放射線科の専攻医マサキ(ハンドルネーム)と初期研修医フミヤ(同)の対談の続編をお届けする。
専門医の取得には5年かかる放射線科。専攻医はどんな一日を過ごし、どんな人が向いているのだろう――。IVR(画像下治療。画像診断装置で体の中を見ながら、カテーテルなどを用いて行う治療)で手技をしつつ、自己研さんやプライベートの時間を大事にしていきたいというフミヤ医師が尋ねた。また、他の診療科とは大きく異なる職場事情が、マサキ医師から明かされた。
初期研修医フミヤ
放射線科専攻医の、一日の流れを教えてください。
専攻医マサキ
大学病院で働いていた時は、担当のローテーションがありました。ある月は頭部画像の読影で、MRI室のそばにある読影室で上級医から教えてもらうというスタイルでした。またある月は核医学(放射性医薬品を投与して、体内から放出される放射線を用いて病気を診断する)で、だいたい朝8時半に出勤して、画像が上がってくるまでの2時間くらいの間に、上がっているCTの他の画像を読みます。それで、核医学の画像が午前10~11時くらいに上がってくるので、そこから数十件を夕方5時半くらいまでに読む、といった感じです。
初期研修医フミヤ
なるほど。僕がいる病院の放射線科は、夜の読影オンコールをやっているんですよ。それは結構メジャーなんですか? 大変そうだなと思って。
専攻医マサキ
関東のある病院はめっちゃ大変そうでしたね。でも、僕のいる地方はあまりないかなあ。一応、夜間の読影依頼も受けるようにしているみたいですが。あと、専攻医はあまり関係ないんですけど、読影医の専門医の資格を取っている人の中には、自宅にパソコンがあってそこから読めるようにしている人もいます。
初期研修医フミヤ
それはいいですね。
専攻医マサキ
連絡があったら画像を読んで、結果を電話で伝えるみたいです。
初期研修医フミヤ
ちなみに、放射線科に関して地域差はありますか?
専攻医マサキ
放射線科は「西高東低」といわれていますね。東京は別ですが、西の方が強い傾向があるようです。西日本の医師が多い地域だと、読影バイトが少なくなってしまうと聞くので、バイトをしたい医師からしたらネックです。
初期研修医フミヤ
放射線科に向いている人はどんな人ですか?
専攻医マサキ
研究とかAIが好きな人は向いているし、コミュニケーションが苦手な人もできます。あと、何が好きかまだ分からない人はいいんじゃないかと思います。どの臓器でも診られるので、後々どの分野にも行けるっていうのはかなりメリットですね。
初期研修医フミヤ
幅広いですね。
専攻医マサキ
僕が画像診断を好きなのは、間違い探しとか「ウォーリーを探せ!」(群衆に紛れているキャラクターを探す絵本)みたいにゲーム感覚で仕事ができるからです。そういう感覚がある人は診断に向いているんじゃないかなと思います。クイズが好きな人とかもいいですね。総合内科も迷っていたんですが、それも病気を「見つける」みたいなことが好きだったからです。
初期研修医フミヤ
「(NHKの人気番組)総合診療医ドクターG」みたいな。
専攻医マサキ
そうそう、そうですね。手技もできるし、誰でも向いているんじゃないかとは思います。画像診断に向いてないのは、ずっと座っているのが苦手とか、頭を動かすより体を動かす方が好きみたいな人です。ただし、そういう人はIVRをやれば別かもしれません。
初期研修医フミヤ
最近IVRが人気だと聞きます。
専攻医マサキ
確かにそうですね。ただ、地域によってはIVRがないところがあります。僕が研修をしていたある地方の県はIVRがすごく弱かったです。診断メインという感じでした。
初期研修医フミヤ
地域差があるんですね。
専攻医マサキ
でも、IVRは正直、きついですよ。大学病院でIVRを担当していた時期は、朝カンファがちょっと早めの午前7時半くらいにあって、8時半から9時くらいに予定のIVRが始まり、11~12時くらいまでかかります。それから1時間休憩して、午後1時くらいから5時くらいまで、またIVRをやって、そのあと病棟管理をして、翌日も朝カンファがあるから準備して……という感じです。基本的に午後7時前には帰れたんですけど、IVRは予定されているものだけではなく、緊急があります。一番きつかった時は、夜8~10時過ぎくらいまでやっていました。
初期研修医フミヤ
ほぼ立ちっぱなしですもんね、あれ。
専攻医マサキ
そうなんです。夜遅いと病院内のお店が閉まっちゃうから、IVRの時は冷蔵庫に食べ物を入れておいて、それを食べるのがお決まりでした。
初期研修医フミヤ
大変そうです……。
専攻医マサキ
やりがいは、すごくあったんですけどね。体力的には正直きつかった。それから、今僕がいる病院のIVRは、CTガイド下生検(CT画像を確認しながら病変の組織を採取する方法)などを入れて週1回くらいです。それらはだいたい半日くらいで終わります。緊急も月に2件くらい。専攻医は当番(当直)に入らないので、大変さは結局病院によるのかもしれませんね。
専攻医マサキ
放射線科の仕事場は見たことがありますか?
初期研修医フミヤ
大学の実習で行きました!
専攻医マサキ
僕は、初期研修中に放射線科を回った時に衝撃を受けたんですよね。内科とか外科とかを回ってみると、忙しいし、病棟とかで飲み食いができないじゃないですか。放射線科はけっこう事務作業みたいなのが多いので、デスクにコーヒーやお菓子を置いて仕事をしているんです。さらに、人によっては集中するために音楽を聞きながら仕事をしています。これは、放射線科か病理ぐらいですよね。スタバ(スターバックス)がある病院で研修をした時は、今日は気合入れようって日は、コーヒーを買ってきて机に置いて(笑)。
初期研修医フミヤ
読影室も外界から隔てられていますもんね。
専攻医マサキ
だいたいコーヒーメーカーが置いてあって飲み放題のところが多いです。自分の医局は、お菓子の補充制度があって、秘書さんが補充してくれます。毎日食べ放題です。
初期研修医フミヤ
なんていい職場なんですか……!
tica ishibashi
イラストレーター、ファッションクリエイター。
アパレル商社のデザイナー職を経てフリーランスに。見た瞬間に「ずきゅん」と一目ぼれするような胸に響くクリエーションをモットーに、ファッションに特化したクリエイティブワークを展開する。イラストレーション、ファッションデザイン、アートディレクションと幅広く活動。広告グラフィックやブランドイメージビジュアルなどのさまざまなファッションイラストの制作と、アパレル企画や衣装などのファッションデザインを手がけている。2023年度JIAイラストレーターオブザイヤー最優秀商品イラスト賞受賞。
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