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2026.02.13

認知症の未来はどこへ? 患者数、対策、新治療法―認知症をめぐる世界の動向

欧州の認知症患者数が1.64倍に? 2050年に2000万人の見込み▽脳における糖の分解が認知症治療の鍵に▽AI・ロボット技術を駆使した日本の認知症対策に世界が注目!▽アルツハイマー病の新治療につながる? 脳の炎症を抑える免疫細胞「ミクログリア」を発見

世界の医学誌や科学誌に掲載された論文、大手メディアや医療メディアが配信している医療・医学ニュースの中から「見逃し厳禁」のものを選び、医療ニュース編集部の記者のコラムを付けて毎週お届けします。今回は1月8日~2月5日に『サクッと1分!世界の医療ニュース』に掲載した記事の中から「認知症への対策と、治療の進展」についてのニュースを取り上げ、過去の関連記事3本を紹介します。なお、『What You Missed』は日本語版しか存在しません。【まとめ:医療ニュース編集部】
2026.02.02
欧州各国のアルツハイマー病協会で構成する「アルツハイマー・ヨーロッパ」は1月28日、欧州の認知症に関する最新データをまとめた報告書「The Prevalence of Dementia in Europe 2025(欧州における認知症有病率2025)」を公表しました。報告書によると、認知症患者数は2050年までに欧州全体で64%増加すると推計されています。

この報告書は、19年に公開された「欧州における認知症年鑑(Dementia in Europe Yearbook 2019)」以降に発表された地域ベースの研究データをもとに、5歳刻みの年齢層別有病率を更新。その有病率を、国連の世界人口推計(UN World Population Prospects 2024)に適用し、25年と50年の患者数を算出しています。

分析の結果、25年時点の認知症患者数は、EU加盟27カ国で906万5706人、非加盟国を含む欧州全体で1212万2979人と推計されました。さらに50年には、EUで1433万5788人(58%増)、欧州全体で1990万5856人(64%増)に達すると見込まれています。

アルツハイマー・ヨーロッパは、認知症を抱える人の数が今後数十年間増加し続けることを強調し、医療・福祉や社会保障システムへの十分な投資、研究支援、予防策の強化を早急に実施しなければ問題が深刻化すると警告しています。

事務局長のジャン・ジョルジュ氏は、「認知症が欧州にもたらす課題は重大であり、今回の最新データが、欧州および各国の政策決定者に認知症対策を優先させる契機となることを願う」と述べています。

記者から

先日、初めて訪れる地域を小学生の息子と散策していたところ、古い駄菓子屋を見つけました。昭和にタイムスリップしたような店構えに引かれ、中に入ることにしました。もちろん、息子も大喜びです。

店内にはほかに客はおらず、腰の曲がった高齢の女性がテレビを見ながら、一人で店番をしています。息子が昔懐かしい駄菓子をあれこれ選ぶのを見守っていると、女性から「ちょっとお尋ねしますが、この辺りにいい八百屋さんや魚屋さんはありますか?」と声をかけられました。

「あれ? 地元の人じゃないのかな……」と違和感を覚えつつ、私もこの地域に詳しくないことを伝えました。その後、女性は自身の生い立ちなどを話してくれたのですが、どうもつじつまが合わないことが多いのです。どうやら女性は、50年以上前に故郷を離れてこの地域に住み始め、その頃の記憶に戻って話をしているようです。

そうしているうちに、息子の買い物が終わりました。会計は驚くほど正確で、内心ホッとして店を後にしました。すると息子が、「あのおばあちゃん、一人で大丈夫なのかな?」と心配そうにつぶやきました。私との会話を聞いて、何か女性の異変を感じ取ったようです。

欧州各国のアルツハイマー病協会で構成する「アルツハイマー・ヨーロッパ」が、欧州の認知症に関する最新データをまとめた報告書を公表しました。報告書によると、認知症患者数は2050年までに欧州全体で64%増加すると推計されています。

認知症患者の増加とそれに伴う社会問題の深刻化は、欧州だけでなく日本でも重大な懸案事項の一つです。あの駄菓子屋の女性が認知症を患っているのかを私が判断することはできません。しかし、息子が案じるような様子がうかがえたことは事実です。そして近年、認知症を疑う高齢者に日常生活で遭遇する機会が増えているように感じます。

アルツハイマー・ヨーロッパの事務局長は、「認知症が欧州にもたらす課題は重大であり、今回の最新データが、欧州および各国の政策決定者に認知症対策を優先させる契機となることを願う」と述べたそうです。日本でも、認知症患者やその家族が安心して暮らせる支援や対策がより一層進むことを願っています。【阿部あすか】

Nature Metabolism:Neuronal glycogen breakdown mitigates tauopathy via pentose-phosphate-pathway-mediated oxidative stress reduction
2025.07.04
アルツハイマー病(AD)などの神経変性疾患は、タウタンパク質が細胞内に異常に蓄積することが原因の一つであると考えられています。米国の研究チームが、脳のニューロン(神経細胞)内の「グリコーゲン」という糖の貯蔵物質を適切に分解することで、脳へのダメージを防げる可能性があることを発見したと、科学誌Nature Metabolismに発表しました。

グリコーゲンは肝臓や筋肉に蓄えられ、エネルギーの源になる多糖類で、脳内にも少量存在します。チームは、ハエとヒトのADなどのモデルで、ニューロンにグリコーゲンが過剰に蓄積していることを確認しました。さらに、タウタンパク質がグリコーゲンに結合することで分解が妨げられ、ニューロンの酸化ストレスへの対処機能が失われることで神経変性につながることを突き止めました。

チームは、「グリコーゲンホスホリラーゼ(GlyP)」と呼ばれるグリコーゲン分解酵素を活性化させると、ニューロンが酸化ストレスに強くなり、タウが関連する損傷を軽減できることを明らかにしました。

また、食事制限がGlyPの働きを高め、ハエのADモデルの症状を改善することも確認されました。このことからチームは、ダイエット薬として注目されている「GLP-1受容体作動薬」が、食事制限と同様の作用を通じて認知症治療に有望な可能性があるとしています。
BBC:Japan is facing a dementia crisis – can technology help?
2025.12.22
急激な高齢化を背景に認知症患者の増加が深刻化する日本で、テクノロジーはどのように活用されているのか――。英公共放送BBCが日本の現状を報じています。

BBCは、2024年に日本で1万8121人の認知症高齢者が行方不明となり、そのうち491人が遺体で発見されたという警察庁の発表に言及しています。また、世界銀行のデータから、24年時点で日本の人口に占める65歳以上の割合は約30%で、約36%のモナコに次ぐ世界で2番目の高さであることを示しています。

さらに、介護業界の人手不足も深刻な問題だと指摘。「日本政府は認知症を最も緊急の政策課題の一つに位置づけている。厚生労働省は認知症関連の医療・社会福祉費が2025年には9兆円、30年には14兆円に達すると予測し、負担を軽減するためにテクノロジーの活用に重点を置く方針を示している」と報じています。

その具体例として、行方不明者を追跡するためのGPSシステムが全国で導入されており、一部の地域ではコンビニエンスストアと連携し、地域の安全網を強化していることを紹介しています。また、AIやロボット技術の進展にも触れています。

AIの活用例として、富士通と台湾の医療機器ソフトウェア企業Acer Medicalが共同開発した「aiGait(エーアイゲイト)」があります。これは高齢者の歩行パターンの異常を検知し、認知症などの発症リスクを評価する技術です。さらに、早稲田大学が開発した人型ロボット「AIREC(アイレック)」については、洗濯物をたたむ、靴下を履かせるといった動作が可能であることに触れ、未来の介護者として設計されているとしています。

また、シャープが開発した高さ約12cmの対話型AIロボット「ポケとも」は、服薬のサポートだけでなく、一人暮らしの高齢者の話し相手として活躍することが期待されていると紹介しています。
Nature:Lymphoid gene expression supports neuroprotective microglia function
2025.11.17
アルツハイマー病(AD)の進行を遅らせるのに役立つ脳内の特殊な免疫細胞が発見されたそうです。米国とドイツの研究チームが科学誌Natureに論文を発表しました。

ADにおいては、脳内の免疫細胞のミクログリアが、ADに関連するタンパク質アミロイドβを除去することで脳を保護しますが、特定の条件下では脳の損傷や炎症の一因になることが知られています。つまり、ミクログリアの振る舞いがADの進行に大きく影響する可能性が考えられるのです。

研究チームはADマウスやヒト脳細胞のミクログリアにおいて、遺伝子活性の調節に関与する転写因子(DNAの遺伝情報をRNAに転写することに関わるタンパク質)「PU.1」のレベルを低下させる実験を実施。

その結果、ミクログリアが、リンパ球の持つ免疫調節機能を獲得することが明らかになりました。その効果は強力で、脳全体の炎症が抑制され、マウスの記憶力や生存率が改善されました。

さらに、この特殊なミクログリアから、免疫細胞T細胞の活性化に関わる細胞表面のCD28受容体を除去すると、炎症の悪化とアミロイドプラーク(アミロイドβの塊)の増大が認められました。CD28はミクログリアの神経保護効果に重要な役割を果たすことも判明しました。

研究チームは「PU.1とCD28の関係はミクログリアを標的とした免疫療法への新たな道であり、ADの進行抑制の治療法開発が期待される」としています。

PROFILE

医療ニュース編集部
阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。

藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。

足羽美香:記者・編集者。2025年4月に新卒でマイナビに入社。WEBマーケティングやWEBディレクション、コンテンツSEOなどの研修を受けた後、25年9月から医療ニュース編集部に所属し、『マイナビRESIDENT』『マイナビDOCTOR』『オーベン×ネーベン』の各種コンテンツの制作を担当している。