2024.12.12
実は健康に良い「お化け屋敷」 免疫系に好影響▽電子たばこで血管機能が低下 紙巻たばこよりも有害か▽え、新型コロナ感染で、がんと戦う免疫細胞が生まれる?▽慢性閉塞性肺疾患(COPD)の炎症改善にはビタミンB3が有効か
世界の医学誌や科学誌に掲載された論文、大手メディアや医療メディアが配信している医療・医学ニュースから「見逃し厳禁」の数本を選び、ランキング形式で毎週紹介します。トップ2は医療ニュース編集部の記者のコラム付き。なお、『What You Missed』は日本語版しか存在しません。今回は11月28日~12月4日にマイナビDOCTORの『サクッと1分!世界の医療ニュース』に掲載した記事の中から最も注目の集まったニュース4本を紹介します。
まとめ:医療ニュース編集部

2024-12-02
「お化け屋敷」で恐怖を味わうと、炎症が軽減する可能性がある。そんな研究成果をデンマークの研究チームが科学誌Brain, Behavior, and Immunityに発表しました。
チームは、平均年齢29.7歳の113人に約50分間のお化け屋敷を体験してもらう実験を行ったそうです。参加者が報告した恐怖レベルは、1~9段階で平均5.4だったといいます。
血中の炎症マーカーである「高感度CRP(hs-CRP)値」を調べたところ、お化け屋敷の体験前に軽度の炎症が認められた22人のうち、18人(82%)で、3日後のhs-CRP値が低下したそうです。さらに、10人(45.5%)については、3日後のhs-CRP値が正常になったといいます。
血液中の免疫細胞を調べたところ、元々hs-CRPが正常だった人はリンパ球、単球、好酸球、好塩基球が、軽度の炎症があった人はリンパ球と単球が、お化け屋敷体験から3日後にそれぞれ減少することが分かったとのことです。
娯楽としての恐怖によって血液中のhs-CRP値や免疫細胞数のバランスが調整される可能性が示されました。
「お化け屋敷に入ることはストレスが大きいので、健康に悪い気がするんだけどな……」。50歳手前の先輩記者(男性)は、この研究の意義がはっきりと分からなかったようです。そして、こんなことも言っていました。「お化け屋敷に入って、怖がって叫んだり泣いたりしている人がいるでしょ。あれ、何やっているのかね。怖いなら入らなければいいのに」。先輩記者が最後にお化け屋敷に行ったのは、30年以上前のことだそうです。
そんな先輩記者に教えてあげました。「お化け屋敷は、叫んだり泣いたり感情をむき出しにできる場で、出てきた時には気分がスッキリするんです」と。すると、今回の研究成果についてすごく納得したようです。
話は変わりますが、日本には世界最長のお化け屋敷があり、入ってから出るまでの所要時間は約50分だそうです。偶然にも今回の実験での体験時間と一緒です。つまり、このお化け屋敷に入れば、研究と同程度の炎症の軽減が期待できるということですよね。
先輩記者には健康に過ごしてほしいと思っているので、久しぶりのお化け屋敷体験を勧めてみました。健康につながる研究成果を見つけると、いつもすぐに試してみる先輩記者なのに、答えは「ノー」。本人いわく、「小さい頃に入ったお化け屋敷が、子どもだましの仕掛けばかりで、面白さが分からなかったんだよね。それ以来、入る気にならない」だそうです。え……まさか怖いんですか?【許田葉月】
CNN:Vaping immediately affects vascular health and oxygen levels, study shows, even without nicotine

2024-11-28
「電子たばこ」は血管の働きに即座に悪影響を及ぼす可能性があるそうです。米国の研究チームがイリノイ州シカゴで開かれた北米放射線学会で研究成果を発表し、米CNNが報じました。
電子たばこは液体(リキッド)を加熱させることで発生する蒸気(ベイパー)を楽しむ製品です。研究チームは、紙巻きたばこか電子たばこを吸う21~49歳の31人を対象に、たばこを吸う前後の血管の様子をMRIで調査し、たばこ類を吸わない10人のデータと比較したそうです。その結果、たばこ類を吸うたびに、下半身全体に酸素を含んだ血液を供給する大腿(だいたい)動脈の安静時の血流速度が低下することが分かったといいます。
また、血管の拡張・収縮などの血管機能は、非喫煙者や紙巻きたばこを吸う人に比べて電子たばこを吸う人の方が低下したそうです。最も血管機能を低下させるのはニコチン入りの電子たばこで、次にニコチンなしの電子たばこだったとのこと。さらに、ニコチンの有無にかかわらず、電子たばこを吸った人は酸素飽和度が低下することも明らかになったといいます。
「普通のたばこより害が少ないみたいだから、“電子”に変えたんだ!」とうれしそうに話していた知人のことを思い出しました。この知人に限らず、「害が少なそう」という理由で、紙巻きたばこの代わりに「新型たばこ」と呼ばれる「電子たばこ」や「加熱式たばこ」を選ぶ人が、近年増えているのではないでしょうか。
ところで、 電子たばこは欧米を中心に流行しており、日本ではたばこ葉を加熱してニコチンなどを含む蒸気(たばこベイパー)を発生させる加熱式たばこが、世界でも類を見ないほど広く普及しているそうです。これは、日本国内でニコチン入りの電子たばこは販売されていないことになっていることが理由の一つかもしれません。日本でニコチン入りの電子たばこを販売する場合、医薬品医療機器法(薬機法)に基づく承認が必要になります。しかし、これまでのところ承認された製品はないのです。
こうした背景もあって、国際学術誌に発表されるのは電子たばこの健康影響に関するものが多い気がします。今回の研究も電子たばこについてのものであり、日本で人気の加熱式たばこの血管への影響については分かりません。でも、害が少ないと考えられていた電子たばこが、全くそんなことはないことが明らかになったのです。「紙巻きたばこじゃないから大丈夫!」という考えは誤解であることを皆さんに改めて知ってほしいと思います。【阿部あすか】

2024-11-29
新型コロナウイルス感染後に、特定のがんが縮小するケースが報告されているそうです。米国の研究チームが、このメカニズムを解明したといいます。既存の抗がん剤が効かない患者に対する新たな治療法につながるかもしれません。

2024-12-04
ビタミンB3の一種「ニコチンアミドリボシド」が慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に有効な可能性があるそうです。デンマークの研究チームがNature Agingに発表しました。COPDは主にたばこの煙を長期間吸うことで発症する肺の炎症性疾患です。
藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。
阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。