総合診療の専攻医イソン(ハンドルネーム)と初期研修医タイガ(同)の対談の続編をお届けする。
今回、タイガ医師が総合診療を進路の候補に入れている理由を明かす。それを踏まえた上で、イソン医師が、総合診療の専門研修の概要や、その研修プログラムを選んだ理由、複数の診療科で迷ったときにどうするかを親身になってアドバイスした。
専攻医イソン
僕の方からも聞きたいんですけど、タイガ先生はどうして総合診療を進路の候補に入れているんですか?
初期研修医タイガ
地元にある病院に、本当にいろんな診療科を診られるスーパードクターがいたんです。風邪も診れば骨折も診て、あらゆる症状を相談できるみたいな。小さい頃からずっとお世話になっていました。
専攻医イソン
それはすごい。
初期研修医タイガ
学生時代の病院実習なんかでは、「それはうちの診療科じゃないから、整形外科に行ってください」と言っている先生もいました。僕は「うちの診療科じゃないから」と、相談に乗れない医師にはなりたくないなと思います。だから、本当の意味で患者を診られる総合診療が理想だと思ったんです。
専攻医イソン
素晴らしい(拍手)。総合診療って、そういう志を持った医師が多いかもしれません。
初期研修医タイガ
イソン先生が参加している専門研修のプログラムってどんな感じなんですか?
専攻医イソン
プログラム自体は3年間です。仕事現場は大きく分けて在宅と病棟の二つがあって、半年または3カ月ごとに勤務する場所が変わります。例えば、1年目は在宅で半年、病棟で半年くらい、2年目は在宅を半年――といったようにです。僕はこれから、緩和ケアに力を入れている病院で3カ月学んで、その後に救急を学ぶ予定です。
初期研修医タイガ
けっこう転々とするんですね。緩和ケアや救急もあるんですか。
専攻医イソン
僕が選んだプログラムはローテーションの選択肢がたくさんあるんです。1年に1回、上司と相談して、何を学ぶか決めます。
初期研修医タイガ
在宅医療での働き方はなんとなく想像できるんですが、病棟ではどういう感じなんですか?
専攻医イソン
例えば救急の段階で、胆嚢(たんのう)炎や胆管炎は消化器内科、脳梗塞(こうそく)は神経内科、脳出血は脳外科で手術とか、分かりきった症例は基本的には各科に振り分けられますよね。
初期研修医タイガ
はい、そうですね。
専攻医イソン
「心不全か肺炎か微妙だよね」とか「熱があって髄膜炎かもしれないけど、どうかな」とか、そういったすぐには振り分けられない症例を総合診療で診ます。
初期研修医タイガ
なるほど。患者さんに診断がつくまでは総合診療で担当するんですね。
専攻医イソン
そうです。心不全で心筋梗塞を伴っているかもしれないとなれば循環器内科とカテーテル治療をするか相談したり、腸腰筋膿瘍(ちょうようきんのうよう)を整形外科と一緒に診たり、そういった連携をします。
初期研修医タイガ
総合診療の病棟にはどれくらいの患者がいるんですか?
専攻医イソン
僕が働いていた病院の場合は、外来の初診は総合診療に来るようになっていて、不明熱などの場合は総合診療の病棟に入院していて、病院の入院床の4分の1は総合診療が診ているという感じでした。
初期研修医タイガ
総合診療医は他科と患者さんの間に入るイメージですか?
専攻医イソン
そうですね。かかりつけ医として患者と一緒に走っていく中で、必要なタイミングで専門の先生にバトンタッチする感じです。
初期研修医タイガ
患者が転科した後は、治療的な介入がしづらくなると思うのですが、いかがですか?
専攻医イソン
転科したときはそうですが、その後でまた、僕らのところに戻ってくることが多いんです。専門科にバトンタッチするタイミングは、患者さんと相談しながら総合診療医が判断します。それから、専門の先生のお墨付きをもらって、責任を持って患者一人一人を診ていくというのは、かかりつけ医である総合診療の魅力だなと思います。
初期研修医タイガ
複数の診療科で進路に迷ったらどうすればいいですか。
専攻医イソン
自分は多分、消化器内科に入っちゃうと、それが面白くてどっぷりと浸かってしまって総合診療ができなくなると思い、葛藤がありました。
初期研修医タイガ
めちゃくちゃ共感します。
専攻医イソン
結局は、「今」どちらがやりたいかと問われたとしたら、「総合診療だ」ということで、気持ちが熱いうちに鉄を打とうと選んだ感じです。
初期研修医タイガ
ある意味、勢いが大事なんですね。
専攻医イソン
まあ、先生が総合診療を選んだとしても、消化器内科を選んだとしても、もう一方を選んでいたら……という思いは、専攻医になったら出てくると思います。これ、ホンネです(笑い)。
初期研修医タイガ
そうですね。結局、悩んでいる選択肢のどちらに行っても、もう片方に進んでいたらどうだったかなあと考えると思います。難しいですね、将来のことを考えるのは……。
専攻医イソン
ははは。でも、変えられるからね。本当に違うとなったら、診療科はいつでも変えられるので、考え過ぎなくても大丈夫。
初期研修医タイガ
ちょっと気持ちが楽になりました(笑い)。
tica ishibashi
イラストレーター、ファッションクリエイター。
アパレル商社のデザイナー職を経てフリーランスに。見た瞬間に「ずきゅん」と一目ぼれするような胸に響くクリエーションをモットーに、ファッションに特化したクリエイティブワークを展開する。イラストレーション、ファッションデザイン、アートディレクションと幅広く活動。広告グラフィックやブランドイメージビジュアルなどのさまざまなファッションイラストの制作と、アパレル企画や衣装などのファッションデザインを手がけている。2023年度JIAイラストレーターオブザイヤー最優秀商品イラスト賞受賞。
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