カナダのオンタリオ州で2024年、コウモリと接触して狂犬病を発症した11歳の男児が死亡していたことが分かりました。治療に当たった医師らが26年6月29日に、医学誌
Canadian Medical Association Journalに発表しました。医師らは、かまれたり引っかかれたりした兆候がなくても、コウモリに直接接触した場合は医療機関に相談するよう呼びかけています。
狂犬病は最も致死性の高い感染症の一つです。感染した動物の唾液を通じてウイルスがヒトの体内に侵入し、神経系を攻撃します。潜伏期間は数日から1年以上と非常に幅が広く、一度症状が出るとほぼ100%死に至ります。
症状が現れる前に「暴露後予防(PEP)」と呼ばれる治療を行えば、発症を防ぐことが可能です。狂犬病の初期症状はチクチクした痛み、しびれ、発熱、倦怠(けんたい)感、頭痛などで、その後、重度の神経症状へと進行します。
死亡した男児は、家族で訪れていたカナダ東部オンタリオ州のコテージで就寝中に、コウモリに鼻と口を覆われていることに気づいて、目が覚めました。そして、コウモリを自分で払い落としました。その後、父親がポットでコウモリを捕まえ、外に放しました。男児に目に見える傷はなく、コウモリが異常な行動をしているようには見えなかったため、両親は医療機関を受診する必要はないと判断したそうです。
ところが19日後、男児は嘔吐(おうと)、顔のチクチクした痛み、しびれを訴え始めました。男児が受診した医療機関の救急医は狂犬病を疑い、地元の公衆衛生当局に対しPEPの適応について相談しました。
しかし、この時点ではヘルペス性⻭⾁⼝内炎との推定診断で、男児はいったん自宅に帰されました。翌日、男児の体調は急速に悪化し、発熱、錯乱、嚥下(えんげ)困難、唾液の過剰分泌、幻覚、複数の脳神経障害が認められました。その後、狂犬病と確定したのですが、発症後に有効性が確立した治療法はなく、実験的な治療法も適用できませんでした。
入院から17日目、生命維持装置が外され、男児は死亡しました。オンタリオ州で地元感染の狂犬病症例が報告されたのは、1967年以降初めてでした。男児を治療した医療チームは、「コウモリによるかみ傷や引っかき傷は小さいために見過ごされやすい。目に見える傷がなくても、コウモリと直接接触した場合はPEPを検討すべきだ」としています。