脳神経外科の専攻医サトシ(ハンドルネーム)と初期研修医ミヨ(同)の対談の最終話をお届けする。
脳神経外科は、専門研修のプログラムの関係で大学病院の医局に所属するのが基本だという。医局に入ったら、「一生そこから抜け出せない」というイメージを持つ人が多いようだが……?
初期研修医ミヨ
いつごろ脳神経外科医になろうと決めたんですか?
専攻医サトシ
初期研修医2年目の7月です。これは、かなり遅いんですよ。今の制度だと、8月ぐらいには3年目に勤務する病院は決まっていないといけないですから。
初期研修医ミヨ
それから見学に行って、勤務先を決めたんですね。どんな基準で選んだのでしょうか。
専攻医サトシ
候補がいくつかあって、その中から若手が少なくて、その分症例が回ってきそうなところを選びました。
初期研修医ミヨ
けっこうスムーズに決まったんですか?
専攻医サトシ
脳神経外科は、どこも人が足りていないんです。眼科や耳鼻科、皮膚科、麻酔科といった人気の診療科は勤務先を決めるのに苦労することがあるみたいですが、脳神経外科はそういうのは聞かないですね。
初期研修医ミヨ
脳神経外科は医局に属すことが前提と聞いたのですが、そういうものですか?
専攻医サトシ
そもそも脳神経外科の専門研修のプログラムが、大学病院かそれに匹敵するぐらい大きな病院にしかないんです。医局に入ることに不安がありますか?(笑)
初期研修医ミヨ
はい……。自分が卒業した大学の医局なら、学生の時に出入りしていたので分かるのですが、そうでない大学の医局となるとハードルが高いなと思って。
専攻医サトシ
医局って、その後一生をそこで過ごす可能性があると考えると、それは決めにくいと思うんです。そういうところで医局に抵抗感を持たれているんですよね?
初期研修医ミヨ
そうなんです。
専攻医サトシ
僕もそうでした。でも、脳神経外科は卒後7年目で専門医が取れるので、そうしたら医局に所属する必要はなくなりますからね。結婚や親のことや、いろいろ人生の転機はあるので、その時々で自分が働きやすいようにすればいいのだと思います。
初期研修医ミヨ
安心しました。一生が決まってしまうと思っていたので。
専攻医サトシ
いやいや、そんなことはないです。脳神経外科医の専門医を取得した後、市中病院で医局と関係なく働いている先生もいますし。救急の道に進んだり、リハビリの方に進んだりという先生もいますからね。
初期研修医ミヨ
専攻医の時は、基本的には市中病院に行くことはないのでしょうか。
専攻医サトシ
大学の医局に所属して、その関連病院で経験を積むということはあります。
初期研修医ミヨ
サトシ先生も市中病院で経験を積んだのでしょうか。
専攻医サトシ
はい。僕は大学病院ではそんなに勤務していなくて、市中病院にいました。
初期研修医ミヨ
大学病院と市中病院の違いはありますか?
専攻医サトシ
市中病院は緊急疾患が多くて、大学病院は市中病院で対応が困難な難しい症例の患者が紹介されてくるというのが多いですね。
初期研修医ミヨ
大学病院はマイナーな領域も診られるということですか。
専攻医サトシ
はい。小児脳神経外科の患者であったり、腫瘍や血管障害でも市中病院では対応困難なものであったり。
初期研修医ミヨ
ところで、サトシ先生はアルバイトをしていますか?
専攻医サトシ
今はしています。市中病院にいた時は、脳神経外科医の人数が少ないこともあり、その余裕はありませんでした。それに、市中病院はある程度お給料をもらえるので、アルバイトをする必要がないということもあります。
初期研修医ミヨ
大学病院の時はどうですか?
専攻医サトシ
大学病院の専攻医の給料はそんなに良くないので、アルバイトをした方がいいですね。大学病院の若手ということで、いろいろなアルバイト先を紹介してもらえるんです。
初期研修医ミヨ
アルバイトはどんなところでするのですか。
専攻医サトシ
いわゆるリハビリ病院とか、救急対応をしない病院です。入院患者がいる関係で、誰か病院に1人は医者がいなくてはならないというような。当直に入って、特に呼ばれることがなく終わることもあります。救急をやりにアルバイトに行くこともあるので、いろいろな形があります。
専攻医サトシ
脳神経外科はいろいろな領域があって、興味が尽きない、楽しい診療科だと思うんです。50代とか教授クラスの先生も、常にステップアップを目指して日々診療している印象もあります。他の科と比べたら、ちょっと忙しいところはありますが、一生を捧げる価値のある科だと思うんですよ。脳神経外科医として、一緒に飲み会に行く機会が訪れることを願っています!
初期研修医ミヨ
サトシ先生とお話しして、脳神経外科医になりたいという気持ちが、より強くなりました。ありがとうございました。
おわり
tica ishibashi
イラストレーター、ファッションクリエイター。
アパレル商社のデザイナー職を経てフリーランスに。見た瞬間に「ずきゅん」と一目ぼれするような胸に響くクリエーションをモットーに、ファッションに特化したクリエイティブワークを展開する。イラストレーション、ファッションデザイン、アートディレクションと幅広く活動。広告グラフィックやブランドイメージビジュアルなどのさまざまなファッションイラストの制作と、アパレル企画や衣装などのファッションデザインを手がけている。2023年度JIAイラストレーターオブザイヤー最優秀商品イラスト賞受賞。
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