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Naked 初期研修医 × 専攻医 クロストーク 形成外科(下)

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形成外科の専攻医ミル(ハンドルネーム)と初期研修医カケル(同)の対談の最終話をお届けする。

専門研修を大学病院で受けるのか、市中病院で受けるのかを悩んでいるというカケル医師。大学病院で働くミル医師が、双方のメリットとデメリットとして考えられることを教えてくれた。また、形成外科を目指す初期研修医が回るべき診療科についてカケル医師が聞いたところ、ミル医師から意外な答えが返ってきた。

大学病院は働きやすく、市中病院は手術をたくさん経験できる

初期研修医カケル

僕が一番悩んでいるのが、専門研修で大学病院のプログラムに入るのか、市中病院にするのかなんです。それぞれに、どんな特徴があるんでしょうか。

専攻医ミル

大学病院は人が多いので、働きやすいと思います。休みも取りやすいですし。一方で、市中病院は人が少ない分、執刀をたくさんやらせてもらえると思います。ただ、形成外科の専門研修で市中に行く人は、少ないですよね。だから、私は専門研修先を選ぶときに、市中はあまり見学に行かなかったんですよ。

初期研修医カケル

ミル先生が勤めている大学病院でも、手術はあまりやらせてもらえないのですか?

専攻医ミル

小さい手術はけっこうやらせてもらえます。ただ、再建(失われた機能や外見を取り戻すための手術)などは、上の先生がやる手術になっちゃうんですよ。市中は、そういう手術を若い頃から経験できると思うので、それは良い点ですよね。

初期研修医カケル

専門研修を大学病院で受けるのか、市中病院で受けるのかによって、技術的な面でレベルに差が出てくるようなことはありませんか。それが心配なポイントなんですが。

専攻医ミル

形成外科全体の手術の技術を身に付けることは難しいんですよ。専門医を取っても、全部できるなんてことは、まずありません。つまり、その先生がどういうところで何を学んできたかで、できることが全く違ってきます。私について言えば、再建の分野に関わっていないので、それについては分からないんですよね。筋皮弁術(皮膚、皮下組織、脂肪、筋肉を一緒に移植する手術方法)などは分かるんですけど。だから、自分が好きな手術を見つけて、早いうちからそれをやり続けることが大事ですね。

専門研修先を選ぶポイントは、「やりたいこと」の専門の医師がいるかどうか

専攻医ミル

カケル先生は「手」を専門にしたいのですよね。形成外科は、大学病院でも市中病院でもそれぞれ得意な分野が異なるので、ちゃんと手外科(てげか:手の疾患や障害の治療を専門にする診療科)をやっている先生がいる病院を探さないといけませんね。そうでないと患者さんも来ませんから。

初期研修医カケル

そうですよね。手の手術は形成外科がメインではないですしね。

専攻医ミル

整形外科の方がメインストリームなので、手の手術を極めた先生が、最終的に形成外科から整形外科に転向することもあります。基本的な治療は同じなんですが、形成外科は体表を触るのが一般的で、骨や関節については整形の先生の方が詳しいので、そういった意味で強みがあるのかもしれません。

初期研修医カケル

はい。よく分かります。

専攻医ミル

手だけやりたいのであれば、正直に言うと、整形外科に進んだ方がいいような気がします。美容や顔の手術にも興味があるのであれば、形成外科でいいと思います。

初期研修医カケル

ありがとうございます。すごく参考になりました。最初に広く触れる分野が形成外科と整形外科では全然違って、形成の方が面白そうだと思っているので、形成外科志望にしたのは間違いではなさそうです。

専攻医ミル

いずれにしても、自分がやりたいことを教えてくれる先生がいるかどうかが専門研修先を選ぶときにはポイントになります。

市中病院でも論文執筆の指導は受けられる?

初期研修医カケル

大学病院はアカデミックな印象が強いのですが、実際はどうなのでしょうか。論文を書いたり、学会で発表したりする能力を身に付けるためには、やはり大学病院の方が有利でしょうか。

専攻医ミル

市中にも論文を書くのが好きな先生はいて、そういう人はきちんと指導してくれるはずです。ただ、大学病院は層が厚いので、絶対に指導してくれる先生はいますよね。

初期研修医カケル

形成外科の専門医を取るためには、必ず論文を1個書かなくてはならないと聞いています。そうすると、大学病院の方がいいのかな……と思うこともあるのですが。

専攻医ミル

大学病院であれば、教授などが専門にしている分野の論文を、指導を受けながら書きます。だから、確実に論文のネタはゲットできますね。でも、市中でもちゃんと指導をしてくれる先生はいますから、その点は市中でも大学病院でも、どちらでも心配はないと思いますよ。

初期研修医カケル

なるほど。分かりました。その他、形成外科の専門研修先を選ぶ上で注意すべきことはありますか?

専攻医ミル

東京都内はシーリング(専攻医の募集枠に上限を設ける仕組み)があるので、初期研修1年目から動かないと枠が埋まってしまいます。

形成外科医を目指すなら内科をしっかり回っておけ!

初期研修医カケル

僕みたいに形成外科を志望している初期研修医が、将来のために回っておいた方がいい診療科はありますか?

専攻医ミル

市中病院に勤めると、内科的な管理も外科がやることが多いと思います。だから、内科全般は回っておいて絶対に損はないと思います。手術は後からいくらでも学べますからね。

初期研修医カケル

形成外科の先生も内科的な管理をやることがあるのでしょうか。

専攻医ミル

足壊疽(あしえそ:足の組織が死んでしまった状態)の患者さんは糖尿病だったり、人工透析を受けていたりすることが多いんですよ。だから、避けては通れないですね。

初期研修医カケル

そうですか。ありがとうございます。内科は絶対に回ろうと思います。逆に形成外科はどれくらい回った方がいいですか? それともそんなに回らなくてもいいですかね。

専攻医ミル

カケル先生はどれくらい回りましたか?

初期研修医カケル

ちょうど今月回っているところなんです。それで、初期研修が終わるまでには後1~2カ月は回っておきたいと思っています。

専攻医ミル

そうですか。1カ月回るだけでも違うので、そんな感じで良いと思います。

初期研修医カケル

回っている時に勝手を覚えておいた方がいいですか?

専攻医ミル

初期研修で形成外科を選べるプログラムも少ないですよね。私が初期研修を受けた所もありませんでした。だから、今はそこまで気にしなくても、後の業務に支障はないと思いますよ。

初期研修医のうちにやっておくべきこと、お薦めの本

初期研修医カケル

初期研修医のうちに、これだけは押さえておけというものはありますか? 1年目で悩んだのは抗菌薬の使い方や輸液の選び方、人工呼吸器の設定で、今でも悩みながらやっています。これらをしっかりとやっておけばいいのか、それとも他にもやるべきことがあるのか知りたいです。

専攻医ミル

先生が今いるような忙しい研修病院であれば、2年間きっちりと研修を受ければ、それだけで十分だと思いますよ(笑)。

初期研修医カケル

じゃあ、このまま頑張ります(笑)。最後に、形成外科を目指している初期研修医にお薦めの本はありますか?

専攻医ミル

はいはい。ありますね。『傷・創・小外科対応の術&Tips――ちがい,例外,想定外をひもとく』(岡崎睦著、メジカルビュー社)です。同じシリーズで3冊あって、これはすごく勉強になります。縫い方とかの基礎的なことが書かれていて、初期研修医にお薦めです。

初期研修医カケル

メモしました! ありがとうございます。

tica ishibashiプロフィール画像
イラスト

tica ishibashi

イラストレーター、ファッションクリエイター。
アパレル商社のデザイナー職を経てフリーランスに。見た瞬間に「ずきゅん」と一目ぼれするような胸に響くクリエーションをモットーに、ファッションに特化したクリエイティブワークを展開する。イラストレーション、ファッションデザイン、アートディレクションと幅広く活動。広告グラフィックやブランドイメージビジュアルなどのさまざまなファッションイラストの制作と、アパレル企画や衣装などのファッションデザインを手がけている。2023年度JIAイラストレーターオブザイヤー最優秀商品イラスト賞受賞。

ホームページ:https://tica.cc

インスタグラム:https://www.instagram.com/tica_ishibashi/