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2024.12.30

2024年を振り返る!  医療・医学の重大ニュース<前編>

乳牛の鳥インフル感染、米国で大流行 ヒトへの感染も▽米国の公衆衛生はどこへゆく 混迷極めるトランプ次期大統領の迷人事▽デング熱にオロプーシェ熱、中南米で蚊が媒介する感染症が激増▽世界中で急増のはしかに注意 ワクチン接種率低下に起因か▽新型のエムポックス、アフリカでの感染者増加にWHOが緊急事態宣言

医療ニュース編集部は今年も、世界の医学誌や科学誌に掲載された論文、大手メディアや医療メディアが配信している医療・医学ニュースを紹介してきました。今年も残りわずかです。今回と次回は2024年の重大ニュースを振り返ります。

まとめ:医療ニュース編集部

1.米国で鳥インフル(H5N1型)感染が大問題に! 乳牛の間で流行、ヒトへの感染も

米国では今年、鳥インフルが大問題になりました。3月に鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)が感染した乳牛が見つかり、その後、乳牛の間で流行が広がったのです。さらに、感染した乳牛に接触した人が鳥インフルを発症したほか、感染経路の不明な患者も見つかりました。

■米テキサス州で鳥インフルが乳牛からヒトに感染か(4月)
今年3月に最初に鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)が感染した乳牛が見つかった米テキサス州で、ヒトへの感染が確認されたと米ABC Newsが報じました。この患者は仕事上、H5N1型の感染が疑われる牛と直接接触していたといいます。

■動物との接触歴のない鳥インフル患者を確認 米ミズーリ州で(9月)
動物との接触歴がない成人1人の鳥インフルエンザ(H5)感染が判明しました。この時点で、鳥インフルの感染者は今年14人目。ただし、養鶏や酪農の関係者以外が感染した事例は米国で初めてのことでした。

■米CDCが鳥インフルH5N1の新指針 感染動物との全接触者に検査を推奨(11月)
ミシガン州とコロラド州の酪農従事者115人を対象に行われた血液検査で、8人(7%)からH5N1型の感染歴を示す抗体が検出されました。これを受け米疾病対策センター(CDC)が新たな指針を発表。感染動物に接触した農場労働者に対し、症状がなくても鳥インフル感染の検査や治療を受けることを推奨しました。

■米国で全国規模の生乳の検査開始、乳牛間での鳥インフル感染拡大受け(12月)
米農務省は国内の生乳についてウイルスの有無を調べる検査を開始しました。国内の生乳を取り扱う業者は要請に応じてサンプルの提出が義務付けられます。米カリフォルニア州では、鳥インフルが原因かどうかは不明ですが、低温殺菌処理のされていない生乳を飲んだ人が体調を崩したという報告が上がっているそうです。

■米ルイジアナ州で鳥インフル感染の患者が入院(12月)
鳥インフルエンザウイルスが感染したとみられる州南西部の住人が入院したそうです。ルイジアナ州でヒトへの鳥インフル感染が確認されたのは初めてで、鳥インフルの感染者が入院したのは米国で2例目です。複数の米メディアは、この患者が基礎疾患を持っており重症の呼吸器症状が出ていると報じています。

2.米トランプ次期米大統領の下で、米国の公衆衛生は大混乱?

11月5日に投開票が行われた米大統領選で、ドナルド・トランプ氏が勝利しました。トランプ氏が公衆衛生分野の要職に指名したのは、反ワクチン派で知られる政治家や研究者など問題のある人ばかりです。

■トランプ氏勝利 ワクチン禁止で致命的な感染症が大流行の恐れ(11月)
大統領選に勝利したトランプ氏は「一部の小児用ワクチンを法的に禁止するかどうかを決断する」と明言しているそうです。多くの小児科医が、感染症の大流行につながる恐れがあるとして懸念を示しているといいます。

■厚生長官に反ワクチン派のケネディ氏 米国の公衆衛生に与える影響は?(11月)
トランプ氏は、反ワクチン活動などで知られるロバート・ケネディ・ジュニア氏を厚生(HHS:保健福祉省)長官に指名しました。

■トランプ氏、公的医療保険のトップに元テレビ司会者を起用へ(11月)
公的医療保険を管轄する機関のトップに指名されたのは、元テレビ司会者として知られる心臓外科医のメフメト・オズ氏。健康や科学に関する誤解を招く主張を展開し、批判を浴びてきた人物です。

■トランプ氏、FDA長官に新型コロナワクチンの問題で物議をかもした外科医を指名(11月)
食品医薬品局(FDA)長官に指名されたのはジョンズ・ホプキンス大学の外科医マーティン・マカリー氏です。新型コロナの流行時に、ワクチンに関する発言で物議をかもした人です。「国民の信頼を失ったFDAの軌道を修正する必要性」を強調しているそうです。

■反ワクチン進む?トランプ氏がCDC所長に指名したウェルドン氏とは(11月)
米疾病対策センター(CDC)所長に指名されたのは、元下院議員で医師のデーブ・ウェルドン氏です。ウェルドン氏は、ワクチンに含まれる防腐剤が自閉症に関連するなどといった誤った主張を展開したこともあるそうです。

■トランプ氏、国立衛生研トップにロックダウン批判の学者を指名(11月)
国立衛生研究所(NIH)所長に指名されたのはスタンフォード大学教授のジェイ・バタチャリヤ氏。新型コロナ対策のロックダウン(都市封鎖)をやめるよう主張し、「集団免疫」の獲得を目指して、ウイルスに感染しにくい人々は通常の生活に戻るよう呼びかけた人物です。これに対し、公衆衛生の専門家80人が「危険で誤った考え」であると猛反発しました。

3.蚊が媒介する感染症が中南米で急増

3~5位は感染症についてのニュースです。中南米ではデング熱やオロプーシェ熱といった蚊などの昆虫が媒介する感染症が大流行しました。

■デング熱が世界で急増 米CDCが警鐘(6月)
デング熱は気候変動の影響もあり、感染者が世界的に急増しています。米CDCは、世界の患者数が過去最多を記録したとして警告を出しました。デング熱は蚊に刺されることによって感染するウイルス性熱性疾患です。

■中南米でデング熱が大流行 過去最多の患者・死者を記録(12月)
中南米における2024年のデング熱患者は1260万人、死者は7700人を超え、1980年に統計が開始されて以来、いずれも最多を記録しました。

■ブラジルで「オロプーシェ熱」が急増 初の死亡例も(8月)
WHO(世界保健機関)のアメリカ地域事務局・汎米保健機構(PAHO)は、ブラジルでオロプーシェ熱によって若い女性2人が死亡したとみられることなどを受けて、疫学的警告を出しました。原因となるウイルスはヌカカや蚊を介して感染します。ワクチンや治療薬はありません。中南米では今年に入り、8月の時点で少なくとも8078件のオロプーシェ症例が報告されています。

■中南米への渡航者は要注意! 米でオロプーシェ熱の輸入症例(8月)
キューバから米国に帰国した21人がオロプーシェ熱を発症しました。米CDCは医師らに対し、中南米への渡航歴がある人については、感染の可能性を考慮するよう注意を呼びかました。

4.世界ではしか患者が急増 ワクチン接種率の低下が原因

はしか(麻疹)の患者も急増し、WHOや米CDCが警告を発しました。

■世界中ではしかの感染が拡大 CDCが警報(3月)
米CDCが最初にはしかについて警報を出したのは3月のことでした。夏の旅行シーズンを前にしたものです。この時、アフリカ、ヨーロッパ、中東、アジアなどの計46カ国で多くの感染者が発生していました。

■世界ではしか患者が急増しWHOとCDCが警鐘 ワクチン接種率の低下が原因(11月)
WHOと米CDCは2023年のはしかの症例数が世界で推定1030万件となり、22年から20%以上増加したと発表しました。はしかによって約10万7500人の命が失われ、そのほとんどが幼い子どもだったそうです。流行を防ぐには2回のワクチン接種を地域の95%以上の人が受ける必要があるとのことです。しかし昨年、世界の子どもの麻疹ワクチン接種率は、1回目が83%、2回目が74 %にとどまったそうです。

5.アフリカで新型のエムポックスが拡大、WHOが緊急事態宣言

アフリカでは致死率の高いエムポックスの感染者が急増し、WHOが緊急事態を宣言しました。

■アフリカで「エムポックス」が拡大 WHOが緊急事態宣言(8月)
WHOは、アフリカで感染が急拡大している「エムポックス」について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。致死率の高い「クレード1b」と呼ばれる型がコンゴ民主共和国やその近隣諸国で急速に広がっていることを受けたものです。この時点でアフリカでは、13カ国で計1万7千件以上の症例が報告されていました。

■スウェーデンでエムポックスの感染者を確認 世界的なパンデミックの可能性は?(8月)
スウェーデンの保健当局が、これまでアフリカのみで確認されていた新しいタイプのエムポックスの感染者が国内で見つかったと発表しました。感染者はアフリカへの旅行者で、アフリカ以外では初めての感染例です。この時、欧州各国の保健当局は「輸入例」について警戒しているものの、世界的なパンデミックにつながる可能性は非常に低いとみていました。実際に世界的なパンデミックにはなっていません。

※この記事はマイナビDOCTORの「サクッと1分!世界の医療ニュース」を再編集したものです

PROFILE

医療ニュース編集部

藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。

許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。

阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。