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2025.10.10

『英雄ポロネーズ』を見間違えた記者が歯ぎしり!? 老眼治療薬の開発に大きな進展

老眼治療に革命 ピロカルピン×ジクロフェナクの点眼薬が近見視力を劇的改善▽米FDA初承認の老眼改善目薬「Vuity」登場!▽世界初の眼球移植で視力回復の可能性 米NY大学が挑戦▽緑内障の新治療 酵素産生を促す遺伝子物質で眼圧上昇を改善

世界の医学誌や科学誌に掲載された論文、大手メディアや医療メディアが配信している医療・医学ニュースの中から「見逃し厳禁」のものを選び、医療ニュース編集部の記者のコラムを付けて毎週お届けします。今回は9月3日~10月1日に『サクッと1分!世界の医療ニュース』に掲載した記事の中から「最先端の目の治療」についてのニュースを取り上げ、過去の関連記事3本を紹介します。なお、『What You Missed』は日本語版しか存在しません。【まとめ:医療ニュース編集部】
2025-09-22
加齢とともに近くにあるものに焦点を合わせづらくなる「老眼」を改善する点眼薬が実現するかもしれません。アルゼンチンの研究チームが、平均年齢55歳の老眼患者766人を対象に行った研究結果を、デンマークのコペンハーゲンで9月12~16日に開催された欧州白内障屈折手術学会(ESCRS)で発表しました。

研究では、緑内障治療薬「ピロカルピン」と非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs)の一種「ジクロフェナク」を配合した点眼薬を1日2~3回投与する2年間の調査を実施。ピロカルピンは毛様体筋を収縮させることで物体を見るための調節力を高め、ジクロフェナクは炎症やピロカルピンの使用による不快感を軽減するといいます。

患者には、ジクロフェナクの含有量は一定で、ピロカルピンの濃度が1%、2%、3%のいずれかの点眼薬が割り当てられました。

調査の結果、3群すべてにおいて、30cmの距離のものを見る「近見視力」が急速かつ持続的に改善しました。最初の点眼から1時間後には改善が見られ、12カ月後には83%の患者が良好な近見視力を維持していることが確認されました。視力の改善は最長で2年間持続し、平均持続期間は434日でした。

軽度の老眼患者はピロカルピン1%の薬剤に最もよく反応したのに対し、老眼が進行した患者が視力改善を達成するには2%や3%の濃度が必要だったといいます。なお、眼圧の上昇や網膜剥離などの重大な有害事象は確認されていません。

記者から

子どもの頃から、目が良いのが自慢でした。暗い所で本を読んでも、長時間テレビ画面を見ても、全く視力は落ちませんでした。社会人になってからも、遠くの物の方が少しよく見える程度で、近くの物もしっかりと見えていました。

目のことで困ったのは一度だけです。新聞記者だった40歳ごろ、ショパン作曲の『英雄ポロネーズ』という言葉を記事に盛り込もうとし、資料の細かい字がぼやけて見えなかったために、『英雄ボロネーズ』と入力してしまったのです。校閲記者から「パスタかよ!」と怒られ、「知るか。俺は科学記者なんだよ!」と(心の中だけで)言い返しました。

それから数年後の45歳を過ぎたころ、編集部の若手記者と昼食に行くために、職場のエレベーターホールで待ち合わせをしていた時のこと。私が先に着いたのでスマホでニュースを読んでいると、後から来た記者に「あり得ない(腕を目いっぱい伸ばしたほどの)距離でスマホを見ていますね(笑)」と驚かれました。その時初めて、自分の老眼がかなり進んでいることを自覚したのです。いや、正確には、それまで気づかないふりをしていたのかもしれません。

その後、すぐに老眼鏡を購入しました。今では近くの物を見る時には老眼鏡が手放せません。

アルゼンチンの研究チームが「老眼用の目薬」の治験結果を発表したというニュースが入ってきました。最初の点眼から1時間後には改善が見られ、1年後には使用者の83%が良好な近見視力(30cmの距離の物を見る視力)を維持していたそうです。

この目薬の実用化を心の底から願っています。というか、もっと早く開発されていたら……。ショパンの曲をさらりと記事に盛り込み、「音楽の素養もある科学記者」なんて言われるチャンスを逃さずに済んだ(かもしれない)のに。【藤野基文】

CBS News:New FDA-approved eye drops could replace reading glasses for millions: "It's definitely a life changer"
2021-12-12
老眼を一時的に改善する点眼薬「Vuity」が、米国でついに市場に出るそうです。

米食品医薬品局(FDA)はこの薬を2021年10月に承認。老眼の人がこの処方薬を1滴ずつ点眼すると、15分後には見えやすくなるといいます。効果は6~10時間持続。40~55歳の人に最も効果がみられ、65歳を超えると有効性が低くなるそうです。

価格は30日分で約80ドル。今のところ保険適用外だといいます。臨床試験では、頭痛と目の充血の副作用が確認されたとのこと。CBS Newsの記事です。
USA TODAY:A high-voltage wire destroyed his face. Doctors just gave him a new one.
2023-11-13
米ニューヨーク大学が、高圧電線事故で顔の左半分を大きく損傷した男性に、眼球と顔面の一部を移植していたことを発表したそうです。

手術は2023年5月27日に行われました。眼球全体を移植するのは世界初の試みだといいます。手術から5カ月経過した時点では左目に視力はないものの、角膜は正常で、網膜に血液が流れていることも確認されているそうです。

神経の成長には時間がかかるため、移植した目の視神経が男性の脳と接続して、視力が戻る可能性も残されているといいます。USA TODAYの記事です。

研究チームは24年9月、眼球移植から1年後の男性の状態を医学誌JAMAに報告しています。移植後に光に対する網膜の反応は確認されたものの、移植から1年後には光の知覚は認められなかったそうです。
Medical Xpress:Geneticists develop novel gene therapy for glaucoma
2023-04-23
緑内障の主要な危険因子は眼圧上昇です。目の中で血液のような役割をする房水が、静脈への排水口(シュレム管)の目詰まりなどによって流れなくなるために起こります。

アイルランドの研究チームが動物モデルや提供されたヒトの目を使って遺伝子治療の実験を実施。タンパク質を分解する酵素「MMP-3」の産生を促す遺伝物質を運ぶウイルスベクターを作り、これを1回投与したところ房水の流れがよくなり、眼圧上昇が改善されたといいます。Medical Xpressの記事です。

PROFILE

医療ニュース編集部
藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。

足羽美香:2025年4月に新卒でマイナビに入社。WEBマーケティングやWEBディレクション、コンテンツSEOなどの研修を受けた後、25年9月は医療ニュース編集部のメンバーとして、『マイナビRESIDENT』『マイナビDOCTOR』『オーベン×ネーベン』の各種コンテンツの制作を担当している。

阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。