慢性的な腰痛を持つ人は聴覚過敏を訴える傾向が強いそうです。ドイツと米国の研究チームがこの理由について、脳が音を処理する仕組みが変化している可能性があることを明らかにしたと、医学誌
Annals of Neurologyに研究成果を発表しました。
研究チームは、慢性腰痛を持つ成人142人と痛みのない対照群51人を対象に調査を実施しました。参加者に音を聞きながら不快度を評価する課題を行わせ、同時にMRI(磁気共鳴画像)検査で脳活動を測定しました。
分析の結果、慢性腰痛群は、対照群に比べて聴覚刺激に対して強い不快感を示すことが明らかになりました。脳画像からは、慢性腰痛群が聴覚刺激を受ける際に、音を処理する聴覚皮質と感情に関与する島皮質の反応が特に強くなる一方で、内側前頭前野など反応を制御する領域の活動が低下していることを発見しました。これは、慢性腰痛が単に腰の問題ではなく、脳全体の感覚過敏(感覚増幅)を伴う状態であることを示しています。
次に研究チームは、慢性腰痛群をさらに3群に分け、聴覚過敏に対する治療法の有効性を評価しました。その結果、痛みに対する脳の解釈を修正する心理療法「疼痛再処理療法(PRT)」が、プラセボ治療に比べて聴覚刺激に対する不快感を減らすことが示されました。また、不快感を調整する脳領域の活性が高まることも示されました。
研究チームは、慢性腰痛は腰だけの問題ではなく、さまざまな感覚が増幅してしまうことによって、脳が慢性的な痛みを引き起こしている可能性が示唆されたとしています。