眼科の専攻医リョウ(ハンドルネーム)と初期研修医ミツ(同)の対談の続編をお届けする。
眼科と救急のどちらに進むか迷っていること、眼科に進む場合の専門研修病院の選び方など、悩みを打ち明ける初期研修2年目のミツ医師。それに対しリョウ医師は、自分が眼科や専門研修先を選んだ理由を伝えることで、後輩に道を示した。気になる眼科の給料事情の話も飛び出した。
初期研修医ミツ
実は今、眼科と救急で揺れ動いていまして……。
専攻医リョウ
え!? 珍しいタイプですね。
初期研修医ミツ
リョウ先生はいつごろ眼科に決めたんですか?
専攻医リョウ
僕は大学5、6年生のポリクリ(臨床実習)が始まる前後くらいだったと思います。
初期研修医ミツ
きっかけがあったんですか。
専攻医リョウ
たくさん手術がしたいというのがずっとありました。それで、整形外科か眼科という、僕もまた珍しい二択で迷って。
初期研修医ミツ
たしかに珍しい!
専攻医リョウ
どちらかというと人の命を救うというより、患者のQOL(生活の質)を高めることがしたいという思いと、早く手術がしたいという思いが強くありました。眼科は全体的なオペの件数が多い分、執刀する機会も多いのが魅力でした。
初期研修医ミツ
最終的には、どういうところで整形より眼科を選んだんですか。
専攻医リョウ
基本的に眼科は当直がない病院が多いと思いますが、整形外科だといわゆる「全科当直(診療科に関わらず時間外のさまざまな患者に対応すること)」をしないといけないことがあります。そうすると整形外科医としてやりたいことだけをやるというわけにはいかないので、それがネックに感じました。また、寝ずに働くというのが得意なタイプではなくて、体力面を考えてですかね。眼科は夜はしっかり寝られますから。
初期研修医ミツ
寝られるのはいいですよね。
専攻医リョウ
あと、僕のいる県は麻酔科医がそんなに多くなくて、全身麻酔の件数がどんどん減っています。全身ではなく局所麻酔を使う眼科であれば、麻酔科医が減っていても手術件数は確保できるので、有利かなと思ったのもあります。
初期研修医ミツ
なるほど、そういう選び方をしたんですね。
初期研修医ミツ
専門研修先の病院を選ぶにあたって重視したことはありますか。
専攻医リョウ
地元に残ろうという、それだけといったらそれだけなんです。でも、入ってみて良かったと感じたことはあります。医局が小さいので、上の先生との距離が近い。たぶん大きな医局だと教授と話す機会がそんなに多くないと思いますが、僕らはほぼ毎日会って話します。いつでもキャリアの相談ができます。教授が直々に1年目の専攻医を「飲みに行くぞ」と連れて行ってくれることもあります。
初期研修医ミツ
地元を出るという選択肢は少しもなかったですか?
専攻医リョウ
家族も親戚も地元にいるので考えていなかったですね。でも3、4年したら、ちょっとの間、県外に勉強に出たいなと思っています。
初期研修医ミツ
勉強をしに行きたい病院があるんですか?
専攻医リョウ
その時の専門次第ですかね。師事している教授の出身大学の関連病院の中で枠が空いているところに入れてもらったり、先輩医師がつながりを持っている大学に紹介してもらったりというのが慣例です。
初期研修医ミツ
将来的にはどの分野に進みたいですか?
専攻医リョウ
網膜硝子体か緑内障のどちらか、選択の際に病院でより人手の足りない方と考えています。
初期研修医ミツ
眼科の専門研修先として、割と大きめの三つの病院で迷っています。手術の件数を見るのか、症例の豊富さを見るのか、早くからいろいろやらせてもらえるところにするべきなのか、QOLを取るべきなのか……。
専攻医リョウ
大きい病院は、教育がちゃんとしているのが魅力ですよね。毎週のように上級医から講義があったり、術後の診察についてしっかり教えてもらえたり、手術のレッスンがあったり。
初期研修医ミツ
でも、大きな病院は医師の数が多く、携わる症例数も限られますよね。
専攻医リョウ
それはあります。ただ、眼科のオペは助手の医師なしで、独りでできます。実力があれば、自分のいるところを、手術がたくさんできる施設にすることができます。そういう観点から、まずは大きな病院で学んで、その後ハイボリューム(手術や治療の件数が多い医療機関)の外病院で2、3年研修をして帰って来て、患者を集めてたくさん手術をするという形もあるのかなと思います。
初期研修医ミツ
外の病院で勉強ですか。
専攻医リョウ
先輩の話を聞く感じだと、しっかり勉強して専門医を取る頃には、他病院の医師との交流が増えてきて、そのつながりで外の病院に勉強に行かせてもらうことがあるみたいです。僕のオーベンも、眼科医として6年ほど働いているうちに知り合った人たちのコネで別の大学病院へ出向して、緑内障と硝子体手術の勉強をして帰ってきました。
初期研修医ミツ
それもいいですね。
専攻医リョウ
つまり、最初のうちは、そんなに数は多くないけど白内障の手術はできるという病院を選ぶのも、選択肢としてなしではないのかなと思います。
初期研修医ミツ
ちょっと気になるのが給料面のことです。聞きにくいんですが……。
専攻医リョウ
あぁ~、そうですよね(笑)。
初期研修医ミツ
1年目の眼科専攻医はだいたいどれくらい稼げるものなんですか。
専攻医リョウ
病院によると思うんですが、僕の病院の眼科は1年目から行けるバイトがけっこう少ないんです。普通の当直バイトと、眼底検診バイトの二つです。僕は、初期研修の時と同じか、少し下がるくらいの感じです。
初期研修医ミツ
少し下がりますか。
専攻医リョウ
専攻医の同期数人で、週に1回の眼底検診のバイトと週末の当直バイトを分け合っている状況です。だから回数が少なく、手取りはだいぶ悲しいことになってしまいます。
初期研修医ミツ
悲しいことに……。
専攻医リョウ
まあ、僕は初期研修が市中病院なので、大学病院より給料が高かったというのもあります。大学病院の初期研修から市中病院の専門研修に進むのなら、だいぶ増えると思いますよ。
初期研修医ミツ
バイトの単価はいいんですか。
専攻医リョウ
地域によるみたいです。僕のいる県は大きな声では言えないですけど、かなりいいですね。田舎で眼科医がそんなに多くないので、重宝されているんだと思います。
初期研修医ミツ
時給換算するとどれくらいですか。
専攻医リョウ
眼底検診と白内障手術の水かけ(点眼液などで術野を清潔に洗い流す)バイトが2万円くらいです。
初期研修医ミツ
おぉ、けっこういいですね。別のところでは時給1万円くらいと聞きました。
専攻医リョウ
普通の外来バイトが1万~1万5千円の間くらいで、オペが絡んでくると額が上がるみたいです。僕の病院は一年目のうちはあまり外勤にも行けないので、白内障の水かけバイトも、その分多めにもらえるように計らってくれているのかもしれません。当直は「寝当直(睡眠時間を確保できる泊まりの当直)」で、たぶん相場くらいです。
初期研修医ミツ
他科との給料の違いも気になります。診療科別にいうと、眼科は平均くらいなんでしょうか。
専攻医リョウ
だいたい平均くらいなんじゃないかと思いますね。奥さんが眼科で旦那さんが他科という先生を何人か知っていますが、旦那の給料が「多くてびっくり」「少なくてびっくり」のどちらも聞きますね。内科、消化器外科、救急とかで市中病院勤務だとけっこうもらっている印象です。
初期研修医ミツ
「けっこう」ですか!?
専攻医リョウ
救急はバイトしやすいですからね。市中病院だと当直手当があって、激務だけどお金はすごくて、額を見て、「おおそんなに」みたいな。
初期研修医ミツ
生活ができれば問題ないですが、そういうのを聞くといいなあって思っちゃいます。
専攻医リョウ
僕も、めちゃくちゃいいなあと思いますよ(笑)。
つづく
8/4公開予定!
tica ishibashi
イラストレーター、ファッションクリエイター。
アパレル商社のデザイナー職を経てフリーランスに。見た瞬間に「ずきゅん」と一目ぼれするような胸に響くクリエーションをモットーに、ファッションに特化したクリエイティブワークを展開する。イラストレーション、ファッションデザイン、アートディレクションと幅広く活動。広告グラフィックやブランドイメージビジュアルなどのさまざまなファッションイラストの制作と、アパレル企画や衣装などのファッションデザインを手がけている。2023年度JIAイラストレーターオブザイヤー最優秀商品イラスト賞受賞。
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