世界の医学誌や科学誌に掲載された論文、大手メディアや医療メディアが配信している医療・医学ニュースの中から「見逃し厳禁」のものを選び、医療ニュース編集部の記者のコラムを付けて毎週お届けします。今回は10月9日~11月6日に『
サクッと1分!世界の医療ニュース』に掲載した記事の中から「腸内細菌と健康」についてのニュースを取り上げ、過去の関連記事3本を紹介します。なお、『What You Missed』は日本語版しか存在しません。【まとめ:医療ニュース編集部】
2025-10-17
2024年8月19日に、117歳168日で亡くなったスペインの女性マリア・ブラニャス・モレラさんの腸内細菌叢の研究から、毎日のヨーグルト摂取や地中海式食事法が長寿につながる可能性が示されたそうです。スペインの研究チームが、医学誌Cell Reports Medicineに成果を発表しました。
研究では、モレラさんの血液、唾液、尿、便を分析しました。その結果、一般的な疾患に対する保護効果のある遺伝子変異を持っていたことが判明しましたが、これは特段珍しいものではないといいます。一方で、食事や生活習慣でコントロールが可能な腸内細菌叢は、数十歳若い人と同じくらい多様性に富んでおり、善玉菌として知られる「ビフィズス菌」が属するBifidobacteriaceae科の細菌が特に豊富なことが分かりました。
通常、高齢になると腸内細菌の多様性が失われ、Bifidobacteriaceae科の細菌も減少します。しかし、100歳を超える長寿者はこの細菌が多く見られる傾向があります。
モレラさんは、ビフィズス菌の増殖を助ける乳酸菌を含むヨーグルトを1日3個食べる習慣があり、腸内細菌の多様性を高めるとされる地中海式食事法も実践していたそうです。
もちろん、彼女の長寿が腸内細菌叢だけで説明できるわけではありませんが、食生活による腸内環境の維持が寄与した可能性があります。
ビフィズス菌を増やすには、ヨーグルト、ケフィア(発酵乳)、キムチ、ザワークラウト(キャベツの塩漬け)などの発酵食品に加え、果物、野菜、豆類、全粒穀物を摂取すると効果的とのことです。
Gut Microbes Reports:Comparison between two divergent diets, Mediterranean and Western, on gut microbiota and cognitive function in young sprague dawley rats
2025-01-22
若者がオリーブオイルや魚、食物繊維を多く摂取する「地中海式食事法」を取り入れると、腸内細菌叢(腸内フローラ)のバランスが変化し、脳に好影響が及ぶ可能性があるようです。米国の研究チームが科学誌Gut Microbes Reportsに研究成果を発表しました。
チームは人間の18歳に相当する若いラットで調査を行いました。その結果、地中海食を14週間与えられた群は、飽和脂肪の多い西洋食を与えられた群に比べてCandidatus Saccharimonas属をはじめとする4種類の腸内細菌が増加する一方で、ビフィドバクテリウム属など別の5種類の腸内細菌が減少することが分かったそうです。
そして、こうした腸内細菌の変化は、ラットの記憶力や学習能力の向上に関連することが、迷路を使った実験で示されたといいます。また地中海食は、新しい情報に適応するための認知の柔軟性や必要な情報を一時的に保存して処理するためのワーキングメモリの向上にも関連していたとのことです。
地中海式食事法は、主な脂肪源としてのオリーブオイル▽豊富な野菜、果物、全粒穀物▽魚と赤身のタンパク質▽赤身肉と飽和脂肪酸の制限▽さまざまな植物から取るたくさんの食物繊維――が重要な要素だそうです。
Nature Microbiology:Coffee consumption is associated with intestinal Lawsonibacter asaccharolyticus abundance and prevalence across multiple cohorts
2024-12-05
毎日コーヒーを飲むと特定の腸内細菌が豊富になり、健康によい効果をもたらすかもしれません。米国などの研究チームが、米国と英国に住む2万2867人と別の211の集団の5万4198人から採取した便サンプルのデータを分析し、研究成果を科学誌Nature Microbiologyに発表しました。
チームの調査の結果、コーヒーを1日3杯より多く飲むと報告した人は、ほとんど飲まないと報告した人に比べて「Lawsonibacter asaccharolyticus (L.asaccharolyticus:ローソニバクター・アサッカロリティカス)」と呼ばれる腸内細菌の量が8倍にも上ることが分かったそうです。これは、世界中の人々に共通していたといいます。試験管内で行った実験では、コーヒーがL.asaccharolyticusの成長を促すことも示されたそうです。
この研究により、特定の飲食料が、腸内細菌叢の組成に大きな影響を及ぼす可能性が示されました。現段階ではL.asaccharolyticusの影響は不明ですが、チームはコーヒーを飲むことによる健康上のメリットと関係していると考えているようです。
医療ニュース編集部
阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。
藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。
足羽美香:記者・編集者。2025年4月に新卒でマイナビに入社。WEBマーケティングやWEBディレクション、コンテンツSEOなどの研修を受けた後、25年9月から医療ニュース編集部に所属し、『マイナビRESIDENT』『マイナビDOCTOR』『オーベン×ネーベン』の各種コンテンツの制作を担当している。