「自閉スペクトラム症(ASD)」の特性を持つ中高年は、加齢とともに「不安症状」が悪化する可能性があるようです。英国の研究チームが医学誌
Nature Mental Healthに発表しました。
ASDは、社会的コミュニケーションの困難さや、特定の物事への強いこだわり、反復的な行動などを特徴とする発達障害です。ASDの人の多くには、最も一般的な精神症状の一つである不安症状が見られます。しかし高齢者については、ASDの特性を持つ人のうち10人中9人が正式な診断を受けていないと推定されており、ASDの人の不安症状が晩年にどのように変化するのかは詳しく分かっていません。
そこで英国の研究チームは、50~91歳(中央値62歳、75%が女性)の中高年5270人を対象とした健康調査のデータを分析しました。参加者は8年間追跡され、ASD特性や全般的な不安症状に関する評価が毎年1回実施されました。研究チームは、得られたデータから、加齢に伴う不安症状の変化のパターンを高度な統計手法(成長混合モデル)を用いて3グループに分類しました。
その結果、不安レベルに関しては、参加者の85.6%が属する第1グループが「非常に低い」状態で推移し、12.4%が属する第2グループは「若干高いが、それでもまだ低い」レベルにとどまりました。両グループともに8年間にわたり不安レベルは安定していました。一方、第3グループに属する参加者は全体の2%で、不安レベルは8年間で「軽度」から「臨床的に有意なレベル」へと上昇していました。
ASD特性が強い人はいずれのグループにも含まれていましたが、ASD特性が低い人に比べて、第3グループに属する可能性が4倍高かったそうです。また、ASD特性が強い人は、比較対象者に比べて、軽度の不安を継続的に経験する可能性が倍増したといいます。
こうした結果から、ほとんどの人は晩年に低い不安レベルを維持する一方で、ASD特性が強い人では、不安症状が加齢とともに悪化するリスクが高まる可能性が示されました。研究チームは、ASDを持つ成人に対して適切な個別化支援を行うことで、中高年期のメンタルヘルスや生活の質(QOL)が大きく向上する可能性があると指摘しています。