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麻酔科医 川久保弥知の言いたい放題! 第5回「心が折れそうな初期研修医のきみへ」

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国試のようにはいかない

初期研修は生き抜くだけで大変です。

 

国試では「輸液」や「抗菌薬」と回答するだけでよかったのに、初期研修医になった途端に、「どの輸液をどれくらい投与するのか」「何の感染を疑ってどの抗菌薬を投与するのか」の判断をしなければなりません。外来の患者さんも国試のような典型的な症状ばかり訴えてくれるわけではありません。

  

そして、患者さんの入院が決まると、上級医から急に「適当に輸液の指示を入れといて」と振られます。「適当にってなんやねん!」と不条理に感じつつ頑張って調べてオーダーしても、上級医によって容赦なく修正されます。食らいついて仕事を覚えても、1〜2カ月で次の科に移って、また一からやり直し……。これではなかなかやりがいを感じられないものです。

初期研修医を雇う三つのメリット

私も初期研修医のころ、自分の役立たずさに、うつになりました。少しでも役に立ちたくて、救急当直を限界突破の月8回も入れて、睡眠時間を犠牲にして働きました。今考えれば、アホなことをしたものです。

落ち込んだあまり、事務職員の方に「私を雇って病院に何かメリットがありますか?」と聞いたことがあります。

その人は「三つのメリットがある」と答えてくれました。

①初期研修医は居るだけで加算が付いてもうかる
②いつか専攻医や専門医として帰ってきてもらうための先行投資になる
③初期研修医の存在によって指導医たちにも張りが生まれる

①の加算というのはおそらく「臨床研修病院入院診療加算」のことですね。初期研修医がいる病院は、入院初日の診療加算を算定できます。素人計算で自信はないのですが、この加算があると病院として年間数百万円の収入増になるようです。

自科に入らない初期研修医を指導しても仕方ない、と意義を感じない指導医もいるようですが、②の先行投資も意外と侮れません。実際、田舎の民間病院である私の職場でも、初期研修の“卒業生”が麻酔科専攻医・専門医の派遣として既に数人帰ってきてくれています。また、もし初期研修医が他科に進んだとしても、自科を助けてくれる頼もしい専門医になって帰ってきてくれることが期待できます。

自分が指導医になって、③については改めて実感しています。一つの施設に長く勤めると、似たような症例の繰り返しで刺激が乏しくなりがちです。でも、初期研修医がいてくれると、指導医は指導をするために学習をしたり、良きお手本になるために態度を改めたりします。研修医のおかげで私も良き指導医たらんと努力しています(実際になれているかどうかはさておき……)。

 

いてくれるだけでいい!

つまり、初期研修医はいてくれるだけで、病院にとってメリットなのです。

 

事務職員の方の話を聞いて、初期研修医の私は救われ、前向きに研修に取り組めるようになりました。

 

皆さんも初期研修中に「自分は役立たず」と落ち込むことがあるかもしれません。でも、いるだけでありがたいのです!

 

「ばかな質問ばかりしている」とへこむことがあるかもしれません。でも、その質問が実は指導医たちの勉強になっているのです!

ありがとう! 初期研修医の皆さん!

川久保弥知プロフィール画像

川久保弥知(かわくぼ・みとも)

1987年、高知県生まれ。初期研修までは高知で「育つ」も、麻酔と集中治療の両方を学びたいと思い立ち、後期研修(専門研修)から広島市民病院で研さんを積む。現在は呉共済病院に勤務。Twitter(現X)で麻酔科についていろいろな投稿をしていたところ、日本麻酔科学会の偉い人に拾われ、学会公式アカウント開設に携わる。
最近の趣味は、子どもと一緒に始めた「ポケモンカードゲーム」。どうせやるなら本気で、と親子で大会にも参加している。

X:@MitomoKawa

月曜のマミンカプロフィール画像
イラスト

月曜のマミンカ

神奈川県川崎市在住のイラストレーター、絵本作家、グラフィックデザイナー。 2022年、絵本「カモンダメダメモンスター」を出版後、こどもと楽しめるワークショップを不定期で開催。 4匹の保護猫とヒーロー好きな息子、自由奔放な娘の子育てに奮闘中。

HP: https://mondaymom.official.ec/

Instagram: https://www.instagram.com/mondaymaminka/