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2025.09.11

孤独が心身に及ぼす影響 妻や夫を亡くした心の隙間はどうやっても埋められない?

配偶者との死別が心に与える孤独感の大きさ▽「孤独」が悪夢を見させる…それによる健康リスクとは▽WHOが警鐘 孤独や孤立が及ぼす心身への悪影響▽人と人のつながりは健康のみならず、教育・雇用・経済に好影響

世界の医学誌や科学誌に掲載された論文、大手メディアや医療メディアが配信している医療・医学ニュースの中から「見逃し厳禁」のものを選び、医療ニュース編集部の記者のコラムを付けて毎週お届けします。今回は8月6日~9月3日にマイナビDOCTORの『サクッと1分!世界の医療ニュース』に掲載した記事の中から「孤独」についてのニュースを取り上げ、過去の関連記事3本を紹介します。なお、『What You Missed』は日本語版しか存在しません。【まとめ:医療ニュース編集部】
2025-08-18
配偶者に先立たれたことによる孤独感は極めて大きく、子どもとの親密な関係でも軽減されることはないそうです。ドイツの研究チームが、科学誌Aging & Mental Healthに論文を発表しました。

チームは、成人した子どもを持つ既婚者5610人に対して実施したインタビューのデータを分析しました。このうち、1996~2021年の間に男性176人、女性299人の合計475人が配偶者に先立たれたといいます。死別時の平均年齢は72.56歳だったそうです。

死別する前の3年間と孤独度の変化を比較したところ、親密な愛着関係を恋しく思う「感情的孤独」については、死別からの3年以内が最も強く、死別から4~7年後も有意な増加が見られました。

一方で、他者との社会的な交流が乏しくなる「社会的孤独」については、男性は死別から4~7年後に増加したものの、女性は変化が見られませんでした。また、女性は配偶者との死別後に子どもとの交流頻度や感情的な親密さが増す傾向がありました。

チームは、「配偶者を失うことによる心の空白は極めて深刻であり、親子の親密度が強化されたとしても、それを埋めることはできない。政策担当者は孤独への介入策を検討する必要がある」と指摘しています。

記者から

私が幼い頃、すでに他界していた祖父について、祖母が時々思い出話を聞かせてくれました。祖父の仕事の都合で、日本各地に住んだこと。犬好きの祖父の影響で、大きな秋田犬を飼っていたこと。こうした話をする時の祖母はとても嬉しそうで、私も祖父の話を聞くのが大好きでした。

ドイツの研究チームが、配偶者に先立たれたことによる孤独感は極めて大きく、子どもとの親密な関係でも軽減されることはないとの論文を発表しました。

この研究結果を知った時、祖母が道行く老夫婦を見て、「あんなふうに老後に夫婦でゆっくり散歩がしたかったな」と残念そうにつぶやいた光景が鮮明によみがえってきました。

祖母は仕事や趣味に忙しく、アクティブでいつも明るい人でした。子どもや孫との交流もかなり多い方だったと思います。そんな祖母が、老夫婦を見てポロッとこぼした本音に、私は子どもながらに、祖母が抱える孤独感を垣間見たような気がしたのを覚えています。

あの時の祖母の様子を知る私にとって、「配偶者を失うことによる心の空白は極めて深刻」との研究チームの指摘は、実感を伴うものでした。

そんな祖母も、数年前に亡くなりました。「今頃、天国でおじいちゃんと念願の散歩を楽しんでいるかな」と想像すると、ほっこりと心が和みます。【阿部あすか】

The Journal of Psychology:Interpersonal Loneliness Predicts the Frequency and Intensity of Nightmares: An Examination of Theoretic Mechanisms
2024-08-28
人とのつながりが希薄で孤独を感じると、ひどい悪夢を見たり、悪夢を見る頻度が増えたりするそうです。米国の研究チームが学術誌The Journal of Psychologyに論文を発表。認知機能、気分の調節、代謝、その他の健康と深い関係がある睡眠の質に、孤独が悪影響を及ぼす可能性があると指摘しています。

チームは18~81歳の成人1600人以上を調査したそうです。参加者は、孤独感に関するさまざまな感情や悪夢の体験、ストレスに関わる感情などの質問について答えたといいます。分析の結果、孤独が悪夢の頻度や強度に関連していることが明らかになったとのことです。孤独によるストレス、心配や不安がぐるぐる頭の中を巡る「反すう思考」、過度に用心深くなったり集中したりする「過覚醒」が、悪夢の要因として考えられるといいます。

チームは、孤独と睡眠障害はいずれも健康に深刻な影響をもたらす問題であり、心臓病や脳卒中、早死になどのリスク上昇に関連する可能性があるとしています。
CNN:WHO makes loneliness a global health priority with new Commission on Social Connection
2023-11-17
心身の健康に大きな悪影響を与える孤独や孤立が急増し、世界的に社会問題になっています。WHO(世界保健機関)は2023年11月15日、この「差し迫った健康上の脅威」に対処するため、「社会的つながりを育む委員会」を新設すると発表しました。

委員会は向こう3年間、人々の社会的つながりが深まるよう支援していく予定。社会的なつながりの欠如はメンタルヘルスへの影響はもちろん、早死に、免疫機能の低下、心血管疾患、脳卒中や認知症のリスク上昇との関係が指摘されています。

米CNNが23年11月15日に報じました。
WHO:From loneliness to social connection:charting a path to healthier societies
2025-07-04
WHO(世界保健機関)は、世界で6人に1人が孤独の影響を受けており、健康に深刻な影響を及ぼしているとする報告書を発表しました。孤独は1時間に約100人、年間で87万1000人以上の死亡に関連していると推計されています。

WHOは「孤独」を、自分が望む社会的つながりと実際のつながりとのギャップから生じる、痛みを伴う感情と定義しています。一方、「社会的孤立」は、十分な社会的つながりが欠如している状態を指します。

報告書によると、孤独は若者や低中所得国の人々の間に多く見られるといいます。13~29歳の17~21%が孤独を感じており、低所得国では約24%と、高所得国の2倍に達しています。社会的孤立は、高齢者の最大3人に1人、青少年の4人に1人が影響を受けていると推定されています。

社会的つながりは、炎症の抑制や心身の健康維持、早死にの予防に役立ちます。逆に、孤独や社会的孤立は、脳卒中、心臓病、糖尿病、認知機能低下、うつ病などのリスクを高めます。

WHOは、社会的つながりを強化することで、心身の健康だけでなく、教育や雇用、経済にも良い影響をもたらす可能性があると強調しています。

PROFILE

医療ニュース編集部
藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。

阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。