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2026.04.10

認知症予防、認知機能の改善につながる意外なモノ・コト

バードウオッチングで認知機能向上か 熟練者の脳に見られた変化▽クランベリーで記憶力が改善!▽楽器演奏や合唱で認知能力アップ?▽気分安定薬「リチウム」が認知症予防につながる可能性

世界の医学誌や科学誌に掲載された論文、大手メディアや医療メディアが配信している医療・医学ニュースの中から「見逃し厳禁」のものを選び、医療ニュース編集部の記者のコラムを付けて毎週お届けします。今回は3月5日~4月2日に『サクッと1分!世界の医療ニュース』に掲載した記事の中から「認知機能の維持・向上に有効なもの」についてのニュースを取り上げ、過去の関連記事3本を紹介します。なお、『What You Missed』は日本語版しか存在しません。【まとめ:医療ニュース編集部】

①バードウオッチングが脳を鍛える? 熟練者は注意・認知領域が発達

2026.03.11
バードウオッチングの熟練者は、注意や認知に関わる脳領域の構造に違いがあり、認知機能が高い可能性が示されたそうです。カナダの研究チームが、熟練者と初心者のバードウオッチャーの脳を比較した結果を、神経科学の学術誌The Journal of Neuroscience(JNeurosci)に報告しています。

研究では、24~75歳の熟練者29人と、22~79歳の初心者29人を対象に、2種類のMRI(磁気共鳴画像)を用いて脳を評価しました。バードウオッチングの熟練度は経験年数ではなく、スクリーニングテストによって判定されています。

まず「拡散強調MRI」の分析では、熟練者の脳において、ワーキングメモリ(作業記憶)、空間認識、物体認識に関連する領域で組織の密度が高いことが明らかになりました。これは神経回路間の情報伝達が効率的である可能性を示唆しています。

さらに、「機能的MRI(fMRI)」による解析では、鳥を識別する課題に取り組む際、こうした構造的な違いが見られた領域が実際に活発に働いていることが確認されました。特に、見慣れない鳥を識別する場面で顕著だったといいます。

このような熟練者の脳構造の差異は、年齢にかかわらず認められました。ただし、この研究は横断研究であるため、バードウオッチングが脳を変化させたのか、もともと脳機能の高い人がバードウオッチングに向いていたのかは判断できないとのことです。

研究チームは、バードウオッチングという行為自体が多様な認知機能を同時に必要とする点に注目しています。加えて、自然環境で活動することは注意力の改善と関連する可能性があり、歩行は認知障害リスクの低減と、観察会などを通じた社会的交流は処理速度の向上とそれぞれ関連するとの報告があります。これら複数の要素が相まって、バードウオッチングが脳の健康に良い影響をもたらす可能性があるとしています。

記者から

小学生の息子の希望で、バードウオッチングの親子体験プログラムに参加したことがあります。専門のガイドの案内で、森の中を散策しながら野鳥を観察するツアーです。双眼鏡を片手に、20人ほどのグループで出発しました。

森の中に入ると、あちこちから鳥のさえずりが聞こえます。ところが、鳥の姿を実際に確認するのはなかなか簡単ではありません。木々の葉に視界が遮られ、思った以上に鳥を見つけるのが難しいのです。息子もガイドの助けを借りて、ようやく鳥を観察することができました。

カナダの研究チームが、バードウオッチングの熟練者は、注意や認知に関わる脳領域の構造に違いがあり、認知機能が高い可能性があることを報告しました。この研究成果を知って、息子がバードウオッチングの後にこぼした「ガイドさんはよく鳥を見つけられるよね!」という感想を思い出しました。

自然環境の中で野鳥を見つけ、種類を見分けるには、熟練の技能が必要であることは身をもって体験しました。それを可能にするのは、注意や認知に関与する脳領域の発達であるとする研究結果は、私にとって納得感のあるものでした。

研究チームはまた、自然環境での活動や歩行、観察会などを通じた社会的交流が、脳の健康に良い影響をもたらす可能性があることも指摘しています。

実は、私は鳥が苦手で、当初はバードウオッチングへの参加には消極的でした。しかし、実際に参加してみると、森の中を歩き回ることが適度な運動になる上に、自然に囲まれて無心で鳥を探す時間がリフレッシュにつながると分かったのです。

ちなみに息子は、同じグループの子どもたちとあっという間に仲良くなり、楽しそうに会話を交わしていました。鳥を観察するという共通の目的の下で、社会的な交流が促進することも目の当たりにしました。

春の訪れとともに、お出かけ気分が高まる季節。脳の健康に良い影響をもたらすというバードウオッチングを、レジャーの選択肢の一つに加えてみてはいかがでしょうか。【阿部あすか】

Frontiers in Nutrition:Chronic Consumption of Cranberries (Vaccinium macrocarpon) for 12 Weeks Improves Episodic Memory and Regional Brain Perfusion in Healthy Older Adults: A Randomised, Placebo-Controlled, Parallel-Groups Feasibility Study
2022.05.23
クランベリーを毎日食べると、記憶力や脳機能にプラスの影響があるようです。英国などの研究チームが、正常な認知機能をもつ50~80歳の参加者60人を調査。

生のクランベリー100gに相当する量のフリーズドライクランベリー粉末を毎日12週間にわたって摂取した人は、体験した出来事の詳細な記憶や神経機能、脳の血流が改善することが分かったそうです。

さらに、動脈硬化を引き起こすとされる悪玉コレステロールのレベルも低下したといいます。
The Conversation:Playing a musical instrument or singing in a choir may boost your brain – new study
2024.02.08
楽器の演奏や合唱などの音楽経験は、後の認知機能にどのような影響を及ぼすのでしょうか。英国の研究チームが、主に女性の中高年に音楽経験に関するアンケートと認知テストを実施。

楽器の演奏経験がある人は、そうでない人に比べて記憶力と実行機能(計画を立てて目的を達成する能力)が優れていたそうです。特に今も楽器を演奏している人は、最も高い認知能力を示したといいます。合唱の経験者は、実行機能のみ優れていたとのこと。

なお、音楽鑑賞と認知機能の間に関連性は見いだせず、「モーツァルト効果」は誤りのようです。
News-Medical.Net:Lithium use linked to reduced risk of developing dementia
2022.03.22
双極性障害やうつ病患者の気分安定薬として使われるリチウムが、認知症の発症を予防する可能性があるようです。

英国の研究チームが、メンタルヘルスの問題で受診した50歳以上の患者2万9618人のデータを分析。患者はみな認知症の既往歴はなかったといいます。リチウムを服用していた患者は548人おり、そのうち9.7%が認知症と診断されたそうです。

一方、リチウムを服用していなかった2万9070人においては、11.2%が認知症と診断されたとのこと。

PROFILE

医療ニュース編集部
阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。

藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『オーベン×ネーベン』『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『オーベン×ネーベン』『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『オーベン×ネーベン』『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。

足羽美香:記者・編集者。2025年4月に新卒でマイナビに入社。WEBマーケティングやWEBディレクション、コンテンツSEOなどの研修を受けた後、25年9月から医療ニュース編集部に所属し、『オーベン×ネーベン』『マイナビRESIDENT』『マイナビDOCTOR』の各種コンテンツの制作を担当している。