2025.02.20
ヒトで重症化の危険の鳥インフルウイルス「D1.1」 米ネバダ州の乳牛から初検出▽「減塩しお」推奨の新ガイドラインをWHOが公表▽ブタ腎臓移植の臨床試験、米FDAがバイオテクノロジー企業2社に承認▽どうなる、トランプ米大統領が脱退表明のWHO テドロス事務局長が各国に協力要請
世界の医学誌や科学誌に掲載された論文、大手メディアや医療メディアが配信している医療・医学ニュースから「見逃し厳禁」の数本を選び、ランキング形式で毎週紹介します。トップ2は医療ニュース編集部の記者のコラム付き。なお、『What You Missed』は日本語版しか存在しません。今回は2月6日~12日にマイナビDOCTORの『サクッと1分!世界の医療ニュース』に掲載した記事の中から最も注目の集まったニュース4本を紹介します。
まとめ:医療ニュース編集部
米ネバダ州農業局:APHIS Confirms D1.1 Genotype in Dairy Cattle in Nevada

2025-02-10
米ネバダ州農業局は、州内の六つの乳牛の群れから鳥インフルエンザウイルス(H5N1)の新たな遺伝子型「D1.1」の陽性反応が出たと発表しました。D1.1はヒトに感染すると重篤な症状を引き起こす危険性があります。
米農務省が全国規模で行っている検査を通じて、先日31日に確認されたといいます。それぞれの群れが別々に野鳥から感染したとみられており、牛からヒトへの感染はこの時点では確認されていませんでした。
D1.1は米国内の乳牛の間で感染が広がっている「B3.13」とは別の遺伝子型で、これまで感染が確認されたのは鳥や感染した鳥に接触したヒトのみでした。ヒトのD1.1感染については、重症化した症例がこれまでに2件確認されています。
NBC News :CDC confirms Nevada dairy worker infected with different bird flu strain
2025-02-12
米ネバダ州の酪農従事者1人に、鳥インフルエンザウイルス(H5N1)の新たな遺伝子型「D1.1」が感染したことが明らかになりました。D1.1が乳牛からヒトに感染した例が報告されるのは初めてです。米疾病対策センター(CDC)が10日に公表しました。米NBC Newsによると、今回の患者の症状は結膜炎のみで、入院することなく回復したそうです。
D1.1は長らく野鳥の間で流行していたもので、先月31日に乳牛への感染がネバダ州で初めて確認されました。今回D1.1陽性が明らかになった患者は、感染した乳牛に接触していたといいます。
米国で鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)が大きな問題になっています。昨年3月に鳥インフルを発症した乳牛が見つかり、瞬く間に乳牛の間で流行が広がりました。米農務省(USDA)によると今年2月18日現在、17州の972の群れで感染が確認されています。農場労働者を中心にヒトへの感染も報告されており、米疾病対策センター(CDC)によると、12日現在で68人の感染者が明らかになっています。ただし、この数は一部に過ぎず、実際の感染者はもっと多くいると考えられているそうです。
日本では感染者は見つかっていないものの、野鳥や家禽の間で鳥インフルエンザが流行しています。環境省によると、今シーズンは2月19日現在で、野鳥における鳥インフルエンザが1道16県で計116件発生しており、昨年度を上回るペースです。農林水産省によると、今シーズンは2月11日現在で1道13県で家禽の鳥インフルエンザが計51件発生し、約932万羽が殺処分の対象になっています。これは過去最多の約1771万羽が殺処分となった一昨年度に迫る勢いです。
心配なのは、ウイルスがヒトに感染しやすいような変異を起こすことです。今回、米ネバダ州の乳牛の間で初めて感染が明らかになり、乳牛からヒトへの感染も初めて明らかになった「D1.1」という遺伝子型のウイルスは、ヒトで重症化しやすい危険性があるといいます。乳牛から感染した今回の農場労働者は軽症で済んだといいますが、米ルイジアナ州の感染者1人が死亡し、現在は回復したというカナダの感染者1人も一時は危篤状態に陥ったと報じられています。そして、この死亡者と重症者から検出されたウイルスを分析したところ、患者の体内でヒトの上気道細胞に付着しやすくなる変異が起きた可能性が高いことが分かっているのだそうです。
CDCは、現状では一般市民のリスクは低く、ヒトからヒトへの鳥インフル感染が広がっている証拠はないとしています。ただし、米政府としては対策を取っており、鳥インフル用のワクチンを備蓄しているほか、mRNAワクチンの開発を加速させるために製薬企業に資金提供を行っていることが報じられています。
一方で日本では、卵の価格の高騰など人間の生活への影響は懸念されているものの、病気としては鳥の中で起きていることと捉えられているように見えます。しかし、いつウイルスに突然変異が起き、人間の間で流行が発生するか分かりません。何かが起きてからでは遅すぎます。もう、対策に乗り出すべき時が来ていると思うのです。【藤野基文】
WHO:Use of lower-sodium salt substitutes WHO guideline

2025-02-06
WHO(世界保健機関)は家庭で使用する食塩に関する新たなガイドラインを1月27日に公表しました。ガイドラインでは、「塩分(塩化ナトリウム)」の一部を「塩化カリウム」に置き換えた「低ナトリウム塩代替品(LSSS)」に切り替えることを推奨しています。
塩分の過剰摂取は高血圧のリスクを高め、心臓病や脳卒中、腎臓病などを引き起こす可能性があります。WHOによると、世界中で1年間に約190万人がナトリウムの過剰摂取が原因で死亡しているといいます。
WHOは1日あたりのナトリウム摂取量について2g未満を推奨していますが、実際には平均約4.3gが摂取されているそうです。WHO加盟国は2013年に、25年までにナトリウム摂取量を30%削減するとの目標を掲げました。しかし、ほとんどの国で達成されず、この目標は30年まで先送りされたといいます。
目標達成のための戦略として注目されるのがLSSSです。LSSSはナトリウムの含有量が少ないにもかかわらず、通常の塩と同様の風味が楽しめるといいます。さらに、不足しがちなカリウムを補うことができるという利点もあります。
ただし腎機能が低下している人は、カリウムの排泄量が減少して血中のカリウム濃度が高くなるため、注意が必要とのことです。
親族に高血圧の人が多いため、若い頃から「塩分控えめ」を意識しています。料理をする際にできるだけ薄味にするのはもちろん、しょうゆやみそを選ぶときも「減塩」と表記されているものに手が伸びます。しかし、「ナトリウム」の一部を「カリウム」に置き換えた「減塩しお」は、これまで使ったことがありませんでした。
「減塩しおを試してみたい!」と思った私は、近所のスーパーに向かいました。さまざまな種類の塩が置かれたコーナーに、ナトリウムの50%をカリウムに置き換えたという減塩しおを発見しました。早速これを購入し、ゆで卵に塩をつけて食べる習慣がある息子の反応をうかがうことにしました。
次の朝、ゆで卵にいつもと同じくらいの量の減塩しおをふりかけ、黙って息子に出してみました。すると、特別な反応はないまま、おいしそうに食べ終えたのです。そこで息子に種明かしをしたところ、塩が変わったことに「まったく気づかなかった!」と教えてくれました。私も試しに減塩しおをなめてみました。確かに、塩味が足りないとは感じませんでした。
ちなみに、私が減塩しおを見つけたのは、東京都内にある一般的な大型スーパーです。オーソドックスな食塩に比べると少々割高でしたが、風味や製法にこだわった高級塩よりはむしろ手ごろな価格でした。もし腎機能に問題がないようであれば、皆さんも食生活に減塩しおを取り入れてみてはいかがでしょうか。【阿部あすか】
Science Alert:Pig Kidney Transplant Trials Given FDA Approval in The US

2025-02-07
米FDAは、米バイオテクノロジー企業「United Therapeutics」社と「eGenesis」社に対し、遺伝子改変したブタの腎臓をヒトに移植する臨床試験の実施を承認したそうです。
United Therapeutics社は2月3日、FDAから承認を受けたことを発表しました。今年の半ば以降、まず末期の腎臓病患者6人に対して移植を実施し、その後対象を50人に拡大する予定だといいます。一方、eGenesis社は昨年12月、腎移植のドナーが見つかる可能性が低い腎不全患者3人に対する臨床試験を実施する許可をFDAから得たとのことです。
AP通信:WHO chief asks countries to push Washington to reconsider its withdrawal

2025-02-06
トランプ米大統領がWHO(世界保健機関)からの脱退を表明したことを受けて、WHOのテドロス事務局長は非公開の会議で各国に対し、米国に再考を促すよう協力を求めたようです。
WHOの2024~25年の予算は69億ドルで、その14%に当たる9.88億ドルが米国からの拠出だそうです。米国のWHO脱退は世界の公衆衛生に大きな影響を与えます。WHOも加盟国も危機感を募らせています。
藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。
阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。