たった1回の注射で、アルツハイマー病(AD)の原因とされるタンパク質アミロイドβの蓄積を防いだり減らしたりできる可能性が示されたそうです。米国の研究チームが、細胞を利用した新たな免疫療法を開発し、マウスを用いた実験の結果を科学誌
Scienceに発表しました。
ADでは、脳内にアミロイドβが蓄積し、プラーク(沈着物)を形成することが、病気の進行に関わると考えられています。
研究チームが着目したのが、脳内で最も数が多いグリア細胞(神経細胞以外の細胞)の一種、アストロサイトです。研究では、がん治療で実績のある「CAR-T細胞療法」の仕組みを応用し、アミロイドβを認識するキメラ抗原受容体(CAR)をアストロサイトに発現させる新たな手法を開発しました。
具体的には、CARをコードする遺伝子をアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに組み込み、脳内へ1回注入しました。これにより、アストロサイトがアミロイドβを選択的に取り込み、分解する「掃除役」として働くようになります。通常、脳内の老廃物除去は免疫細胞であるミクログリアが担いますが、ADなどでは過剰な負担により機能が低下することがあります。アストロサイトに役割を分担させることで、こうした問題を補える可能性があります。
研究チームは、ADリスクを高める遺伝子変異を持つ若いマウスと、すでにアミロイドβが蓄積している高齢マウスに、このAAVベクターを1回投与しました。その結果、若いマウスでは加齢後もアミロイドβプラークの形成が大きく抑えられ、高齢マウスでは対照群と比べてプラーク量が約50%減少しました。
研究チームは、この「CARアストロサイト療法」が、ADに関連するアミロイドβ蓄積の予防と治療の両方に役立つ可能性を示したと結論づけています。