救急科の専攻医ケイコ(ハンドルネーム)と初期研修医ミヨ(同)の対談をお届けする。
今回は、救急科の働き方がテーマだ。日常の勤務形態や女性の働きやすさ、救急医を引退した後のキャリアなどが話題に上がった。ケイコ医師が周囲を見て感じた、プライベートな時間が取りにくそうな診療科も、こっそり教えてくれた。
初期研修医ミヨ
救急科は体力がいるイメージがありました。でも初期研修が始まって、けっこう女性の先生が多いことに驚いたんです。女性が働きやすい環境なのかと思うのですが、いかがですか?
専攻医ケイコ
仕事と休みのオン・オフがはっきりしているので、女性も男性も働きやすいと思います。同僚というか同期には妊婦さんがいて、時短勤務を活用するなどして仕事をしているんです。家庭のある男性の先生は、子どもを保育園などに送ってから出勤してきます。
初期研修医ミヨ
具体的に、勤務はどのようになっているんでしょうか。
専攻医ケイコ
当直は夕方4時から次の日の朝9時までが勤務です。明けの日は朝9時になったら帰ります。それで、その次の日は必ず丸一日、休みになっています。日勤の場合は朝7時半から夕方4時までが勤務です。残業はほぼなし、やっても1~2時間ぐらいかな。
初期研修医ミヨ
当直は月にどれくらいありますか。
専攻医ケイコ
私は今、当直が月に8~9回で、日勤は2~5回で調整されています。
初期研修医ミヨ
当直の時は、ずっとバタバタしている感じですか?
専攻医ケイコ
そうでもない日の方が多いですね。だから、夕食もほとんど取れているし、仮眠も2~3時間ですけど取っている日がほとんどです。
初期研修医ミヨ
休みの日は完全に休めるんですか?
専攻医ケイコ
はい。休めます。趣味をしたり、帰省したり、家でのんびりしたり、みんないろいろな過ごし方をしているようです。まあ、ごくたまに、休みの時に勉強会が入ることがあるんですけど、基本的には完全フリーです。
初期研修医ミヨ
ケイコ先生の病院以外も、だいたいそんな感じなんでしょうか。
専攻医ケイコ
多くの病院がシフト制になってきていると聞きますね。地方の医師の数が足りないようなところだと大変かもしれないですけど、私の病院はもちろん、外部で行ったことのある病院も、話に聞くところも、「ブラック」なところは少ないように思いますよ。
初期研修医ミヨ
妊娠や出産のこともすごく気になります。結婚や出産は専門医を取るまでは、やはり難しいのではないかと思うのですが……。
専攻医ケイコ
産休育休の具体的な期間は分からないのですが、しっかり取って戻ってきた先生もいます。それに、救急科の専門研修の制度は、出産や育児で研修が1~2年途切れてしまった場合でも、休む前の期間を無駄にせずに、継続で年数を積んで専門医の資格が取れるようになっているんです。
初期研修医ミヨ
それは良いですね。専門医を取ったら取ったで忙しそうなので、プライベートな時間なんてあるのだろうかと思っていました。そうこうしているうちに婚期を逃すんじゃないかと心配で。
専攻医ケイコ
もちろん、プライベートは専門医を取ってから、と考えている人もいます。いつでも自分のタイミングで、人生のイベントを入れることができるというのが救急科の特徴だと思います。
初期研修医ミヨ
ケイコ先生が周りを見ていて、プライベートな時間を取るのが難しそうな診療科はありますか?
専攻医ケイコ
具体的な診療科を言っちゃっていいのかな……。
初期研修医ミヨ
聞きたいです。教えてください!
専攻医ケイコ
そしたら、こっそり(笑)。外科は忙しそうですね。一般外科で専門医を取れたとしても、その先に心臓血管外科とか小児外科とか細分化しているので、いつまでたっても忙しさは変わらない感じがあります。ずっと手術をしているイメージです。
初期研修医ミヨ
外科に進むと、けっこう大変なんですね。仕事でやりたいことをやるというのは大事だと思うんですけど、あまりにも仕事だけだと「その人生どうなの?」という感じもします。お話を聞いて、救急科はバランスが取りやすそうなので、すごく良さそうだと思いました。
初期研修医ミヨ
ケイコ先生は医局には入っているんですか?
専攻医ケイコ
私は入っていないです。今勤めている病院の独自プログラムで専門研修をしています。実は、救急科は医局に入らない先生が多いんですよ。医局制度が嫌だから救急科を選んだという先生もいるぐらいなので。
初期研修医ミヨ
医局に入らなくても専門医が取れて、その先も全然困らないと考えていいですか?
専攻医ケイコ
医局に入らないと十分な臨床診療が行えない、ということはありません。私はいまのところ、困ったことは起きていませんね。ただ、もちろん、研究とか海外留学とかを考えているのであれば、医局に入っていた方がルートがつながりやすいと思います。
初期研修医ミヨ
救急科は医局のようなしがらみがなさそうな感じもいいですね。
専攻医ケイコ
上の先生で、お子さんが成長して手を離れたタイミングで大学院に入って、つまり医局に入って研究を始めた人もいます。救急科は、いつでも誰でも来ていいし、去る人は追わないし、カラッとした風土が根強いんですよ。
初期研修医ミヨ
当直をする環境やバリバリ働くのに疲れた場合、その後のキャリアはどういう感じになるのでしょうか。
専攻医ケイコ
救急科の先生の中には、訪問診療とか家庭医療の道に進む人もチラホラいますね。
初期研修医ミヨ
救急科は開業しやすいということですか。
専攻医ケイコ
はい。救急科は全身を診られますし、慢性期の患者さんとか在宅の患者さんとかも救急外来にやってくるので、そういうマネジメントも得意なんです。だから、第二の人生として、開業したいとか、落ち着いて働きたいとか、そういうことを考えている人にもお勧めです。
tica ishibashi
イラストレーター、ファッションクリエイター。
アパレル商社のデザイナー職を経てフリーランスに。見た瞬間に「ずきゅん」と一目ぼれするような胸に響くクリエーションをモットーに、ファッションに特化したクリエイティブワークを展開する。イラストレーション、ファッションデザイン、アートディレクションと幅広く活動。広告グラフィックやブランドイメージビジュアルなどのさまざまなファッションイラストの制作と、アパレル企画や衣装などのファッションデザインを手がけている。2023年度JIAイラストレーターオブザイヤー最優秀商品イラスト賞受賞。
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