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2026.01.23

陰茎がんに頭頸部がん…女性だけのリスクじゃないHPV感染 男子のワクチン接種で根絶可能か

HPV関連がんはワクチンで根絶可能! 男子接種の効果を数理モデルで予測▽口腔咽頭がんの要因となる男性のHPV経口感染リスク▽HPV感染が精子に与える影響とは? 男性の生殖能力との関連を解析▽HPV陽性で心血管疾患リスクが40%増? 25万人調査で示された新たな関連性

世界の医学誌や科学誌に掲載された論文、大手メディアや医療メディアが配信している医療・医学ニュースの中から「見逃し厳禁」のものを選び、医療ニュース編集部の記者のコラムを付けて毎週お届けします。今回は12月18日~1月15日に『サクッと1分!世界の医療ニュース』に掲載した記事の中から「HPVが関連する病気」についてのニュースを取り上げ、過去の関連記事3本を紹介します。なお、『What You Missed』は日本語版しか存在しません。【まとめ:医療ニュース編集部】
2025.12.26
若年男性のヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン接種率を高めることで、子宮頸がん、頭頸部がん、肛門がん、腟がん、陰茎がんなどのHPV関連がんを根絶できる可能性がある。米国の研究チームが、こんな研究成果を科学誌Bulletin of Mathematical Biologyに発表しました。

研究チームは数理モデルを用いて、現在女子のみを対象にHPVワクチン接種が実施されている韓国について、ワクチン接種の変化がHPV関連がんに与える影響を予測しました。

その結果、男子の65%が接種すれば、女性のワクチン接種率が現状の88%のままでも集団免疫が成立し、約70年でHPV関連がんを根絶できる可能性が示されました。

さらに、女子の接種率が80%に低下しても、男子の80%がワクチンを接種すれば、HPV関連がんの根絶を達成できるといいます。一方で、男子を接種対象にしない場合、必要な女子の接種率は99%とのことです。

研究チームは、女子に加えて12~17歳の男子と、ワクチン接種の機会を逃した中高年女性もワクチンを接種するべきだと指摘しています。

世界的に接種率を高め、子宮頸がん検診を拡大することができれば、今世紀末までに181カ国中149カ国で子宮頸がんを根絶できるとする報告もあるとのことです。

記者から

「学会(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)で今、HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの男性への定期接種化について力を入れて動いているんですよ。ぜひ取材してみてください」

数年前、頭頸部がんのアルミノックス治療(光免疫療法)を取材した帰り際、取材相手の医師にそう言われました。頭の中が「?」でいっぱいになったのを覚えています。HPVと“男性”“頭の病気”がまったく結びついていなかったからです。

話を聞くと、HPVは女性の子宮頸がんや膣がんだけでなく、男性の陰茎がん、男女に共通するものとしては肛門がんや中咽頭(口の奥)のがんも引き起こすというのです。HPVの主な感染経路は性的接触で、男女が互いにリスクを共有します。そして、中咽頭がんの増加は世界的な問題となっていること、すでに男女ともにHPVワクチンを定期接種として制度化している国が多いことも教えられました。

その後、取材を重ねる中で、HPV関連がんとワクチンによる予防について理解が深まりました。それを生かし、新しい研究成果が出るたびに記事として紹介してきました。また、さまざまなメディアでも、HPV関連がんについて報じられるようになってきました。しかし、周囲の会話を聞いていると、認識は数年前とほとんど変わっていないように感じます。

一方で、世界の状況は日本とは異なるようです。国立健康危機管理研究機構(旧国立感染症研究所)の資料によると、HPVワクチンは2006年の承認以降、24年1月時点で、WHO(世界保健機関)加盟国(194カ国)の71%に当たる137カ国が国の予防接種プログラムにHPVワクチンを導入しています。そして、オーストラリアや米国、カナダ、フランス、英国、ドイツなど欧米各国だけでなく、導入国の43%(59カ国)が男性も接種対象にしているのです。

HPVワクチンには2価、4価、9価の3種類があります。厚生労働省によると、男性へのワクチン接種については、日本では20年12月に4価ワクチンが、25年8月に9価ワクチンがそれぞれ承認されました。ただ、いずれも定期接種ではなく、全額自己負担です(自治体によっては助成制度あり)。

女性のみを対象に接種を行っている韓国の研究チームが、「男子の65%が接種すれば、女子の接種率が現状の88%のままでも集団免疫が成立し、約70年でHPV関連がんを根絶できる可能性がある」との研究成果を発表しました。HPV関連がんの予防法はすでに確立され、根絶という将来像まで見え始めています。

しかし、科学的知見がまだ十分に人々の中に広がっているとは思えません。正確な情報を基に、もっと多くの人にHPV関連がんについて考えてほしい――。伝える側として、そう強く願うとともに、これからも丁寧に発信を続けていきたいと、改めて思いました。【藤野基文】

Nature Microbiology:Multinational epidemiological analysis of oral human papillomavirus incidence in 3,137 men
2024.10.30
ヒトパピローマウイルス(HPV)は口腔咽頭がんの原因にもなります。米国の研究チームが男性における経口感染について、発生頻度やリスク上昇の要因などに関する新たな調査結果を科学誌Nature Microbiologyに発表しました。

チームは米国、メキシコ、ブラジルの男性計3137人を57カ月(中央値)にわたり追跡調査。発がんリスクのあるHPV経口感染は、1000人月あたり2.4件発生したそうです。リスク上昇の要因は、高学歴の人やアルコール摂取量が多い人、多数の女性パートナーがいる人、頻繁にオーラルセックスをする人、男性パートナーがいる人――であることが明らかになったといいます。また、年齢による感染リスクに違いはなく、生涯にわたりHPVに感染する可能性があるとのことです。

チームは、性別不問のHPVワクチン接種プログラムや中年男性を対象としたキャッチアップ接種の必要性を指摘しています。
Frontiers in Cellular and Infection Microbiology:Impact of high-risk and low-risk human papillomavirus infections on the male genital tract: effects on semen inflammation and sperm quality
2024.09.10
子宮頸がんなどの原因となる「ヒトパピローマウイルス(HPV)」が、男性の生殖能力に影響を及ぼす可能性があるようです。アルゼンチンの研究チームが、HPVワクチン未接種の18歳以上の男性205人の精液サンプルを分析し、その結果を科学誌Frontiers in Cellular and Infection Microbiologyに発表しました。

参加者の男性のうち19%に当たる39人がHPV検査で陽性となり、20人の男性がHPVの中でも子宮頸がん、肛門がん、中咽頭がんなどの悪性腫瘍を引き起こす可能性が高い「高リスク株」の感染者だったといいます。

これらの男性は、HPVに感染してない男性に比べて、精液中に死んだ精子の割合が高いことが分かったそうです。また、精子の損傷やDNAの変化につながる白血球の減少、活性酸素種の増加も認められたといいます。一方で、「低リスク株」が感染していた男性については、同様の関連は認められなかったとのことです。
米国心臓病学会(ACC)
2025.04.03
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、子宮頸がんをはじめとする複数の種類のがんを引き起こすだけでなく、心血管疾患リスクにも関連するようです。米国の研究チームが、米イリノイ州シカゴで3月29~31日に行われた米国心臓病学会(ACC)で研究成果を発表しました。

チームは、HPV感染と心血管疾患に関するデータが掲載されている七つの研究から、計25万人近くについて3~17年にわたり追跡したそうです。分析の結果、HPV陽性者は、陰性者に比べて心血管疾患を発症するリスクが40%高く、心臓の動脈にプラークが蓄積して心筋の血流が低下する冠動脈疾患を発症するリスクが2倍になることが分かったといいます。

病歴や生活習慣など病気に与えるさまざまな要因(交絡因子)を調整した後でも、HPV陽性者の心血管疾患リスクは33%高かったといいます。一方で、高血圧との有意な関連性は認められなかったそうです。

HPVと心血管疾患の関連のメカニズムは分かっていませんが、チームはHPV感染による慢性炎症が関係しているとみているようです。HPV感染を予防するには、10代のうちにHPVワクチンを接種することが有効であることが知られています。

PROFILE

医療ニュース編集部
藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。

足羽美香:記者・編集者。2025年4月に新卒でマイナビに入社。WEBマーケティングやWEBディレクション、コンテンツSEOなどの研修を受けた後、25年9月から医療ニュース編集部に所属し、『マイナビRESIDENT』『マイナビDOCTOR』『オーベン×ネーベン』の各種コンテンツの制作を担当している。

阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。