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病理医ヤンデルの言いたい放題! 第8回「巨人の肩の上プッシュ」

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近頃のインターネット検索というのは本当に優秀なので、なんかちょっと雑な感じの入力でも、きちんと望んだ通りの結果を出してくれます。本日はこのような検索をしました。

「ゲームセンター お菓子を落とすやつ」

ドーム状のアクリルの中をお菓子がくるくる回っていて、逆L字のアームを降ろしてお菓子をすくい、それを出口のそばに積んでいくと、前後運動を繰り返す台の部分に押し出されてお菓子が手に入る――というゲームがありますよね。

「見たことある」というあなた、正式名称をご存知でしたか? 私は知りませんでした。というわけで検索をしたのです。

商品名はすぐに見つかりました。『スウィートランド』って言うそうです。アクションゲーム『星のカービィ』に出てきそうな名前ですね。もうちょっと幅広くジャンルを包括した一般名がないのかしら……と思って、いろいろ検索をしていくと、『お菓子プッシャー』とか『スイーツプッシャー』などという名称にたどり着きました。

お菓子をプッシュするってことか。梨汁みたいだな。このゲームの正式名称が本邦であまり知られていない理由が垣間見えますね。

そんなプッシャーでお菓子をたくさん取るにはどうしたらいいかわかりますか? それはですね、「事前に他の人がたくさん遊んだ台で遊ぶこと」です。

レーンを流れているお菓子をアームで地道にすくって移動台の上に置いても、お菓子をゲットするまでの道のりはかなり遠いのですが、すでに上手な人が遊んだ後であれば、「前の人が乗っけてくれたお菓子」がまだ残っています。ですから、そこにちょろっとお菓子を追加すれば、すぐにプッシャー!となってお菓子がたくさん手に入るわけです。他人の積み重ねたものを横からかすめ取るみたいなことを、なるべく上品にやるといい思いができるなっしー。

あんまり露骨に人の後ろに並んだりするとそれはそれでダメなんですけどね。ゲーセンって奥深いですよね。

話は変わります。先日、ある学会のけっこうデカ目のセッションを見ておりました。すると、大変お若くて優秀な先生が、「私はついにこの新事実を解明しました」みたいな発表をなさっていたんですね。はぁー、たいしたもんだなあと感心していますと、私のおそらく斜め後ろ辺りに座っていたベテランが、お連れの若手に向かってぼそっとつぶやくのが聞こえました。

「ラボがこれまでいろいろ積み上げてきた結果を、さも自分の手柄みたいな顔でしゃべってられるのって、若いうちだけだよな」

話しかけられた若手は絶句したようで、何も返事ができておりませんでした。お察しします。私も横隔膜のけいれんを押さえつけるべく丹田に気を錬りました。

でも、まあ、そうなんですよ。一理あると思います。医学研究なんて9割9分は「プッシャー」なんですよ。たくさんの先達が積み上げてきたお菓子の上に、たまたまいいタイミングで参入した人が、たまたまいい感じで最後にお菓子をひと乗せすれば、ぜんぶがガラガラ崩れて業績になる。そのことに自覚的じゃないと、変なところに無駄な敵を作っちゃうかもしれないよ、といったところでしょうか。

怖いなっしー。

ヤンデルプロフィール画像

病理医ヤンデル:本名 市原 真(いちはら・しん)

1978年、札幌市生まれ。2003年、北海道大学医学部卒。医学博士、病理専門医。先日の某学会での報告時、「オタク特有の早口を1.5倍速再生したようなご発表ですね」と最大級の賛辞をいただくなどする。

月曜のマミンカプロフィール画像
イラスト

月曜のマミンカ

神奈川県川崎市在住のイラストレーター、絵本作家、グラフィックデザイナー。 2022年、絵本「カモンダメダメモンスター」を出版後、こどもと楽しめるワークショップを不定期で開催。 4匹の保護猫とヒーロー好きな息子、自由奔放な娘の子育てに奮闘中。

HP: https://mondaymom.official.ec/

Instagram: https://www.instagram.com/mondaymaminka/