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2025.03.13

新種のコロナウイルスをコウモリから発見 されど愛らしい動物に罪はなし

武漢ウイルス研究所などが新種のコロナウイルス発見も脅威にはならず▽スマホ依存、たばこや酒と同種の脳変化▽抗うつ薬SSRIが感染症や敗血症を防ぐ!?▽コンゴで発生の謎の病気、「水源」に関わる中毒か

世界の医学誌や科学誌に掲載された論文、大手メディアや医療メディアが配信している医療・医学ニュースから「見逃し厳禁」の数本を選び、ランキング形式で毎週紹介します。トップ2は医療ニュース編集部の記者のコラム付き。なお、『What You Missed』は日本語版しか存在しません。今回は2月27日~3月5日にDOCTORの『サクッと1分!世界の医療ニュース』に掲載した記事の中から最も注目の集まったニュース4本を紹介します。

まとめ:医療ニュース編集部

①中国の研究チームがコウモリから新種のコロナウイルスを発見

Cell:Bat-infecting merbecovirus HKU5-CoV lineage 2 can use human ACE2 as a cell entry receptor

ABC News:New coronavirus found in bats is not currently ‘concern to public health’: CDC

2025-02-27
中国の武漢ウイルス研究所などの研究チームが、コウモリから新種のコロナウイルスを発見したと、科学誌Cellに発表(2月18日付)しました。このウイルスはHKU5-CoV-2と呼ばれ、ヒトの細胞に感染する可能性があるそうです。

チームによると、HKU5-CoV-2は、中東呼吸器症候群(MERS)を引き起こすウイルスと同じメルベコウイルスに属しています。実験では、HKU5-CoV-2がヒトの細胞の表面に存在するACE2受容体を介して細胞に侵入する可能性があることが分かったそうです。

これは、新型コロナウイルス感染症を引き起こすウイルス(SARS-CoV-2)がヒトの細胞に感染する経路と同じです。ただし、HKU5-CoV-2はSARS-CoV-2ほど容易にヒト細胞に侵入することはできないことも明らかになったといいます。

米ABC Newsによると、これを受け米疾病対策センター(CDC)は24日、HKU5-CoV-2は今のところ懸念材料にはならないとの見解を出したそうです。ヒトの感染は確認されておらず、現時点ではHKU5-CoV-2が公衆衛生に脅威を与えると考えるべき理由はないといいます。

記者から

SARS関連コロナウイルス、エボラウイルス、ニパウイルス、狂犬病ウイルス……。理化学研究所生命医科学研究センターのホームページに、コウモリから検出された、ヒトの命を脅かすウイルスが紹介されています

医療医学の取材を続けていると、「コウモリ=恐ろしい感染症の元凶」という悪いイメージが付いてしまいます。知り合いの記者の多くもコウモリを嫌っています。「存在しない方がいい」と過激なことを言う人もいました。実は私は全く逆で、コウモリが好きです。

「毛嫌いされて勘違いされているけど、ほら、コウモリってかわいいでしょ」。以前、東京都内のある動物園で、飼育員がオオコウモリを手にぶら下げ、なでながら客に見せている場に居合わせたことがあります。そのコウモリをよく見てみると、つぶらな瞳の愛らしい顔をしているのです。その顔で、果物をもぐもぐ食べたり、飼育員に甘えたりするしぐさに、完全に心をつかまれてしまいました。

恐ろしい病気を引き起こすウイルスは、コウモリが意図的にヒトに感染させているわけではありません。ヒトの行動が感染を引き起こしているのです。ですから、コウモリを一方的に悪者として扱うのではなく、知識を持って関わり方を変えていけば、病気の発生は防ぐことができます。

コウモリの愛らしい姿を思い浮かべながら、この考えを多くの人と共有したいと強く思っています。ぜひ一度、近くの動物園にコウモリを見に行ってください。【藤野基文】

②たばこや酒と同じ依存性? スマホが引き起こす脳の変化

Computers in Human Behavior:Effects of smartphone restriction on cue-related neural activity

2025-03-05
スマートフォンには依存性があることが分かったそうです。ドイツの研究チームが科学誌Computers in Human Behaviorに研究成果を発表しました。

チームは、18~30歳の25人に対し、72時間にわたって必要な連絡と仕事に関連すること以外に、スマホの使用を控えてもらう実験を行いました。神経活動への影響を調査するため、実験の前後にMRIスキャンと心理検査を実施したといいます。

スマホの使用を控えた72時間後に参加者にスマホの画像を見せたところ、報酬に関する情報処理や渇望に関連する脳領域に変化が認められたそうです。この変化はニコチンやアルコールなどの物質の依存につながる脳信号といくつかの点で類似していたといいます。

また、こうした脳の変化は、神経伝達物質のドーパミンやセロトニンに関連していたそうです。これらの神経伝達物質は、気分の調整など多くの脳機能に関わっています。

一方、心理検査では、スマホの使用を制限されていても、参加者の気分の変化や何かに対する激しい欲求は見られなかったとのことです。

記者から

「やっぱりスマホには依存性があるんだ……」と妙に納得してしまいました。なぜなら先日、私の家に泊まりに来た20代の親類女性からこんな話を聞いたからです。

その日、久しぶりに会った彼女と話に花が咲いてしまい、気付けば時計の針は午前0時を越えていました。お互い翌日も仕事があったため、慌てて話を切り上げて、寝ることにしたのですが……。

翌朝、「昨夜あの後、スマホ依存症が出ちゃった!」と言いながら、彼女が眠そうな顔で起きてきました。聞くと、眠る前にベッドの中でどうしてもスマホを見たい気持ちが抑えられず、一度見始めたところ、止まらなくなってしまったというのです。彼女には、このようなことがしょっちゅうあるのだといいます。さらに、お風呂にまでスマホを持ち込んで、気付くと何時間も過ぎているということもあるそうです。彼女はこうした自らの状態を「スマホ依存症」と呼んでいるとのことでした。

今回発表された研究成果では、スマホの使用を控えた後にスマホの画像を見ると、ニコチンやアルコールなどの物質の依存につながる脳信号と類似した変化が脳で認められることが明らかになったそうです。たばこやお酒と同じような依存性があるのなら、これまで以上にスマホとの上手な付き合い方を考える必要があると感じました。【阿部あすか】

③抗うつ薬SSRIが感染症や敗血症を防ぐ可能性

Science Advances:Fluoxetine promotes IL-10–dependent metabolic defenses to protect from sepsis-induced lethality

2025-03-04
抗うつ薬として一般的な「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)」が、感染症や敗血症の予防に有効な可能性があるそうです。

米国の研究チームが、SSRIの「フルオキセチン(商品名:プロザック)」を投与したマウスの群とそうでない群をそれぞれ細菌に感染させる実験を行いました。

その結果、フルオキセチン群は敗血症や多臓器障害、死亡から保護されることが分かったそうです。また、感染から8時間後の細菌数を測定したところ、フルオキセチン群は細菌数が少なく、重症度が低いことから病原体を殺傷する作用があることが分かったといいます。さらに、フルオキセチン群は抗炎症性サイトカイン(炎症を抑制するタンパク質)が多く発現していたとのことです。

④コンゴで発生の謎の病気は水源に関連した中毒?

米CBS News:WHO offers possible explanation for Congo mystery disease deaths after reporting spread of suspected cases

2025-03-04
アフリカ中部のコンゴ民主共和国(コンゴ)で多数の死者が出ている謎の病気について、WHO(世界保健機関)の緊急対応責任者は、何らかの中毒が原因の可能性が高いとの見方を示したそうです。地元当局もWHOに対し、村の水源に関連する中毒の疑いが非常に強いと述べたといいます。

コンゴ北部では、コウモリを食べた子ども3人がエボラ出血熱やマールブルグ病に似た出血熱の症状を呈して1月下旬に死亡したのを皮切りに、同様の症状で5週間に66人が死亡したそうです。主な症状は発熱、嘔吐(おうと)、内出血で、死亡者のほとんどが発症から48時間以内に死に至ったといいます。

WHOは髄膜炎が原因である可能性も視野に入れ、患者が発生した地域の食品や水を検査するなど、現地でさらなる調査を行っているとのことです。

PROFILE

医療ニュース編集部

藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。

阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。