し始めている人がまあまあいます。余談ですが、オーベン(上級医)の先生から、結婚は心電図に例えられると教わりました。
初期研修医シュン
心電図ですか。
専攻医マコト
心電図にはP波とかT波とかあるじゃないですか。あれになぞらえて考えると、まず学生結婚がP波、最初のちっちゃい波です。研修医になる瞬間、卒業と同時に結婚というのが最初の大きい波、R波。その次が専門研修を終えて、専門医になるタイミングのP波。そこで結婚する人が多い。
初期研修医シュン
なるほどなるほど。
専攻医マコト
それを逃すと後は、どこで結婚できるか分からない幻の波とか言っていました(笑)。それを信じて、専門医を取るくらいのタイミングでいい人がいたら結婚しようと、ゆるーく考えています。焦った方がいいですかね?
初期研修医シュン
僕はちょっと不安です(笑)。
専攻医マコト
やっぱり、仕事をしていると基本的に出会いは病院の中にしかありません。先生は今、専攻医よりはちょっと余裕あるかもしれないので、外の世界に飛び出してつながりを作っておくといいと思います。僕は外に出ておけばよかったなと後悔しているので(笑)。
初期研修医シュン
整形外科専攻医の一日を教えていただきたいです。
専攻医マコト
外来がメインの日は夕方まで外来をやって、終わりにオペをやることが多いですね。午前7時半くらいに病院に行って、カルテをパーッと見て、病棟の患者さんが元気かを確認します。8時15分くらいからカンファレンスがあって、その日の手術についてや、新しく入院した患者さんについて、共有します。それが終わったら9時までの間に、危ない人だけでも病棟を見て回る感じです。
初期研修医シュン
それから夕方までずっと外来ということですね。
専攻医マコト
オペの日は、午前9時から午後5時までずっとオペ室に出ずっぱりということが多いです。あんまりお昼を食べる時間もないかなあ。オペはだいたい5時までに終わり、その後は病棟を見に行って回診しておしまいです。そんなに遅くなることは少ないですが、緊急の場合は7時、8時までオペをして、そこから残業ということもあります。平均すると7~8時上がりが多いですかね。
初期研修医シュン
初期研修の時に見ておくといいポイントがあれば教えてください。
専攻医マコト
専攻医になってからが勝負なので、雰囲気を感じるくらいでいいんじゃないですかね。まあ強いて言うなら、僕は、小児の患者が来ると「うっ」と身構えてしまうことがあります。なので、子どもの接し方を勉強しておいてもいいかもしれません。
初期研修医シュン
子どもの接し方というと、どういうことでしょう。
専攻医マコト
子どもは一回へそを曲げると、なかなか診察もできなかったり、協力してくれなかったりします。また、保護者とのコミュニケーションがネックになることもあります。子どもが来ると緊張してしまうことが多いので、小児に抵抗がない状態にしておいたらよかったと思います。表面では取り繕っていますけど、実際は心臓バクバクだし、汗だくです(笑)。
初期研修医シュン
取り繕えるのがすごいですよ。患者や家族の関わり方はどうしたらうまくなりますか。
専攻医マコト
うーん難しい! 場数を踏めとしか言いようがないかもしれません。僕は顔が、やや頼りなさげに見えるらしくて、患者や家族から心配されることが多かったんですよ。専攻医になりたての頃なんかは「まさか先生が手術するわけないですよね?」とか言われて(笑)。
初期研修医シュン
そんなことを言われたんですか(笑)。
専攻医マコト
こっちが不安そうにしていると、患者さんの不安は絶大なものになってしまうので、仮に自信がなくても、「こんなの余裕です」という姿勢は大切だと思います。そうすると安心してくれて、診療がスムーズにいくことが多いですから。悩んだり焦ったりは見えないところでして、上級医に相談して対処しましょう。患者や家族に臨むときは「最強の医者」として対応するのがいいんじゃないかなと思います。
初期研修医シュン
ミスして落ち込んでしまうことがよくあります。ミスを減らすために心がけていることはありますか。
専攻医マコト
ははは、具体的にどんなミスですか(笑)。
初期研修医シュン
麻酔科を回った時に、混ぜてはいけない薬液を間違えて入れてしまったこととか……。
専攻医マコト
はっはっは。そんなこと、全然ありますよ。僕も、麻酔科研修なんて黒歴史の山なので思い出したくもないです(笑)。でも今、オペでミスするとかってことはないんですよね。そそっかしくて、幼少期から本当にいろんなミスをしてきたんですけど。
初期研修医シュン
何か心がけているんですか。
専攻医マコト
新しいことが苦手な僕みたいな人間は、行動をパターン化させるとミスが減るのかなと思っています。今の先生の状況に当てはめることは難しいですが、日々の仕事をパターン化して、その通りに踏襲していけば大丈夫という状態にして、イレギュラーがあったときはそれに対応すればいいだけにしておくんです。
初期研修医シュン
なるほど、参考になります。
専攻医マコト
初期研修の麻酔科でミスをしちゃうとかいうのはしょうがない。もし問題があった場合は上級医の責任になるんだから、今はそれに甘えてしまっていいんじゃないですかね。新しい科に行って全部ミスなくできるのは不可能なので、気にすることはありません。
初期研修医シュン
自分も新しいことを覚えることや慣れることが苦手で、初期研修はちょっと苦戦しているので、話を聞いて安心しました。
専攻医マコト
同じ種族のにおいがぷんぷんするなあ(笑)。大丈夫、大丈夫ですよ。
おわり
tica ishibashi
イラストレーター、ファッションクリエイター。
アパレル商社のデザイナー職を経てフリーランスに。見た瞬間に「ずきゅん」と一目ぼれするような胸に響くクリエーションをモットーに、ファッションに特化したクリエイティブワークを展開する。イラストレーション、ファッションデザイン、アートディレクションと幅広く活動。広告グラフィックやブランドイメージビジュアルなどのさまざまなファッションイラストの制作と、アパレル企画や衣装などのファッションデザインを手がけている。2023年度JIAイラストレーターオブザイヤー最優秀商品イラスト賞受賞。
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