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2025.09.04

子どものしつけ方が将来の精神的健康に大きく影響 「良かれ」がNGな場合も…

近年増加の幼少期の「言葉の虐待」、精神的な悪影響は体罰と同等▽「怒鳴る」「閉じ込める」「親の気分次第」は子どもの心をむしばむ▽厳しいしつけで子どものうつ病リスク上昇 遺伝子の働きの変化が原因▽12歳以下のスマホ、メンタルヘルスに悪影響 使用開始年齢が低いほど深刻

世界の医学誌や科学誌に掲載された論文、大手メディアや医療メディアが配信している医療・医学ニュースの中から「見逃し厳禁」のものを選び、医療ニュース編集部の記者のコラムを付けて毎週お届けします。今回は7月30日~8月27日にマイナビDOCTORの『サクッと1分!世界の医療ニュース』に掲載した記事の中から「子どものメンタルヘルス」についてのニュースを取り上げ、過去の関連記事3本を紹介します。なお、『What You Missed』は日本語版しか存在しません。【まとめ:医療ニュース編集部】
2025-08-22
子どもに対する虐待を防ぐための取り組みは、身体的なものに焦点が当たりがちです。しかし、言葉による虐待の危険性にも目を向ける必要があるようです。

英国の研究チームが、1950年代以降に生まれたイングランドとウェールズの成人2万687人のデータを含む七つの研究を分析し、医学誌BMJ Openに成果を発表しました。

チームは、成人後の精神的幸福度が低下する可能性について、子どもの頃に身体的虐待も言葉による虐待も受けたことがない人と、虐待を受けた人を比較。その結果、身体的虐待を経験した人は52%、言葉による虐待を経験した人は64%、両方の虐待を経験した人は115%、それぞれリスクが高くなることが明らかになりました。

身体的虐待の発生率は、1950~79年に生まれた人が約20%だったのに対し、2000年以降に生まれた人では約10%に半減したそうです。一方で、言葉による虐待の発生率は、1950年より前に生まれた人が約12%で、2000年以降に生まれた人では約20%に上昇したといいます。

チームは、体罰を減らすための措置を取っても、暴言など別の形の虐待に置き換わってしまうと、身体的虐待と同様の長期的な悪影響が及ぶ可能性があると指摘しています。

記者から

半年ほど前、あるパーティーで、十数年ぶりに会った知人と話をしました。そこで、彼の長男が大学受験に失敗し、現在は引きこもり状態であることを打ち明けられました。知人はそれを長男の個人的な問題と捉えているようでしたが、私は少し違和感を覚えました。

というのも、私はその長男が幼い頃の様子を知っており、知人の妻が話していた内容やささいなことで子どもを叱る姿を思い出したからです。

彼女は「(長男は)将来、〇〇(ステータスが高いとされている職業)になりたいと言っている」「今後のことを考えて(未就学児の時点で)英語を教えている」といった話ばかりをしていました。そして、特に静かにする必要のない場でも、長男が少し騒がしくしただけで厳しく注意するのです。

その様子を見て、幸せや成功、行儀について、自分の価値観を子どもに強く押し付けているように感じました。

英国の研究チームが、言葉による虐待が成人後の精神的幸福度を低下させるという研究結果を発表しました。そして、言葉による虐待の発生率は、2000年以降に生まれた人では約20%に上るとしています。

この研究結果を知った時に思ったのは、言葉による虐待を受けたと感じている人が少なすぎるのではないかということです。虐待と聞くと、何か激しいものを思い浮かべがちです。でも、言葉による虐待というのは、怒鳴ったり罵倒したりすることだけではないと思うのです。親が良かれと思って発している言葉も、深く子どもを傷つけてしまうことがあるのではないでしょうか。そして、何かのきっかけで「壊れて」しまう原因になることも。

知人の長男が、なぜ今のような状態になってしまったのか、実際のところは分かりません。でも、少なからず、幼少期の体験が影響しているのではないかと考えてしまうのです。【藤野基文】

ScienceDaily:Harsh discipline increases risk of children developing lasting mental health problems
2023-04-10
厳しいしつけは子どもの心の健康に悪影響を及ぼすようです。英国の研究チームが、アイルランドの子ども7507人を調査した結果を発表しました。

頻繁に大声で怒鳴る、罰として部屋に閉じ込める、親の気分次第で対応が変わるなどは「非友好的な」育児スタイルとされます。そういった育児を3歳時点で受けていた子どもは、精神的な不調に関する評価スコアが9歳まで上昇し続ける「高リスク群」に分類される可能性が1.5倍高かったといいます。

ScienceDailyの記事です。
EurekAlert!:Strict parenting may hard-wire depression risk into a child’s DNA
2022-10-26
厳しすぎるしつけが、子どもの遺伝子の働きを変えてしまう可能性があるようです。

ベルギーの研究チームが、平均14歳の男女44人を調査。21人が望ましいしつけを受け、23人は厳しすぎるしつけを受けていたそうです。

厳しいしつけを受けた子どもは、多くがうつ病の初期兆候を示したうえ、遺伝子の読み取り方を変化させる「DNAメチル化」が多く認められたとのこと。メチル化の増加は、うつ病リスクに関連することで知られているといいます。

EurekAlert!の記事です。
Journal of Human Development and Capabilities:Protecting the Developing Mind in a Digital Age: A Global Policy Imperative
2025-07-30
子どもが早い時期からスマートフォンを使い始めると、若年成人期における精神的健康(メンタルヘルス)に悪影響を及ぼす可能性があることが明らかになりました。米国の研究チームが、科学誌Journal of Human Development and Capabilitiesに論文を発表しました。

チームは、世界の18~24歳の若者10万人以上のデータを分析しました。その結果、12歳以下でスマホを持ち始めた人は、自殺念慮(自殺を考える傾向)、攻撃性、現実逃避、感情調節の困難、自己肯定感の低下といったメンタルヘルス上の問題を報告する傾向が強いことが判明しました。

精神的な健康状態の指標である「Mind Health Quotient(MHQ)」は、スマホを持ち始めた年齢が低いほどスコアが低くなり、5歳で所有した場合はスコアが極めて低くなることも示されました。

こうしたメンタルヘルスの不調の背景には、ソーシャルメディアの早期利用、インターネット上のいじめ、睡眠の乱れ、家族関係の希薄化といった要因があることも分かりました。これらの傾向は、文化や言語に関係なく、世界のすべての地域で一貫して見られました。

チームは各国の政策担当者に対し、スマホやソーシャルメディアの利用に関する年齢制限の導入、デジタルリテラシーとメンタルヘルスに関する教育の義務化、企業による説明責任の強化などの対策を講じる必要性を訴えています。

PROFILE

医療ニュース編集部
藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。

阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。