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Naked 初期研修医 × 専攻医 クロストーク 内科<総合内科>(上)

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内科(総合内科)の専攻医ココロ(ハンドルネーム)と初期研修医タイガ(同)の対談をお届けする。

ココロ医師の知り合いによると、彼は極めて優秀な成績で大学を卒業したという。対談を聞いていると、話のまとめ方や物事の捉え方に明晰さを感じる。それでいて、おごった印象は一切なく、とても謙虚だ。人懐っこい雰囲気で終始にこやかに、丁寧に質問に答えていた。タイガ医師は、静かで落ち着いた印象の男性だ。心の奥には自らが思い描く医師としての理想像を持っている。特定の臓器ではなく、体全体を診る医療にひかれているという。数年後の自分を想像しながら、質問をぶつけていた。

初回のテーマは、総合内科と総合診療の違い、総合内科の役割について。タイガ医師が誰もが持つであろう疑問を率直に聞き、ココロ医師が分かりやすく分析・説明した。

実は誰も分からない? 総合診療と総合内科の違い

初期研修医タイガ

総合診療と総合内科の違いが、正直いまいち分からないんです。どういう違いがあるのでしょうか。

専攻医ココロ

それは、総合診療の先生も総合内科の先生も明確に答えられる人はいないと思います。というのは、この二つが生まれてきた土台が似ているからなんですよね。

初期研修医タイガ

よかった。恥ずかしい質問をしてしまったかと思って。

専攻医ココロ

全然そんなことはないです。どこかに明文化されているわけではないので、僕の解釈で説明しますね。そもそも患者さんは一つの病気、一つの問題を持っているわけではないんですよ。心臓が悪くて病院にかかったけどお腹の病気も持っている人。家庭の問題で家に帰れず、退院した後に入所する施設を探さなければならない人。みんな、いろいろな問題を抱えているんです。

初期研修医タイガ

はい。それは、日々の診療で実感します。

専攻医ココロ

これまで、専門領域の細分化が病院の中で進みましたよね。その中で、患者さん一人一人のいろいろな問題を各専門科で処理していたら専門領域の診療に集中できません。それなら、まずは総合内科で診て、臓器別の問題を専門科に紹介したり相談したりした方がいいだろうということから、この科は生まれてきたのだと思うんです。

初期研修医タイガ

なるほど。いろいろなものを診られる総合内科があって、そこから先を専門科にパスすれば効率がいいですよね。

専攻医ココロ

この体制ができれば、地域による医師の偏在とか、医療費の問題も改善につながるじゃないですか。それで、厚生労働省が総合内科の確立を推し進めたというのがあると思います。

地域によって、めちゃくちゃ変わる役割

初期研修医タイガ

総合診療はどうですか?

専攻医ココロ

総合内科を広めていく中で、幅広く診る医者をある地域に1人ポンと置いたときに、子どもも妊婦も老人も診なくちゃいけないし、在宅医療や在宅での看取(みと)りもしなくちゃいけない。そこで、地域の中でそこに根付いたやり方を「専門」にしていく医者が必要になったんですね。

初期研修医タイガ

それで総合内科とは別に診療科が必要になったと。

専攻医ココロ

小児も妊婦も地域医療連携の在り方も、在宅医療も訪問診療も看取りも全部できることを前提とした医者を育てた方がいいんじゃないかということで生まれたのが総合診療なんですよ。

初期研修医タイガ

幅広く患者を選ばずに、他科と協力しながら診るということは同じだけど、総合内科は専門科との橋渡しをして、総合診療は社会の中で総合的な役割をするというイメージですね。

専攻医ココロ

もちろん、両診療科とも病院や地域によって役割はめちゃくちゃ変わるんです。その境界はあやふやだから、「違いが分からない」でいいと思います。

何でも診てくれる「町のお医者さん」。ずっと変わらない医師のイメージ

初期研修医タイガ

ココロ先生は、なんで総合内科の道を選んだんですか。

専攻医ココロ

僕は総合内科をやるぞ!といって選んだわけではないんです。小さいころから、医師というと専門科を持たずに何でも診てくれる「町のお医者さん」のイメージがあって、医学部に行ってもそれは変わりませんでした。それで、6年間で一通りの医学を勉強する中で、どれも面白そうだし難しそうだな……と思っていたんですね。

初期研修医タイガ

医師のイメージについては僕も同じです。でも、広い分野の全てに興味を持つのはなかなかできないので、すごいと思います。

専攻医ココロ

初期研修を受けた病院に総合診療科があって、その先生に教わりながらいろいろな診療科を回ったんです。その中で、専門領域をどんどん深めていくよりは、最初のイメージの「町のお医者さん」が自分には合っているんだと思ったんです。

初期研修医タイガ

総合診療科の先生に教わっていたけど、総合内科を選んだのですね。

専攻医ココロ

まずは内科専門医を取りたかったからです。内科をしっかり修めた上で、その後に地域のことなどは考えたいと思ったんです。

総合内科は何をやるのか?

初期研修医タイガ

ココロ先生が働いている病院では、総合内科はどういう役割なんですか。

専攻医ココロ

僕が勤めているのは一通りの科がそろっていて、2.5次救急をやる、約400床の地方の総合病院です。誤嚥(ごえん)性肺炎や尿路感染症、胆嚢(たんのう)炎の手術後といった、専門の科に回すほどでもない患者さんを診ます。それから、プロブレムの多い人も担当します。

初期研修医タイガ

「プロブレムの多い人」とは具体的にどんな問題を抱えている人で、そういう人にどんなことをするのですか。

専攻医ココロ

例えば、施設に入っている寝たきりの人がいて、肺炎になって、口から食べられなくなったとしますよね。それで、酸素療法が必要だけど、今の施設ではそれができないと。そういったときに、病院の地域連携室(患者がスムーズに入退院や転院ができるように、医療機関や介護施設、行政などをつなぐ役割を担う)とかメディカルソーシャルワーカー(患者や家族が抱える課題を解決するために調整や援助を行う)と連携して、今後のことを決めていくんです。

初期研修医タイガ

なるほど。実際に僕の病院でも、誤嚥性肺炎の患者さんがいて、その人は別のいろいろな疾患を持っていたんです。それで、その患者さんをどの病院のどの診療科に回せばいいのか、上の先生方が困っている状況を目にしたことがあります。そういうときに総合内科の先生なら、どの病気にも知識があるので対処できますよね。

専攻医ココロ

僕が今の病院で目指している総合内科医としての在り方は、まさにタイガ先生が言ったものです。専門を持っている他科の先生には、その領域に特化してもらう。あるラインを越えるまでは総合内科で診るので、それを越えたら専門の先生にお願いしますと。

初期研修医タイガ

その方が病院としてもうまく回るのでしょうね。

専攻医ココロ

その通りです。患者さんを押し付けあっているなんてことがあったら、時間がもったいないし、科同士の仲も悪くなりますから。総合内科は潤滑油的な役割も担えると思います。

tica ishibashiプロフィール画像
イラスト

tica ishibashi

イラストレーター、ファッションクリエイター。
アパレル商社のデザイナー職を経てフリーランスに。見た瞬間に「ずきゅん」と一目ぼれするような胸に響くクリエーションをモットーに、ファッションに特化したクリエイティブワークを展開する。イラストレーション、ファッションデザイン、アートディレクションと幅広く活動。広告グラフィックやブランドイメージビジュアルなどのさまざまなファッションイラストの制作と、アパレル企画や衣装などのファッションデザインを手がけている。2023年度JIAイラストレーターオブザイヤー最優秀商品イラスト賞受賞。

ホームページ:https://tica.cc

インスタグラム:https://www.instagram.com/tica_ishibashi/