icon-sns-youtube icon-sns-facebook icon-sns-twitter icon-sns-instagram icon-sns-line icon-sns-tiktok icon-sns-etc
SEARCH

Naked 初期研修医 × 専攻医 クロストーク 産婦人科(上)

  • X

産婦人科専攻医テル(ハンドルネーム)と初期研修医ミミ(同)の対談をお届けする。

テル医師は、産婦人科3年目の専攻医。実直な性格なのだろう。自分の一つ一つの発言に責任を持って、丁寧に受け答えをしていた。ミミ医師は1年目の初期研修医で、進路について真剣に考えており、産婦人科や小児科に関心がある。駆け出しではあるが、医師としての在り方に日々思いを巡らせている、真面目な性格だ。

ある意味似た者同士の二人の対談は、どんな方向に進むのか。

高校時代から興味があった小児科ではなく産婦人科を選んだ理由

初期研修医ミミ

産婦人科に進もうと決めたのはいつごろですか?

専攻医テル

興味を持ったのは大学生の時で、最終的に決めたのは初期研修2年目です。

初期研修医ミミ

他に迷った科はありましたか?

専攻医テル

最初は小児科、外科系、救急も候補に入っていて、研修医になってからは小児外科か産婦人科かの二択でした。

初期研修医ミミ

小児外科だと、小児も診たくて手術もしたいということですか?

専攻医テル

そうですね、子どものためになるのがいいなあと思っていました。小児科に関しては、市中病院で初期研修をやってみて、一般小児の診療はアレルギーやぜんそくといった症例を診ることが多かったんです。もっと忙しい方が自分には向いているのかなと思いました。それで小児外科に興味を持ったんですけど、術者になれるのは2~3割くらいという狭き門で……。結局は、元気な赤ちゃんを産んでもらえるといいなあと思って、産婦人科に決めました。

初期研修医ミミ

そうなんですね。実際に働いてみて、産婦人科に絞ったということなんですけど、学生の頃に産婦人科に興味を持ったのはどうしてだったんですか。

専攻医テル

元々は、医学部の入試の志望動機を考えるにあたって、小さい頃にぜんそく持ちだったこともあり、「小児科、いいなあ」と思っていました。ですが、大学4、5年生で産婦人科の実習に行った時に、小児科とは違った緊迫した場面を目にしたり、出産に立ち会ったりして、生まれる喜びというか、他の科とは違う魅力を感じたんです。産科だけじゃなく婦人科もあって、生と死の両方が共存している科は一つしかないんじゃないのかなあと。

初期研修医ミミ

たしかに、患者さんにおめでとうと言ってあげられる科ですもんね。私もそれが魅力に感じています。

「産婦人科=女性医師」のイメージが覆った

初期研修医ミミ

働いてみて、産婦人科の印象は変わりましたか?

専攻医テル

学生時代に抱いていた「産婦人科医=女性医師」のイメージが打ち崩されたのは、初期研修医の時ですね。僕からすると患者さんは性別が違うので、そこが一番不安でした。大学病院の産婦人科の医師は半分以上が女性で、やはり産婦人科医は女性の印象が強かったんです。でも、市中病院に行くと男女比は半々くらいの病院が多くて。

初期研修医ミミ

イメージが変わったんですね。

専攻医テル

女性医師は自分の妊娠や出産があったり、育児のために時短勤務をしていたりする人がいて、当直などで男性の力が必要とされることも市中病院の方が多い印象です。産婦人科でも男性の医師として頼られる面があるのだと感じて、自信が持てるようになりました。

「再会」がうれしい診療科

初期研修医ミミ

産婦人科医の仕事は大変ですか?

専攻医テル

初期研修で回った時からずっと思っているのは、産婦人科には仕事でやっている感がないということです。仕事に行くのが嫌だなあということがありません。生活の一部になっている感じです。

初期研修医ミミ

それは素敵ですね。

専攻医テル

また、さっき言ったように「生」だけでなく「死」があるのは当然で、婦人科の高齢者の死があって、お腹の中で亡くなる子もいて……。そんな中で、「この病院で産んで良かったです」と手紙をもらうと、やっててよかったなと思います。

初期研修医ミミ

それはとてもうれしいですね。

専攻医テル

あとは、二人目の出産で戻って来てもらえるとうれしいですね。「この病院で産んで良かったからまた選びました」とか「また、先生に担当してもらいたいです」と言ってくれる人に再会できるのは、すごくうれしく思います。他の科だと、患者と医師が再会するのは良いことじゃない場合が多いと思うので。そこが産婦人科の魅力だと思っています。

初期研修医ミミ

「また先生にお願いします」と言われるのはすごくやりがいになると思います。

やりきれない思いをどうする?

初期研修医ミミ

私はつい最近まで産婦人科をローテートしていたんですが、やりがいがあると思うのと同時に、重たい場面もあるなと感じていて。子どもがお腹の中で亡くなってしまうこともありますし、事情があって、赤ちゃんの命を終わらせないといけないこともあります。そういった場面を目にしたときに、私は母親に感情移入し過ぎて、暗い気持ちになってしまうタイプです。テル先生はつらい経験はありますか。

専攻医テル

赤ちゃんは病気を持って生まれることや、さまざまな理由で生まれてこられないこともあります。切り替えるのは難しいんですけど、繰り返さないようにするにはどうしたらいいかを僕は考えるようにしています。どういう原因があってそうなったのか、どうやったら元気な赤ちゃんが生まれてくるのかを考えるのが、僕ら産婦人科医の役目なのかなと思ったりもします。

初期研修医ミミ

なるほど、心がけが大事ですね。引きずらないようにするために、ほかにしていることはありますか?

専攻医テル

残念ながら赤ちゃんが亡くなってしまった場合、僕らの病院は退院の時に絶対に主治医がお母さんをお見送りするんですよ。休みの日でも関係なくやります。それで区切りをつけるようにしています。完全に吹っ切れるというと嘘になりますが、最後に送り出すことで、一旦気持ちに区切りをつけるようにしています。

初期研修医ミミ

そうなんですね。私も、ちょっと前向きに次の子どものこととか、もっと良くするには、ということに目を向けられるようになりたいと思いました。

tica ishibashiプロフィール画像
イラスト

tica ishibashi

イラストレーター、ファッションクリエイター。
アパレル商社のデザイナー職を経てフリーランスに。見た瞬間に「ずきゅん」と一目ぼれするような胸に響くクリエーションをモットーに、ファッションに特化したクリエイティブワークを展開する。イラストレーション、ファッションデザイン、アートディレクションと幅広く活動。広告グラフィックやブランドイメージビジュアルなどのさまざまなファッションイラストの制作と、アパレル企画や衣装などのファッションデザインを手がけている。2023年度JIAイラストレーターオブザイヤー最優秀商品イラスト賞受賞。

ホームページ:https://tica.cc

インスタグラム:https://www.instagram.com/tica_ishibashi/