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2025.10.17

秋の行楽シーズン到来!乗り物酔い対策に“音楽”はいかが?

車酔いに効く音楽とは――▽好きな音楽による快楽は食事や性行為と同様の脳内メカニズム▽アルツハイマー病に音楽療法 お気に入りの曲が認知機能を改善▽楽器の演奏で脳が若返り 高齢者の認知機能維持に有効か

世界の医学誌や科学誌に掲載された論文、大手メディアや医療メディアが配信している医療・医学ニュースの中から「見逃し厳禁」のものを選び、医療ニュース編集部の記者のコラムを付けて毎週お届けします。今回は9月10日~10月8日に『サクッと1分!世界の医療ニュース』に掲載した記事の中から「音楽が脳にもたらす変化」についてのニュースを取り上げ、過去の関連記事3本を紹介します。なお、『What You Missed』は日本語版しか存在しません。【まとめ:医療ニュース編集部】
2025-09-10
明るく楽しい音楽や静かで心地よい音楽を聴くと、乗り物酔いからの回復が早まる可能性があるそうです。中国の研究チームが、科学誌Frontiers in Human Neuroscienceに研究成果を発表しました。

チームは、30人の参加者に対し、ドライビングシミュレーターを用いて車酔いを誘発した後、60秒間音楽を聴かせる実験を行いました。

その結果、楽しい音楽を聴いた群は57.3%▽心地よい音楽を聴いた群は56.7%▽情熱的な音楽を聴いた群は48.3%――の割合で車酔いの症状が緩和することが分かりました。一方で、悲しい音楽を聴いた群は、症状の軽減率が40%にとどまり、音楽を聴かなかった群の43.3%よりも効果が低かったといいます。

脳波検査(EEG)のデータからは、車酔いの発生に伴い、視覚情報を処理する後頭葉の脳活動が単純化する傾向があることが示されました。そして、車酔いから回復するにつれて、脳活動は通常レベルに戻ることが確認されました。

心地よい音楽は人々をリラックスさせ、車酔いを悪化させる緊張を和らげる一方で、楽しい音楽は脳の報酬系を活性化することで注意をそらし、症状を軽減する可能性があるといいます。反対に、悲しい音楽はネガティブな感情や不快感を増幅させることで、逆効果になる可能性が指摘されています。

記者から

最近、小学生の息子が地理や歴史に興味津々です。先日、そんな息子から「秋の日光(栃木県日光市)に行ってみたい!」とリクエストされました。美しい紅葉の時期に、中禅寺湖や日光東照宮を訪れたいそうです。「いいね!」と即答しそうになった時、ある不安が頭をよぎりました。それは「乗り物酔い」です。

中禅寺湖エリアに行くには、急カーブが連続することで有名な「いろは坂」を通らなくてはなりません。私はこれまで何度も、バスや車で酔った経験があります。そして息子は、私以上に乗り物酔いをしやすいのです。

「日光に連れて行ってあげたい」という気持ちと「乗り物酔いが心配」という不安の戦いが、私の中で始まりました。「酔い止め薬を飲めば大丈夫!」と前向きになったかと思えば、「でも、どんなに対策しても酔う時は酔うし……」と弱気な考えも浮かんできます。

どうしようか決めかねていた時、中国の研究チームが発表した研究成果を思い出しました。明るく楽しい音楽や静かで心地よい音楽を聴くと、乗り物酔いからの回復が早まる可能性があるというのです。

酔い止め薬を飲むこと、本やスマホを避けること、適度にお腹を満たしておくこと……。これまで、乗り物酔いを予防する方法はあれこれ試してきましたが、乗り物酔いをしてしまってからの回復については、あまり考えたことがありませんでした。万が一酔ってしまった場合に使える方法は、私と息子にとって安心材料の一つになりそうです。

長く暑かった夏もようやく終わり、待ちに待った行楽シーズンの到来です。乗り物酔いに不安を抱える方は、楽しい音楽や心地よい音楽を“お守り代わり”に準備して、お出かけしてみてはいかがでしょうか。私も、息子と一緒に秋の日光を満喫したいと思います。【阿部あすか】

European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging:Pleasurable music activates cerebral µ-opioid receptors: a combined PET-fMRI study
2025-05-01
お気に入りの音楽を聴いたときの快感は、食事や性行為で快楽が得られるのと同様の脳内メカニズムによってもたらされることが分かったそうです。フィンランドの研究チームが医学誌European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imagingに研究成果を発表しました。

チームはPET(陽電子放出断層撮影)検査を使って、19~42歳の女性15人が好きな音楽を聴いている際の脳機能を調べました。

その結果、お気に入りの音楽が、快楽に関連する脳領域において、神経伝達物質オピオイドの放出に影響を与えることが分かったそうです。オピオイドの放出は、参加者が音楽を聴いて「ゾクゾクする快感」を得られる頻度に関係していたといいます。

さらにチームは、別の15人も加えた計30人の女性にfMRI(機能的磁気共鳴画像法)検査を実施し、脳の状態を画像化しました。すると、オピオイドを受け取って細胞を活性化させる受容体(オピオイド受容体)が多い参加者ほど、音楽鑑賞中に脳活性が高まることが明らかになったそうです。

この結果からチームは、疼痛管理や精神疾患の治療などについて、音楽を用いた新しい方法が開発できると考えているようです。
EurekAlert!:On repeat: Listening to favorite music improves brain plasticity, cognitive performance of Alzheimer’s patients, Toronto researchers find
2021-11-17
個人的に思い入れのある音楽を聞くと、アルツハイマー病患者の脳の性質に有益な効果がもたらされるようです。

カナダの研究チームが、認知機能低下の初期段階にある14人を調査。このうち6人は音楽家だったそうです。

3週間にわたって、1日1時間それぞれにとってなじみ深い音楽を聞いてもらったところ、特に思考などを担う前頭前野の神経経路に構造的・機能的変化が確認されたといいます。

全参加者で認知機能の改善がみられたとのこと。EurekAlert!の記事です。
PLOS Biology:Long-term musical training can protect against age-related upregulation of neural activity in speech-in-noise perception
2025-08-13
楽器の演奏は、加齢による認知機能の低下を緩和する可能性があるそうです。カナダと中国の研究チームが、科学誌PLOS Biologyに論文を発表しました。

チームは、高齢の音楽家25人、高齢の非音楽家25人、若年の非音楽家24人を対象に、雑音の中で音節(言葉の発音における基本的な単位)を聞き分ける実験を行いました。この時、機能的磁気共鳴画像(fMRI)を用いて、参加者の脳活動を測定しました。

チームは、音を聞いてそれに反応するための脳のネットワークである「聴覚背側経路(auditory dorsal stream)」に注目しました。分析の結果、高齢の音楽家は高齢の非音楽家に比べて、雑音の中での言葉の聞き取り能力が低下していないことが示されました。

高齢音楽家の脳は、聴覚背側経路において若年の非音楽家と似た接続パターンを示していました。一方で、高齢の非音楽家は、脳の活動が過剰になっており、実験中は一貫して若者の脳の接続パターンから外れていました。

この結果は、楽器の演奏を続けていることが、脳が持つ予備の力である「認知予備力(cognitive reserve)」を高め、脳の働きが若々しく保たれることを示しています。チームは、「楽器の演奏は年齢に関係なく脳に良い影響を与える可能性があり、楽器を始めるのに遅すぎることはない」と強調しています。

PROFILE

医療ニュース編集部
阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。

藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。

足羽美香:2025年4月に新卒でマイナビに入社。WEBマーケティングやWEBディレクション、コンテンツSEOなどの研修を受けた後、25年9月から医療ニュース編集部の記者・編集者として、『マイナビRESIDENT』『マイナビDOCTOR』『オーベン×ネーベン』の各種コンテンツの制作を担当している。