肺がんに対する抗PD-1抗体薬(免疫チェックポイント阻害薬)による治療は、日中の早い時間帯に投与することで効果が高まる可能性があるそうです。中国を中心とした研究チームが、投与時刻と治療効果の関係を詳しく検証し、その結果を医学誌
Nature Medicineに発表しました。
研究では、肺がんの大部分を占める非小細胞肺がんの未治療患者210人を対象に、抗PD‑1抗体薬の最初の4サイクルについて、午後3時を境にそれ以前に投与する群とそれ以降に投与する群に分けて比較しました。追跡期間の中央値は28.7カ月で、午後3時を基準にした理由は、これまでの研究で免疫機能が午後2~3時ごろに低下する可能性が示唆されていたためとされています。
結果として、全生存期間の中央値は、午後3時より前に治療を受けた群では28.0カ月であったのに対し、午後3時以降に治療を受けた群では16.8カ月でした。また、がんが進行せずに治療効果が維持されている期間を示す無増悪生存期間についても、午後3時以前の群が11.3カ月、午後3時以降の群が5.7カ月と、大きな差が認められました。
研究終了時点での生存率にも明確な違いがあり、午後3時より前に投与を受けた患者では約45%が生存していたのに対し、午後3時以降の群では約15%にとどまりました。これらの結果は、抗PD‑1抗体薬の投与時刻が治療効果そのものに影響する可能性を強く示しています。
抗PD‑1抗体薬は、がん細胞がT細胞表面のPD‑1タンパク質に結合して攻撃を抑える仕組みを阻害し、免疫細胞による攻撃を促す薬剤です。研究の一環として実施された血液検査では、午後3時以前に治療を受けた患者の方が、腫瘍を攻撃する役割を担うT細胞の活性化が高く、免疫応答がより強まっていたことが確認されました。
このような投与時間による効果の違いには、概日リズムと呼ばれる約24時間周期の体内リズムが深く関係していると考えられています。過去のマウス実験でもT細胞は朝により活性化しやすいことが示されており、免疫治療のタイミングがその効果に影響を与えるという仮説を支持しています。