外科の専攻医アキラ(ハンドルネーム)と初期研修医ルナ(同)の対談の続編をお届けする。
前回は消化器外科のハードな仕事事情が、アキラ医師の口から赤裸々に語られた。今回は、「外科医にセンスは必要か」「結婚生活は送れるのか」「出産、育児などによるブランクはどう影響するか」など、消化器外科医の実態にルナ医師が切り込む。
初期研修医ルナ
外科に向いているのはどんな人ですか?
専攻医アキラ
心を決められる人、ですね。外科でしっかり勉強して、手技を練習していくんだという覚悟があるかどうか。それがあれば、できると思いますね。
初期研修医ルナ
腹腔鏡の手技なんかはセンスが必要だと思います。センスがない場合は努力でカバーできますか?
専攻医アキラ
いやもう、むしろ「努力」ですよ。本当に。最初からできる人はいないんで。僕たち専攻医は、腹腔鏡で折り鶴を折って練習しています。みんなでタイムアタックとか、遊び感覚で。だから、センスとかじゃなくて、むしろ努力だけかな。
初期研修医ルナ
研修で腹腔鏡のオペに入って、カメラ持ちをやったんですけど、動かし方とかがうまくなくて……。自分のカメラで自分が酔うくらいです(笑い)。カメラも上達するには、頑張って数をこなすとかですかね。
専攻医アキラ
手術の流れが分かれば、どういう順序で動かせばいいのかがある程度分かります。自分がオペレーターになったつもりで、考えながらカメラを持つと「じゃあ次ここだからこういうふうに見せた方がやりやすそうだな」と、自然とうまくなると思います。
初期研修医ルナ
……「努力」をします。
専攻医アキラ
ふふふふふ。ちなみにルナ先生は何かスポーツをされていますか?
初期研修医ルナ
テニスをやっていました。
専攻医アキラ
おお~、そうなんですね。僕もテニスをやっていましたよ。
初期研修医ルナ
あ、本当ですか。
専攻医アキラ
僕的には、スポーツマンは外科に向いていると思います。
初期研修医ルナ
体力とか? 根性とか?
専攻医アキラ
技術を磨いたり、何か一つのことに熱中したりという経験があるので、スポーツやっていた人は、外科でしっかりやれていると思いますね。
初期研修医ルナ
励みになります。
初期研修医ルナ
消化器外科は忙しい科だと思います。将来のライフイベントも考慮して選びましたか?
専攻医アキラ
選んだ時点ではあまり考えていませんでした。やりたいことだから頑張っていけるだろう、と。ライフイベントを重視するなら、消化器外科は緊急もけっこう多いので注意が必要です。
初期研修医ルナ
はい。
専攻医アキラ
今いる病院は一月に当直は4回、オンコールは5回くらいあってけっこう呼ばれるんですよね。その時はほとんど寝られないです。今は家族がいないですけど、なかなか家族のために時間を割くことは厳しいのかなあと思いますね。
初期研修医ルナ
そういう生活になるんだろうなあっていう予想は重々できるんですけど……。
専攻医アキラ
正直なことをいうと、QOL(生活の質)はだいぶ顧みずにやっています。今はやっていけていますけど、この先どうなるか分かりません。仕事としては、しっかり患者を診られるし、「ありがとうございます」と言ってもらえて、無事退院する時はやっていて良かったなと思うので、やりがいはとてもあると思います。ルナ先生はライフイベントどう考えていますか?
初期研修医ルナ
家族を持ちながら働いている方もいると思うんですけど、自分は両立する自信はないので、結婚をしないという選択肢もありなのかなと考えてもいます。
専攻医アキラ
実際に、女性の先生が少ない科ではあります。家族がいる男性の先生も、夜中に呼ばれたり、子どもの面倒をなかなかみられなかったりで、奥さんに怒られているという話を聞きます。ある程度、犠牲にしないといけない部分もあるのかなというのは正直なところですよね。
初期研修医ルナ
切っても切り離せない問題ですよね。
専攻医アキラ
僕もいつかは結婚したいと考えていますけど、相手に理解してもらわないといけないので、落ち着いて働ける分野に早い段階で専念するのもありなのかな、と漠然と考えてもいます。
初期研修医ルナ
女性は、出産や育児で長期間、職場を離れることがあると思います。オペから離れて復帰までにブランクがあると、腕が鈍るというか、ずっと働いている医師との間に大きな差ができますか?
専攻医アキラ
正直なところ、それはあると思います。僕の病院の一度職場を離れた外科医の女性は、だいぶブランクがあって、今もあんまりオペができていない状況です。技術職なので少し離れると「なまる」というか……。
初期研修医ルナ
そういう意味で、女性が働きやすい外科はありますか?
専攻医アキラ
乳腺。あとは、甲状腺も女性の先生は多いですね。肺とかも比較的います。
初期研修医ルナ
緊急がないところですか?
専攻医アキラ
そうですね。肺は気胸とかありますけど、それはドレーンを入れて一日診れば緊急でやる必要はないので。まあ、消化器外科ももちろん働けますけど、緊急のオペなんかがあることは念頭に置かなくてはいけません。
tica ishibashi
イラストレーター、ファッションクリエイター。
アパレル商社のデザイナー職を経てフリーランスに。見た瞬間に「ずきゅん」と一目ぼれするような胸に響くクリエーションをモットーに、ファッションに特化したクリエイティブワークを展開する。イラストレーション、ファッションデザイン、アートディレクションと幅広く活動。広告グラフィックやブランドイメージビジュアルなどのさまざまなファッションイラストの制作と、アパレル企画や衣装などのファッションデザインを手がけている。2023年度JIAイラストレーターオブザイヤー最優秀商品イラスト賞受賞。
ホームページ:https://tica.cc
インスタグラム:https://www.instagram.com/tica_ishibashi/