2024.12.05
ラオスの人気観光地で外国人6人が死亡 原因は飲料に混入のメタノール?▽オロプーシェウイルスの母子感染、ブラジルで胎児の死亡例▽ワクチン接種率低下ではしか患者が急増 WHOとCDCが警鐘▽米国で厚生長官指名のロバート・ケネディ・ジュニア氏とは
世界の医学誌や科学誌に掲載された論文、大手メディアや医療メディアが配信している医療・医学ニュースから「見逃し厳禁」の数本を選び、ランキング形式で毎週紹介します。トップ2は医療ニュース編集部の記者のコラム付き。なお、『What You Missed』は日本語版しか存在しません。今回は11月21~27日にマイナビDOCTORの『サクッと1分!世界の医療ニュース』に掲載した記事の中から最も注目の集まったニュース4本を紹介します。
まとめ:医療ニュース編集部
米公共ラジオNPR:Alcohol poisoning deaths in Laos renew concerns about methanol. Here’s what to know
AP通信:Second Australian teen dies in tainted alcohol case in Laos that has killed 6 tourists

2024-11-26
バックパッカーに人気のラオス中部の観光地バンビエンで、メタノール中毒の疑いで外国人観光客6人が相次いで死亡したそうです。複数の海外メディアが報じています。米公共ラジオNPRやAP通信によると、死亡したのはオーストラリア人2人、デンマーク人2人、英国人1人、米国人1人で、被害者の多くは19~20歳の若者です。メタノールの混入した飲み物を飲んで、中毒を起こしたとみられています。
メタノールは工業用に使われるアルコールの一種です。税金がかかるエタノール比べてコストが低いため、安価なアルコール飲料の材料として違法に使われることがあるそうです。観光客は知らないうちにこうした密造酒を口にする可能性があり、米国務省はラオスへの観光客に対し、認可を受けた酒屋やバーなどでのみ酒類を購入し、ラベルなどを調べて偽造されていないか調べるよう注意を呼びかけたといいます。
メタノールはわずか25ml摂取するだけで、適切な治療を受けないと死に至る可能性があるそうです。メタノール中毒の初期は典型的なアルコール中毒に似ていますが、12~24時間後には呼吸困難、腹痛、さらには昏睡などのより深刻な症状が現れるとのことです。
大学時代に、友人と二人でカンボジアに行った時のことを思い出しました。海外への初めての個人旅行でした。現地で知り合ったカンボジア人の観光ガイド兼ドライバーとその友人と一緒にビアガーデンに行ったり、別のガイドに誘われて彼の勤め先の「ボス」の誕生日パーティーに参加したりと、いろいろなところに飛び込み、アルコール飲料も含め、飲食を楽しみました。
よくそんなところにホイホイついて行ったなとも思いますが、当時の私なりに、そこが安全かどうかのジャッジはありました。しかし、その判断の基準が適切だったかは分かりません。今回メタノール入りのドリンクが提供されたのは、観光客の宿泊先のホステルだった可能性が高いようです。そこに泊まっていたら、自分も飲んでいるのではないかと思います。
今回ラオスで亡くなった観光客には、当時の自分と同じくらいの年齢の人が多く、いたたまれない思いと恐怖を一層強く覚えました。
正直にいって、観光先でメタノール入りの飲料を飲むという可能性は非常に低く、観光客からしたら今回のことは防ぐことが難しい「不運」だったとも感じます。ただ、今回事件が起きた街はパーティーが盛んで、メタノール中毒の危険性があると一部では知られていたようです。
今後もし海外に行くことがあれば、その地域のことを調べた上で、何かを口にするとき、さらにはお店やホテルを選ぶ時点で「本当に大丈夫かな」と一度考えてみるようにしようと思いました。【金子省吾】
New England Journal of Medicine:A Case of Vertical Transmission of Oropouche Virus in Brazil

2024-11-27
南米で流行している発熱性疾患「オロプーシェ熱」について、母親から胎児に感染(垂直感染)した例が確認されたそうです。ブラジルの研究チームが医学誌New England Journal of Medicineに発表しました。
WHO(世界保健機関)によると、オロプーシェ熱はヌカカ(ハエ目の微小昆虫)や蚊に刺されることで「オロプーシェウイルス(OROV)」が感染して発症します。2023年12月以降、過去に感染が確認されていない地域でも患者が報告されるようになったといいます。
チームは、過去に流行が起きていない同国北東部セアラ州に住む、妊娠糖尿病の投薬治療を受けていた40歳の患者について報告しています。2024年7月24日、妊娠30週だった女性は発熱や悪寒などを訴えたそうです。27日には膣から軽い出血があり超音波検査で胎児巨人症が判明。その後、胎動が少なくなり、8月5日に子宮内で胎児が死亡していることが確認されました。
女性の血液からOROV感染が明らかになったそうです。さらに死亡した胎児の組織からはOROVのRNAが検出され、現在ブラジルで流行している株と一致したといいます。
オロプーシェ熱のニュースに触れ、2016年2月にWHO(世界保健機関)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言した、中南米でのジカ熱の流行を思い出しました。ジカ熱も昆虫(蚊)が媒介し、母親から胎児への感染(垂直感染)が問題になっている感染症です。WHOの宣言は、妊婦が感染すると、脳の発育が不十分な「小頭症」の子どもが生まれるリスクが高まるとの判断から出されたものでした。
この時、日本の多くの科学(医療医学担当)記者は、かなり状況を軽視したスタンスを取っていたように思います。「ヤバい、ヤバい」と騒いで15年末からジカ熱の取材を進めていた私に、「地球の裏側で起きていることで、人がバタバタ死ぬような病気じゃないのに、なんでそんなに騒いでいるんですか?」と冷ややかに言い放った記者もいました。
当時そのスタンスや考え方は間違っていると思いましたし、今も私の考えは変わっていません。交通網が発達し、世界中の人々が日々国境を越えて行き交う中で、感染症には「どこで起きているから安心」ということはないのです。また、人がバタバタ死んでいくような感染症は、患者が必ず隔離されるため感染拡大を防ぐことができますし、感染者を死に至らしめることはウイルスの生き残り戦略上不利であることから、最終的には終息します。
一方で、感染者の多くが軽症や無症状で済み、かつ母親から胎児に感染するものは、次世代に影響を与えながら、終息せずに長く続くため、人類にとっては大問題なのです。実際にジカ熱は日本にも入ってきましたし、各国政府が予防対策などに頭を悩ませるほど深刻化しているではありませんか。
WHOのホームページでオロプーシェ熱について調べてみました。潜伏期間は3~10日で、発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、悪寒、吐き気や嘔吐(おうと)、発疹などの症状が出るそうです。ほとんどの人は発症後7日以内に回復するといいます。無菌性髄膜炎を起こすなど重篤な症状が出る人もいますが、極めてまれとのことです。
オロプーシェ熱にかかった大多数の「個人にとって」は、大した問題ではないのかもしれません。しかし、感染地域が拡大し、感染者が増加し、垂直感染することが証明されたのですから、「人類にとって」は深刻な問題と捉えるべきです。ジカ熱の時と同様、「ヤバい、ヤバい」と言いながら、これからも関連ニュースを取り上げ続けます。【藤野基文】
世界保健機関(WHO)と米疾病対策センター(CDC):Measles cases surge worldwide, infecting 10.3 million people in 2023
米CNN:Measles is debilitating and deadly, and cases are surging, WHO and CDC warn

2024-11-21
WHOと米CDCは、2023年のはしか(麻疹)の症例数が世界で推定1030万件となり、22年から20%以上増加したと発表しました。はしかによって約10万7500人の命が失われ、そのほとんどが幼い子どもだったそうです。
麻疹は非常に感染力が強く、流行を防ぐには2回のワクチン接種を地域の95%以上の人が受ける必要があるとのことです。しかし昨年、世界の子どもの麻疹ワクチン接種率は、1回目が83%、2回目が74 %にとどまったそうです。

2024-11-21
トランプ次期米大統領が厚生長官に指名したケネディ氏はワクチン懐疑論者として知られています。新型コロナウイルスワクチンについても「これまでに作られた中で最も致命的なワクチン」と発言していたそうです。
藤野基文:記者・編集者。2004年から全国紙の記者として勤務し、主に医療・科学分野を担当した。18年にマイナビに移ってからは、グループ会社エクスメディオ社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』の編集長を務め、現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
金子省吾:記者・編集者。2017年から地方紙に勤務し、主に社会部の記者として事件・事故や司法、市政、スポーツ、気象、地域活性化の取り組みなどを取材した。20年にマイナビに移って医療の取材をはじめ、グループ会社が運営するオンライン臨床支援サービス『ヒポクラ×マイナビ』編集部で医療ニュース作成に携わった。現在は『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』などの各種コンテンツを制作している。
許田葉月:記者・編集者。2021年からウェブメディアに勤務し、文学や音楽などのトレンド、社会課題などを取材した。23年にマイナビに転職して医療の取材を開始。『マイナビRESIDENT』や『マイナビDOCTOR』で各種コンテンツの制作を担当している。
阿部あすか:翻訳家、ライター。東京外国語大学(英語専攻)を卒業後、大手法律事務所の米国人弁護士などの秘書、英会話学校の講師、専門紙の英語版編集者として勤務した。2019年から編集部の一員として医療ニュースの記事を執筆している。