オーストラリアで、男性の永久避妊法である精管切除術(パイプカット)を受ける人が過去最多を記録したようです。オーストラリアの研究チームが、医学系プレプリント誌(査読前論文公開サイト)
medRxivで報告しました。
研究チームは、オーストラリアのメディケア給付スケジュール(MBS:国の公的医療保険制度における診療報酬データベース)と、オーストラリア統計局(ABS)の人口統計データを用いて、2015年7月~24年12月の精管切除術と出生率の推移を分析しました。
その結果、18~44歳の男性に実施された精管切除術は、16年の1万8544件から24年には2万9848件へと増加し、8年間で60%以上増えたことが明らかになりました。増加傾向は全ての州・準州で認められ、これまで実施率が比較的低かった地域ほど伸びが大きい傾向がみられました。
年齢別では35~44歳の男性で実施率が最も高かった一方、18~24歳の若年男性でも増加が確認されました。
また、オーストラリアの合計特殊出生率(女性1人が生涯に産む子どもの人数)は低下を続けており、24年には過去最低の1.48人となりました。研究チームは、住宅価格の上昇や雇用不安、子育て費用の増加といった経済的要因が、子どもの数を減らす、あるいは子どもを持たないという選択につながっている可能性を指摘しています。
さらに、精管切除術に対する認知度向上や社会的な受容の広がり、避妊を男女で共同して担う意識の高まり、女性の不妊(避妊)手術と比べて体への負担が小さいことも、実施件数増加の背景として考えられるとしています。
研究チームは、精管切除術の増加だけで出生率低下を説明できるわけではないとしながらも、こうした傾向はオーストラリア人男性が子どもの有無や家族計画について、より意図的な意思決定を行うようになっていることを反映している可能性があると指摘しています。また、家族の規模や永久避妊に関する決断が、これまでの世代より若い年齢で行われるようになっている可能性があるとして、今後の保健医療政策や生殖医療サービスの充実に向けて、関連データを継続的に監視する必要があるとしています。