2023.07.13
肥満治療の新経口薬、3カ月で15%減の効果▽皮下注射の減量薬、錠剤でも有効▽一度太ると痩せても脳が太った時のままに▽食事の時間制限VSカロリー制限どちらに軍配?▽BMIはもう古い?米国医師会が呼びかけ
世界各国の大手メディアや医療メディアなどが配信しているニュースの中から、皆さんにぜひ知ってほしいものをマイシュー(毎週)選んでお届けします。今回は「肥満症の治療」や「ダイエット」に関するニュース5本を取り上げます。
まとめ:医療ニュース編集部
二つの肥満症治療剤の治験の結果が立て続けに報告されました。両方とも2型糖尿病の治療薬として知られるGLP-1受容体作動薬です。GLP-1は、食事をして血糖値が上がると小腸から分泌されるホルモンで、すい臓のβ細胞にあるGLP-1受容体に結合してインスリンの分泌を促します。また、中枢神経に働きかけて食欲も抑えます。このGLP-1と同じ働きをするのがGLP-1受容体作動薬です。
CNN:Daily pill from Eli Lilly leads to 15% weight loss in midstage study, rivaling Wegovy results without the shot

CNNが報じたのは、米医学誌NEJMに掲載された、米イーライリリー社が開発する肥満治療のための経口薬「orforglipron(オルフォルグリプロン)」の治験結果です。米国の研究チームが、平均体重108.7kgの太り過ぎか肥満の患者272人を調査したところ、すでに承認済みの他の減量薬(注射投与のセマグルチド)に匹敵する効果を示したそうです。最高用量のオルフォルグリプロンを毎日服用した人は、36週時点で体重が平均14.7%減少したそうです。一方、プラセボ群の体重減少はわずか2.3%だったといいます。副作用として、吐き気や便秘、下痢などが認められたとのことです。
CBS News:Drug in weight-loss injection Wegovy may soon come in pill form
CBS Newsは、デンマークのノボノルディスク社が開発した肥満症治療剤「Wegovy(ウゴービ:一般名セマグルチド)」の投与が経口でできるようになりそうだと報じました。ウゴービは現在、週1回皮下注射で投与されています。16カ月にわたって実施された二つの臨床試験の結果によると、高用量のウゴービ錠剤を毎日服用することで、皮下注射に匹敵する減量効果が得られることが判明。2型糖尿病の人にも有効だったといいます。副作用として、吐き気や便秘、下痢などの胃腸関連のトラブルが認められたとのことです。
ダイエットを試みた人の多くがリバウンドしてしまうといいます。次に紹介するのは、その理由の一因を解き明かした研究です。栄養を摂取したことに対して、脳の反応が大幅に低下してしまうそうです。
SciTechDaily:Obesity May Permanently Change the Brain – Yale Study Finds Severely Impaired Response to Nutrients
SciTechDailyが掲載したのは、米国の研究チームが科学誌Nature Metabolismに発表した研究成果です。チームは、痩せている(BMI25以下の)28人と肥満(BMI30以上)の30人の胃にグルコースまたは脂肪を直接注入し、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を使って脳活動を評価したそうです。痩せている人は栄養素の感知に関連する脳活動の変化が起こるのですが、肥満の人にはほとんど起きなかったといいます。また、肥満の人に減量プログラムを行い、10%の減量に成功した人に同じ検査を実施したところ、栄養素を感知する反応は戻らないことが明らかになったとのことです。
カロリー制限によるダイエットに代わるものはないのでしょうか。先日、消化器外科医と食事をしていたところ、ものすごい量を食べるのでびっくりしました。前回会った時は減量中だと言って食べる量を減らしていたのに。もう減量はやめたのかと聞くと、彼は「カロリーのあるものの飲食は正午~午後8時に制限しているから大丈夫」と答えました。その間なら食べたい物は我慢しないそうです。それなのに「体重も減ったし、体の調子はすごくいいよ」とのこと。確かに、以前よりも痩せて見えました。
The Conversation:Intermittent fasting and calorie counting about equal for weight loss – new study

The Conversationに紹介されていたのは、カロリー制限と同じくらい有効なダイエット法があることを証明した米国のチームの研究です。調査対象は18~65歳の肥満患者90人。食事を取る時間を制限する「断続的断食」を行う群と摂取カロリーを制限する群について、減量効果を比べたところ、両群ともに1年後には体重が4%減少したそうです。また、胴囲や脂肪量の減少も同等だったといいます。断続的断食群は、前半の半年間は正午~午後8時、後半の半年間は午前10時~午後8時に食事の時間を制限したとのことです。ただし、今回の研究では、専門家が参加者に助言をしており、それが減量に影響を及ぼした可能性もあるそうです。
最後に紹介するのは、肥満の考え方に影響を与える可能性のあるニュースです。日本肥満学会が発刊する『肥満症診療ガイドライン2022』にもあるように、現在はBMI(体格指数)が肥満の指標として使われています。しかし、米国医師会がそれを考え直すことを決めたというのです。
The Conversation:BMI alone will no longer be treated as the go-to measure for weight management – an obesity medicine physician explains the seismic shift taking place

米国医師会(AMA)が、臨床現場でBMI(体格指数)を重要視するのをやめるよう呼びかける新たな指針を採用したという記事がThe Conversationに載りました。BMIは長年肥満の定義に使われてきましたが、健康状態を予測する尺度としては不十分なのだそうです。体重と身長から求めるBMIは、集団レベルでは体脂肪率と関連があることは分かっていますが、個人の体脂肪率を予測するには正確性に欠けるといいます。体重増加の健康リスクを評価する指標として、体脂肪指数や相対脂肪量などが提案されています。
※この記事はマイナビDOCTORの「サクッと1分!世界の医療ニュース」を再編集したものです。
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金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。