内容
臨床研修病院として豊富な症例と実績をもつ順天堂大学練馬病院救急・集中治療科で代々受け継がれてきた“屋根瓦式の研修医教育”実践のため、教育熱心な本書の著者が月2回開催している勉強会の内容を1冊にまとめたもの。同病院に来院、搬送された実際の症例をベースに、common diseaseから重症症例まで“よく出会う疾患、症候”を中心に、診断のノウハウや思考方法を研修医向けにわかりやすく解説している。(中外医学社のホームページから引用)
紹介者:ミモト
診療科:小児科
医学部卒業年:2020年
所属:県立病院
医学生から初期研修医になった時に、まず初めに読んでほしい一冊です。
3月に卒業旅行や引っ越しなどを経て医学知識が少しずつ抜けていく中、4月に直面する最大の課題は間違いなく「救急当直」です。昼間のローテーションは内科や外科などさまざまだと思いますが、程なくして夜は救急当直のシフトに入ることになります。もちろん初めは上級医や先輩研修医の指導の下で働くはずですが、重症患者さんが複数受診しているタイミングなど、十分な指導が受けられずに早い段階から自分1人だけで救急患者さんの初期対応にあたることもあります。
自分が初めて救急当直に入った時はまさにそのような状況でした。診察の合間に助けてくれる初期研修2年目の先輩の姿は非常に輝いて見え、同時に強い無力感にさいなまれたのをよく覚えています。夜を共に戦った先輩に救急外来との向き合い方を相談した時に紹介してもらったのが、この『救急外来 ただいま診断中!』でした。当時救急科志望の先輩はこの本をボロボロになるまで使ったと話していたため、すぐさま購入して読み始めました。
内容は「①意識障害に出会ったら」「②失神に出会ったら」など実際に救急外来で出会う症候をベースに、まず何から考えていけばいいのかについて、話し言葉で説明してくれています。この文体も相まって"頼れる先輩が優しく教えてくれている感じ"があり、何とも温かく、読んでいて嫌になりにくいと感じました。また特筆すべきなのは「意識障害と意識消失を明確に区別する!」「肺血栓塞栓症は疑わなければ診断できない!」などの大胆な言葉が使われていること。大切なことやピットフォール(落とし穴)について記憶に残りやすい工夫がなされている点が優れています。
初期研修医が症候ごとの救急対応を学ぶ入門書として、これ以上ない至極の一冊だと思います(2024年10月には第2版が出ています)。医師として最低限の救急対応ができる――。そんな目標を掲げる初期研修医に、まず初めに手に取ってほしい一冊です。
岩本あかり
東京を中心に、イラストレーター・UIデザイナーとして活動。 シンプルな線に、軽快な色面。 どこにでもありそうな景色に、ひとつまみのユーモアを。 見た人がクスッと楽しくなる絵を描く。
HP: https://akariiwamoto.com
Instagram: https://www.instagram.com/akari.iwamoto